続編☆白金総司


第5話:旧知の仲②




「よしっ」


今日の献立はハンバーグ

付け合せは、にんじんのグラッセとブロッコリーにポテト


いろいろ考えながら、腕をまくってエプロンのリボンを結ぼうとすると、


「動くな」


総司さんがいつの間にか後ろに立っていて、リボンを綺麗に結んで整えてくれた


「あ、ありがとうございます」


「今から作るのか、手伝うぞ」


「えっ、いいですよ、そんな…」

「総司さんは座っててください」


「なるほど…マリアは俺と一緒に料理をするのが、そんなに不服なのか?」


「え?」


「俺と一緒に…キッチンに立つのはイヤだ、と…」


「そういうわけじゃ…」


「ならいいだろう?」

「…俺もたまには、お前と一緒に作ってみたいからな」



(……総司さん……そんなふうに言われると、なんだか照れるんだけど…)


「じ、じゃあ……玉ねぎをみじん切りにしてもらっていいですか?」


「ああ、わかった」



×  ×  ×  ×



総司さんは、せっせと手際よく、玉ねぎをみじん切りにしている

さっきからじっと俯いたままの彼の顔を覗き込むと、目を真っ赤にして瞳に涙を溜めていた



「大丈夫ですか?」


「わざと俺にさせたんだろう…」


「ち、違いますよ、総司さんがみじん切りで泣くのか、ちょっと見てみたかっただけ…です……けど」

「あ、ちょっと、動かないでくださいね」


手を止めて、エプロンに入れておいたハンカチで、彼の目元を拭う


(綺麗……)


長いまつげが涙を含んで、重たそうにしな垂れていた

瞬きをすると、目じりから涙が頬に零れる


「……覚えてろよ」


総司さんは横目で私を睨んで、苦笑する私をよそに淡々と玉ねぎを刻み続けた




×  ×  ×  ×



「ごちそうさま」


お箸をおいて、総司さんが行儀よく手を合わせた

私もちょうど食べ終えて、彼に続いて手を合わせる


「ごちそうさまでした」

「……味、どうでした?」


「美味かった…」


(よかった…)



総司さんはそう言ってから立ち上がって、喉から小さく唸り声を漏らしながら伸びをする


「さて……さっき覚えてろ、って言ったよな?」


腕を組んで、総司さんはこっちを向いた

彼は、いつになく機嫌の良さそうな笑みを浮かべていて…


「もちろん、覚悟はしてるんだろうな?」


「…あ、でも、私片付けをしなきゃいけないから…」


ニッコリと笑う彼をそのままに、手早くお皿をまとめてシンクへ持っていこうとした、けれど…

それを阻むように手首を掴んで私を抱き上げると、ソファへと降ろした


「そ、総司さん……っ」


フッと耳に息を吹きかけられて、全身がゾクゾクと粟立った


「俺の泣き顔…どうだったんだ?」


総司さんが屈んで、私の目じりに唇を寄せた

反射的に目を瞑ると、柔らかいものがまぶたに触れた


そのままそれは、こめかみをたどって、耳たぶへと移る


「本当に、ひどいヤツだ…俺を泣かせるなんて…


「だって……」


目を開けると、総司さんがじっと私を見ていた








≪つづく≫






「イケない契約結婚」


白金総司(続編)



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