6月の花嫁…Happy June Bride…


 





09:潤んだ瞳





僅かに抵抗しようとした手は総司さんに掴まれ、唇がますます深く重なる


(ダメなのに……力が入らない……)


総司さんのキスは、強引なのにどこか優しくて…私の理性を簡単に奪っていく…


「…次にお前がウエディングドレスを着るのは…俺の隣に立つ時だからな」


「んっ…は……」


キスの合間に囁かれて、次第に頭がぼんやりとしてくる



やがて総司さんは、ゆっくりと重ねた唇を解放すると、人差し指の背で私の唇を拭った


「…そんな顔、俺以外の奴に見せるなよ」


「え……」


「俺が欲しくて、堪らないっていう顔だ…」


「なっ……そ、そんな顔……私…」


慌てて鏡を見ると、潤んだ瞳に上気した頬の、とても人には見せられないような顔をした私が映っていた


「もう、だ、誰のせいだと思ってるんですか…」


「もちろん俺だろう? 俺以外に、お前にそんな顔をさせられる奴はいないからな…」


総司さんはそう言うと、私を椅子に座らせる


「ほら、さっさとメイクを直せ、出番まで時間がないぞ」


「あ、いけない!」


壁にかかった時計に目をやり、私は慌てて取れてしまったルージュを塗り直した


(もう、総司さんってばいきなり……)

(でも、そのおかげで少し緊張が解けたかも…)







10:強引な誘い



ショー本番――


私は何とかミスをせずに出番を終えることができた



そして、ショーの後のパーティーで、総司さんと一緒に挨拶していると、次々に声をかけられた



男性1「あの…さっきのショーで、最後にドレスを着ていたモデルさんですよね?」


「あ、いえ、急遽 代理で出ただけで…」


男性1「いやあ、綺麗な方だと思って見ていたんですよ…まさか、白金社長の奥様だったとは…」


「…ありがとうございます」


男性2「まったく、白金社長が羨ましい」


「ご冗談を…」


(な、なんか…総司さんの機嫌がどんどん悪くなってるような…)


表面上は笑顔を保っているものの、総司さんの目は明らかに笑っていない…

「あの、総司さん……私、あっちで待ってますね」



私は男性たちの視線から逃れるように、会場のバルコニーに移動した


「ふう……モデルって大変だなあ…」



すると、先にバルコニーにいた男性が、私を見つけて近づいてきた


男性3「あれ? さっきショーにでてたモデルの子だよね?」


「ええと……ショーには出ていましたけど…」


男性3「へえ~、近くで見るとますます可愛いなあ…ねえ、あっちで2人で飲まない?」


「え………」


男性がいきなり肩を抱いてきて、私は身体を強張らせた






(C)Arithmetic






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