6月の花嫁…Happy June Bride…


 





~ノーマルEND~



男性3「もし君がよければ、部屋を取るけど…」

「そ、そんな……困ります、離してください」

男性3「あはは、可愛いなあ…それで抵抗してるつもり?」


男性は酔っているらしく、お酒臭い息を吐きながら、顔を近づけてくる


「や、やだ……総司さん!」

思わず総司さんの名前を呼んだ瞬間、背後から一番聞きたかった声が聞こえてきた


「…私の妻が何か?」

男性3「あ?」

「…総司さん!」

総司さんが男性の肩に手をかけ、思い切り私から引き離す

私は思わず、総司さんの胸に飛び込んだ

男性3「え……白金社長?」

「どうも、お久しぶりです」

男性3「…参ったな、白金社長の奥様だったんですか…」

「ええ」

総司さんが私の肩を強く抱き寄せる


「先日の契約の件……もう一度、お話させていただきましょうか?」

男性3「そ、それは……」「頼みますよ、奥様だなんて知らなかったので…」

男性は懇願するような表情で、総司さんに頭を下げている

男性3「その……失礼なことをして、申し訳ありませんでした」

「ご用がお済でしたら、失礼させていただきます」


ぺこぺこしている男性を置いて、総司さんが会場に足を向ける

私の肩を抱いた手は、まるで私を守るように優しく包み込み、ずっと離されることはなかった


「あ、あの、総司さん?」

「何だ」

「パーティーはもういいんですか?」

「必要な相手への挨拶は終わったからな…」


総司さんは私を連れて、エレベーターに乗り込んだ

やがて最上階に到着すると、突き当りの部屋のドアを開ける


「わあ・・・素敵…」

そこは、広々としたスイートルームだった

「この部屋…どうしたんですか?」

「今日はここに泊まることにした」

「え……っ」

いきなり背後から抱きしめられて、私は息を詰めた


「まったく…俺にどれだけ心配をかければ気が済むんだ、お前は…」

私の首筋に顔を埋めるようにして、総司さんが呟く


「心配って……?」

「…だからお前を、人前に出したくなかったんだ」

「え?」

少しだけ顔を後ろに向けると、総司さんの頬が僅かに赤く染まっていることに気づく


「モデルなんてやるから、ああいう輩に目をつけられるんだぞ」

「総司さん……だから私がモデルをやるのに反対してたんですか?」

「ああ…」

「すみません……私のわがままで…乃絵さんのドレス、どうしても着てみたくて…」

「…よく似合っていた」

「え?」


総司さんが呟くと同時に、部屋のチャイムが鳴った

「ああ、届いたみたいだな」


総司さんが部屋のドアを開ける
すると、大きな箱を持ったベルボーイが立っていた

総司さんが箱を受け取り、戻ってくる

「開けてみろ」

「え…私に?」

首を傾げながらも箱を開けると…

中には、さっき私が着たウエディングドレスが入っていた


「これって…」

「お前に似合っていたから、買い取った」

「え!?」

「いつか…これを着て、俺の隣に立たせてやる」

「総司さん…!」


嬉しくなって、思わず総司さんの胸に抱きついた


「ありがとうございます…とても嬉しいです」

総司さんの腕が、優しく私を抱きしめる

(いつか、総司さんの隣で…)


総司さんの体温を感じながら、私はその日を夢見て目を閉じた







(C)Arithmetic






≪NEXT シナリオ グッドエンドへ≫