~第8話:近づくふたり⑤~  by 白金総司




「どうした?」


「い、いえ…」

(なんか今日の総司さん、いつもより優しい気が…でも、今日だけじゃない…)


「総司さん、最初に会った頃から見たら、変わりましたよね」


「どこがだ?」


「根本は変わってないんですけど…意地悪が減ったというか…」


「意地悪してほしいのか?」


「いえ、そういう意味じゃ…」


「じゃあ期待に応えて、今日の夜にでもかわいがってやる」


「ほ、本当に違いますから!」


「何を考えている? 俺は夜にまた色々命令して、お前で遊んでやると言っただけだが…」

「…変なことを想像しただろう?」


意地悪に笑うその顔は、やっぱり最初の頃よりもずっと優しく見えた


(でもそれって…私の総司さんに対する気持ちが変わったから?)

(それとも、総司さんの気持ちが…?)


ドキドキしながら歩いていると、不意に総司さんが腕を引っ張る


「なんですか?」


「なんでもない」


訳がわからないまま歩いていたけど、しばらくしてようやく総司さんが私の腕を引いた意味がわかった


車道側を歩いていた私を、歩道側に押しやってくれたのだ


(こういうさりげない優しさ、ずるい…)



「あれ? マリアさん?」


後ろから声をかけられて、総司さんと同時に振り返る

その顔を見た瞬間、少しだけ気まずい気持ちを味わった


「冬太くん……」


「偶然だね、…もしかして、その人がマリアさんの旦那さん?」


「う、うん…」


「お前が…」


「こんにちは、村瀬冬太です」


「知っている」


「え?」

「あ、えっと……前にナンパされてるところを助けてもらった話、したから…」


「ああ、そういうこと」


(どうしよう……せっかく総司さんとデートしてるのに…)



①じゃあね(5UP)?

②どこに行くの?(1UP)

③冬太くんもデート?(3UP)



「あの、それじゃあね、私たち急ぐから…」


「え~、もうちょっと話しようよ、マリアさんの旦那さんともしゃべってみたいし…」


(な、なんで!?)


「悪いが、久しぶりの休みだ 邪魔をしないでくれ」


「ふ~ん……マリアさんの旦那さん、マリアさんのこと、すっごく大事なんだね」


「え?」


「仕事とマリアさんだったら、どっちが大事なのかな・・・」


「なんの話だ」


「なんでもないよ、じゃあ、邪魔しちゃ悪いから俺行くね!」


意外とあっさり、冬太くんが街の中に消える


「なんだったんだろう……」


「…あいつ……」


「え?」


「…いや」


総司さんはしばらくの間、冬太くんが消えた方を見つめていた







イケない契約結婚  (C)Arithmetic