~第8話:近づくふたり③~ by 白金総司
「あの…さっきの男は?」
「香坂に任せてきた」
「香坂さんにまで、ご迷惑かけて…」
「でも、どうしてここがわかったんですか?」
「お前を追いかけて公園の方へ行ったら、お前がこの車に乗せられるところだった…」
「咄嗟に見たナンバーで、探させたんだ」
「そうだったんですね……それにしても、咄嗟に見たナンバーを覚えられるなんてすごいですね…」
「一度見たものは忘れないからな」
そういえば、前に香坂さんもそんなことを言っていた
改めて、総司さんのすごさに驚いてしまう
「あの……総司さんを後継者にしたくない人が、私を失踪させて後継者争いから脱落させようとしたみたいです」
「だろうな…真澄か、他の人間か……敵は山ほどいる」
「すみません…もし、失踪扱いになったら、7年は離婚できないって…」
「ああ、そうだな、それがどうした?」
「私があのまま誘拐されて…殺されたり、どこかに監.禁されたら…」
「…総司さん、私と離婚して他の人と再婚もできないし、後継者の条件、なくしちゃってたかも…」
「…マリア」
「いくら既婚とはいえ、奥さんが失踪したらやっぱりダメですよね?」
「私…本当に総司さんに迷惑ばかり…」
「マリア!」
強く肩をつかまれて、びっくりして総司さんを凝視してしまう
総司さんは、まるで怒っているように私を見つめていた
「俺は、お前以外の人間と結婚するつもりはない」
「え?」
「俺の妻は何があってもお前一人だ、忘れるな!」
「でも……」
「間違っても、後継者問題が終わったら離婚しようなんて思うなよ いいな!」
まるで、さっきの考えを見透かされたようで、言葉に詰まってしまう
「俺は、お前を手放すつもりはない、今も、これからも…」
「だって…あの写真みたいに、また迷惑かけるかも…」
「俺はもう、お前を疑わない、信じる」
「え……」
「あの写真も、あれだけ鮮明に撮れてるのはおかしい、誰かがお前をハメたとしか思えない」
「総司さん…」
「だが……さっきの俺は、そんなことにも気づかないほど冷静になれてなかった」
「……悪かった」
なぜかふてくされたように、総司さんが言う
子どもっぽい顔に、思わず笑ってしまう
「どうして…怒りながら謝るんですか?」
「……謝りなれていない」
「そうですよね……」
「ほら、帰るぞ、動けるか?」
「はい」
まだ少し憮然とした表情の総司さんが上着をかけてくれる
そのあと、手を引かれて、外へ出た
香坂さんたちも来てくれて、私は無事、家に帰ることができた
× × エクストラシナリオ 発生 × ×
イケない契約結婚 (C)Arithmetic