6月の花嫁…Happy June Bride…
03:奥様を貸して!?
関係者専用の通路を通り、楽屋に向かう
すると、たくさんのスタッフが走り回っていた
最初は忙しいのかと思っていたが、よく見ると、スタッフはみんな血相を変えていて、どうも様子がおかしい
「…おかしいな」
総司さんも同じことを思ったようで、ポツリと呟いた
そして、側を通りかかったスタッフを捕まえると、
「責任者の田代さんは?」
「あ、…あっちにいると思います…」
スタッフが指差した方に向かって、総司さんが歩き出す
私も慌てて後を追った
「田代さん、何かあったんですか?」
「ああ、白金社長! 実は困ったことになりまして…」
「頼んでいたモデルたちが、渋滞にはまって間に合いそうにないんです」
「代理のモデルは?」
「何とかかき集めたんですが…あと一人どうしても足りなくて…」
すると、田代さんがふと私に目を留めて、首を傾げた
「白金社長、こちらの女性は…?」
「ああ、ご紹介が遅れました、妻のマリアです」
「は、始めまして…いつも主人がお世話になっております」
「……白金社長! 一生のお願いです、奥様を貸していただけませんか?」
「……え?」
04:モデルとの差
突然の田中さんの申し出に、総司さんも目を丸くしている
「それは、どういう意味ですか?」
「用意しているドレスに、奥様の雰囲気がピッタリなんです!」
「身長もモデルとあまり変わりませんし…」
「そ、そんな…まさか…」
「代わりのモデルとして、ショーに出ていただけませんか?」
田代さんは土下座でもしかねない勢いで、私に頭を下げる
「む、無理です、そんなの!」
「…私なんて、ただの素人ですし…」
「その通りです、妻にモデルの代わりが務まるとは思えない」
(そ、そうだけど……はっきり言われるとなんか傷つくな…)
「モデルと言っても、ドレスを着て歩いていただければ結構ですし…」
「それに、他のモデルと一緒に出ていただくので、きちんとフォローさせますから」
「たとえ身長が同じくらいでも、モデルさんとは体型が違いすぎるでしょう」
(う……また傷ついた…)
「ファスナー部分は、すぐに加工ができますから、奥様の体型でしたら、まったく問題ありません!」
田代さんが縋るような目で、私と総司さんを見つめる
(どうしよう……モデルなんて無理に決まってるけど…でも、こんなに困ってるのに…)
(C)Arithmetic
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