~第8話:近づくふたり④~  by 白金総司





「マリア、出かけるぞ」


「え?」


誘拐事件のことも少し落ち着いてきた頃のある日曜の朝、突然総司さんが私に告げた


「出かけるって、どこにですか?」


「決めてない」


「また!? 前にもそういうことありませんでしたっけ?」


「あの時とは違う、……デートだ」


恥ずかしそうに告げる総司さんに、すっとんきょうな声を出してしまった

私の反応に、総司さんはさらに恥ずかしそうに眉をしかめた


「早く用意しろ」


「は、はい!」


(前はデートだと思ったら『教育だ』って言われたけど…)

(今日は、正真正銘のデートだと思っていいんだよね?)


私は急いで準備して、総司さんが待つ玄関へ走った


「映画はこの前見たし…どこに行きましょうか」


「そういえば、昼飯まだだったな」


「あ、食べてから出てくればよかったですね」


「今の流れだと、普通、どこで食べましょうか、だろう」


「でも、外食ってもったいない気がして…」


「もったいない?」


「はい、外食って、特別な日にするから美味しい気がしませんか?」

「普通の日はできるだけ節約して、特別な日に外食すると、すっごく美味しく感じられるというか」


「なるほど」


「って、うちがそれほど裕福じゃなかったから、そうしてただけなのかも知れませんけど…」


「そういえばお前は、遅く帰ってきてもちゃんと料理をする」


「買って済ますのもいいんですけど、やっぱりもったいなくて…」

「一人暮らししてた時も、できるだけ自炊してたんです」


「俺の周りにはそういう人間はいないから、新鮮だ」

「お前の手料理も、そう思って食べていた」


「でも総司さんは、美味しいものばかり食べてるから、口に合いませんよね…」


「そんなことはない」


総司さんの方を見ると、優しい笑顔とぶつかる

驚いて、思わず目を逸らしてしまった






×  ×  エクストラシナリオ 発生 ×  ×









イケない契約結婚   (C)Arithmetic