~第6話:喧嘩とピンチ②~  by 白金総司





それなのに、心の中では必死で総司さんの名を呼んでいた

来てくれるはずなんてないとわかっているのに…呼ばずにはいられなかった


「総司さん…!」


「マリア!」


バン!と部屋のドアが開いた


「総司さん…!?」


「貴様~」


ソファで見知らぬ男に組み敷かれている私を見るなり、総司さんがすごい速さで男に近づき、その顔を殴る

その速さは、男が反抗する暇すら与えなかった…


「お前は誰だ!? なぜここにいる!?」


「ご…強盗…です…」


「くそっ」


男が気を失っているのを確認すると、掴んでいた胸ぐらを捨てるように離す

そして、私に歩み寄り……


(…ど、怒鳴られる!)


肩を窄めた瞬間、…引き寄せられ抱きしめられた


「よかった…」


「…総司、さん?」


「よかった…本当に……」


私を抱きしめる総司さんの腕に力がこもる

突然のことに反応できず、私は…ただただ抱きしめられていた


「何もされなかったか?」


「は、はい…押し倒された時に総司さんが来てくれたので…」


「そうか…」


私の顔を見て離す総司さんは、心底安心したように深く息を吐いた

それから携帯を取り出して、誰かに連絡をする


「香坂か? 今すぐマリアのアパートに来い、強盗だ」


『大丈夫なんですか? 強盗は今も…』


「…いや、殴って気絶させた」


『警察は呼ばなくても…?』


「警察が来るといろいろ面倒だ」


そう言って電話を切ると、総司さんは男に視線を戻した


(警察が絡むと、後継者争いで総司さんが不利になってしまうのかもしれない…)

「すみません、でした…」

「鍵がかかってなかったので…おかしいとは思ったんですけど…深く考えずに入っちゃって…」


「軽率だな」


「はい…」

(結婚した今、私が起こすことは全て総司さんに跳ね返る…)


さっきの総司さんの言葉が思い出された…



それからすぐ、香坂さんが数人をつれて駆けつけてきて、まだ気絶している男を起こして連れて行った


香坂さんも男もいなくなると、部屋に2人きりになってしまった



①どうしてここに?

②迷惑かけてごめんなさい(5UP)

③助けてくれなくてもよかったのに



「あの…本当にすみませんでした」

「迷惑かけてしまって…最初の契約すら満足に果たせなくて…」


「なんの話だ?」


「妻として…総司さんの役にたつって… 私が面倒ごとを起こしたら、総司さんの後継者争いが…」


「マリア……」


ピンポ~ン♪


総司さんが何か言いかけた時、部屋にインターホンの音が鳴り響いた

思わず顔を見合わせて、とりあえず玄関へ向かう


「はい?どちら様でしょう?」


「○○、俺だけど…」


「沢渡くん!?」


私の声を聞きつけて、総司さんがやってくる


ドアを開けると、そこに沢渡くんが立っていた


「どうしたの? 沢渡くん」


「いや…飲みに行かないかと思って携帯に連絡したけど、返事がないから…心配で…」


「あっ、携帯忘れてきちゃった…」


「忘れてきたってどこに?……っつうか…」


沢渡くんが、私の後ろの方を見て怪訝な顔をする

振り向くと、すぐ後ろに総司さんが立っていた


「…誰?」


「え、えっと…」









イケない契約結婚  (C)Arithmetic