続編☆白金総司
第4話:幸せとは⑤
「せっかくだから、ここは学生の気分になって、プリクラ撮りませんか?」
「プリクラ…?」
「写真をその場でシールにできるんですよ」
「………」
私は、不思議そうな顔をする総司さんを引っ張るようにして、プリクラの中に入った
「…なんだか昔と操作方法が全然違ってる……」
「…これで写真を撮るのか?」
お金を入れて、画面を指先でタッチしている私の横で、総司さんは小さなカメラを覗き込んでいた
「撮ったことは…?」
「…ないな」
「……どうして嬉しそうな顔をしてるんだ?」
「え、だって………総司さんの『初めて』をたくさんもらってる気がして…」
「なんだかそう思うと、嬉しいなって…」
素直にそう言葉にすると、総司さんはパッと私から顔を逸らしてしまった
「……総司さん?」
「…なんだ」
「こっちを向かないと、カメラに映らないですよ…?」
「………」
「お前が…そういうこと言うからだろ、だから言うな」
(もしかして、総司さん…照れてるの…?)
彼は私の視線を振り払うように、空いた手で私に向ってシッシッと振った
そんな総司さんの素振りがとても可愛くて…
だけど、何もなかったかのように画面を選んでいた
「えっと、フレームは……これで良しと」
指先で可愛いフレームにタッチすると、ついに撮影が始まる
「総司さん!」
私は彼の腕を掴んで、引き寄せた
総司さんはもう、すっかりいつものペースを取り戻していて、いつも通りのクールな顔をしていた
「…笑ってくださいね!」
総司さんの頬を横から突っついてみる
彼はチラッと私を睨み見てから、ふっと困ったような顔で笑った
× × × ×
撮影は順調に進み、
「3枚目…」
(これはどんなポーズにしよう?)
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①頬と頬をくっつける
(……えいっ)
総司さんの腕をグッとさらに寄せて、頬と頬をくっつけた
彼の髪の毛が私の頬に触れ、揺れた髪の毛からは同じシャンプーの匂いがした
総司さんは、私の肩へ腕を回す
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②抱きつく
「っ……」
いきなり抱きついてみると、総司さんは驚いてバランスを崩した
次の瞬間にシャッター音
「……ひどい写真が撮れたぞ、多分」
「ふふっ…いいんです、思い出ですから!」
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③頬にキス(5UP?)
「!?」
総司さんがいつも私にしてくれるように、思いきって彼の頬に音をたててキスをした
一瞬、驚いたような顔をしたけれど、次にシャッターが降りる瞬間、
今度は、総司さんが私にキスをした
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「……まったく」
総司さんは呆れた顔をしながらも、少しだけ嬉しそうだった
そして私は、撮り終えた写真に落書きをする
総司さんは興味深そうに、私が描きこむ様子をジッと眺めていた
彼は片腕にぬいぐるみを、もう片方の腕で私の腰を抱いていた
「どれがいいですか?」
「ん? どれが……?」
「携帯に撮った写真を遅れるんですよ」
「2枚選べるみたいなので、どれとどれにしますか?」
総司さんはジーっと画面に視線を落とした後、1枚の写真を指差した
「あともう1枚は?」
「それは、お前が選べばいい」
そう言われると……なかなか選べないもので…写真を前に迷っていると、
「優柔不断なヤツだな…」
ペン先を画面の上でウロウロさせている私に苦笑して、総司さんはもう1枚をそっと指し示した
× × × ×
「恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいって…何がですか?」
聞き返してみると、総司さんは私が抱えているぬいぐるみを指差した
「んー、恥ずかしくないこともないですけど…」
「…だろうな」
「でも…バッグに入る大きさじゃないので」
「……それもそうだな」
「あ、あれ可愛い!」
ふと私の視界に入ったものは、可愛いキッチングッズがたくさん置いてあるお店だった
「気になるのか?」
「いつも総司さんが、私の作る料理を美味しいって言ってくれるのがすごく嬉しくって、料理するのが最近すごく楽しいんです」
「……そうか」
総司さんはそのまま歩き出し、私の横を抜けて行ってしまうのかと思っていたら、すごく自然な動作で私の手をとって、お店に入った
≪つづく≫
「イケない契約結婚」
白金総司(続編)
(C)Arithmetic