~第9話:ライバルふたたび別れの危機!?②~  by 白金総司





総司さんに「奴隷」と言われていた頃……

常に総司さんの顔を見て、何を考えているのか考えてたおかげか、それがもう癖になっている

総司さんに制止され、私はすとんと腰を下ろした


「最近…妙な話を持ちかけられたりしていないか?」


「妙な話?」


「ああ…うちの関係者から・・・」


「仕事のことか? いや、特には…」


「そうか……ならいいんだ、悪い」


「なんだ、また年上の部下と面倒でも起こしたのか? お前はワンマンだからな」


「ワンマンなわけじゃない、向こうが俺の意見を無視しようとするからだ」


「まあ、だいたいお前の考えの方が正しいんだよな、そうやって成功してきたんだから」


「あいつらはただ俺が気に入らなくて、粗を探して反対してくるだけだ」

「そんなものにいちいちかまっていたら、白金グループはすぐ衰退する」


「周りとバランスを保つのも大切だがな…」


「まあな…」


「へえ、お前がそう言うとは!?」


「え?」


「これまでは俺がアドバイスしても、周りなんていなくても一人でやっていけるっていってただろ…」

「そう思わなくなったのは…誰の影響なんだか?」


チラリと、有馬さんが私を見た


「え? 私ですか?」


「長い間こいつを見てきた者としては、そうじゃないかと思うけど」

「…なあ、総司!」


「…知らん」


「照れるなよ、…照れるお前も貴重だな」


「そうですか? 最近はわりとよく……」


「マリア!」


「あの総司が、女の尻に敷かれる日が来るとは…」


「敷かれてない!」



①敷いてますよ(5UP)

②私のほうが敷かれてます

③持ちつ持たれつです



「そういえば、敷いてるかもしれませんね


「マリア…後で覚えておけよ」


「す、すみません、調子に乗って……」


「幸せそうで何よりだ」

「しかし正直、総司が結婚するとは思わなかったな」


「どうしてですか?」


「だってなあ、昔からずっと初恋の子が忘れられないって話を…」


「志信!」


「なんだよ、もう結婚したんだから別にいいだろ」

「こいつ、大学にいる頃からずっと、初恋の子が忘れられないって言ってて…」

「その子以外は好きにならないって言ってたんだよ」


志信さんの言葉に、総司さんがぐっと勢いをなくす

総司さんを見つめても、こちらを見てくれなかった


「初恋の人……」


「中学の時の子だっけ? もう何年前の話だよって感じだよな」

「つい最近までそう言ってたし……初恋の相手が見つかるわけもねえから、一生独身かと思ってた」


「そうなんですか? 総司さん」


「………」


なぜか、総司さんはだんまりを決め込んで答えてくれなかった

努めて明るく聞いたのに、まるで後ろめたいことがあるように私から目をそらしている


(総司さん…私以外とは結婚するつもりはない、って言ってくれたのに…)

(…その人が見つからないってわかったから、あきらめて私と……)


「マリア、帰るぞ」


「え?」


「なんだよ、せっかく来たんだから、もうちょっとゆっくりしていけよ」


「お前にマリアを紹介するのと、聞きたいことは聞いた、目的は果たしたからな」


「相変わらずだな、本当に」


総司さんが立ち上がったので、反射的に私もそれに続く


「あ、じゃあ…有馬さん、失礼します」


「今度は一人で来いよ、総司がいるとゆっくり話もできない」


「なんで俺がいないところで会おうとする」


「相変わらず頭が固いな、お前は…」


「行くぞ、マリア!」


「は、はい」


総司さんに引っ張られて、バーを後にする

お店を出る直前に振り返ると、有馬さんが笑顔で手を振っていた






イケない契約結婚   (C)Arithmetic