6月の花嫁…Happy June Bride…
05:ファッションリーダーのお願い
「ドレスのデザインは、秋葉原乃絵さん なんですよ」
「ええっ! 秋葉原乃絵さんが!?」
「マリア、知ってるのか?」
「はい、モデル出身の女優さんで、今は洋服のデザインやプロデュースなんかも手がけてて…」
「ファッションリーダーというか…とにかく、女性の憧れの存在です!」
「ふ~ん……」
総司さんは興味なさそうに呟く
「奥様なら、きっと乃絵さんも気に入るはずです、今連れてきますね!」
「え、乃絵さん本人にお会いできるんですか?」
田代さんは、笑顔を残して走っていく
「ど、どうしよう……秋葉原乃絵 本人に会えるなんて…」
「…ドキドキしてきちゃった…」
「…お前、まさか引き受けるつもりじゃないだろうな?」
「え、えっと……」
言いよどんでいると、田代さんがこちらに戻ってくる
その後ろには、まさしく秋葉原乃絵が立っていた
「こんにちは!」
「こっ、こここ、こんにちは!」
「私、大ファンなんです!お会いできて光栄です!」
「ありがとうございます」
(うわぁ…すっごい顔がちっちゃい…同じ人間とは思えない……)
うっとり見つめていると、乃絵さんは微笑んで田代さんを見遣る
「いいんじゃないですか?彼女、ドレスのイメージにピッタリ合ってると思いますね」
06:覚悟を決めて
「ですよね!僕もそう思ってたんですよ……お願いします、モデル、是非引き受けてもらえませんか?」
(ど、どうしよう……まさか、憧れの秋葉原乃絵さんにお願いされるなんて…」
すると、それまで黙っていた総司さんが、深々とため息をついた
「…どうするんだ、マリア」
「え…でも、総司さんは反対なんですよね?」
「お前がやりたいなら、仕方ない…」
諦めきったという表情で、総司さんが答える
「本当に?…・・・いいんですか?」
「ああ」
私は覚悟を決めて、乃絵さんと田代さんを見た
「…私でよければ、やらせてください」
「あ、ありがとうございます…!
「ありがとう…」
「メイクとへセットは、急ぐので私がしますね」
「ええっ!いいんですか?」
「もちろん…さっ、こちらにどうぞ…」
私は、乃絵さんに促されるまま、楽屋に向かう
「白金社長も、よろしければご一緒に…」
「はい、そうさせていただきます」
「…ところで、田代さん、ショーに出るのは、女性モデルだけですか?」
「…と、いいますと?」
「つまり……男性モデルが一緒に歩くようなことは……」
「ああ、それはありません、今回はあくまでもドレスのショーのみのショーですから」
「そうですか…」
心なしか、総司さんが安堵したように呟いた気がした
(C)Arithmetic
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