6月の花嫁…Happy June Bride…


 





07:メイクアップ



30分後…

私は純白のウエディングドレスを着て、楽屋でスタンバイしていた



「うん、素敵!」

「あ、ありがとうございます、でもこれは、乃絵さんのドレスが素晴らしいからだと思います…」


「ふふっ、ありがとう」

「実はこれ、今日のドレスの中で一番の自信作なのよ!」


「わあ…そんなドレス着せていただけるなんて、夢見たいです!」


「…奥さんがこんなに可愛らしいんじゃ、ご主人がヤキモチやくはずよね~」


「え、ヤキモチ?」


乃絵さんが、楽屋の隅にいる総司さんをチラッと見ると、私にだけ聞こえるような小声で囁く



「そうよ、ご主人がモデルに反対してたのって、絶対ヤキモチよ…」


「そんなこと……まさか総司さんがヤキモチだなんて…」


「絶対そうよ、だってさっきだって……田代さんに、男性モデルが一緒かどうか確認してたじゃない?」

「あれは、他の男の隣にあなたを立たせたくなかったからだと思うわ」


(総司さんがヤキモチ……本当に?)



「ショーの段取りは頭に入ってる?」


「は、はい……何とか…」


「それじゃ、出番までまだ時間あるから、ゆっくりしててね!」


乃絵さんは総司さんに軽く会釈すると、楽屋を出て行った

部屋に2人きりになると、総司さんが近づいてくる







08:うれしい気持ち




私は椅子から立ち上がり、総司さんにドレス姿を見せた


「ど、どうでしょうか……?」


「…悪くはないな…」


そう答える総司さんの頬が、僅かに朱に染まっている



(総司さんがヤキモチなんて……ね、でも、もし本当だったら…ちょっと嬉しいな)


「まったく…お前に最初にウエディングドレスを着せるのは、俺のはずだったのに…な」


少し怒ったように言って、総司さんが私の腰に手を回して抱き寄せる


「そ、総司さん…」


「男のモデルがいなくてよかったな…」


「え?」


「いくらモデルだとはいえ、他の男と一緒だったら何が何でも反対していたところだ」


「総司さん…それって……」


「他の男の隣に、ドレス姿のお前を立たせる訳にはいかないからな」


(乃絵さんが言ってたこと、本当だったんだ…)



「…おい、何をニヤけてるんだ…」


「えっ!? 私、ニヤけてましたか?」


私が慌てて頬に手を当てると、総司さんがおかしそうに笑う



「ああ、これ以上ないくらいに、ニヤけてたぞ」


「ううっ……」


「…まったく、俺の気持ちも知らないで、呑気な奴だ…」


「あっ……んっ」


総司さんの顔が近づいてきたと思った次の瞬間には、唇を塞がれていた


「ダメ……メイク、取れちゃ……んんっ」


「そんなの、後で直せばいい…」

「ん……っ」







(C)Arithmetic







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