長衣とストッキング着用
ASOMILKに見えるんだよね
お母さん来てるよ、会ってきていいよ
母のいる待合スペースへ
割と笑顔な私
昨日先生と話して
すごく良い先生だったよ〜て
何気ない話をした
手術室へ行く前に待合スペースに寄って
母と会ってから出発しようねと
元々言われていたけど
もう会ったからこれで終わりかな?と思って
時計を見てそろそろ戻るねと
明るくバイバーイって部屋に戻った
待っていると看護師さんが来て
パンツしか履いてないよね?と確認されて
じゃ、行きましょうか
はい
もう逃げられない
胸が無くなると思うとまた涙が
溢れる手前で我慢して歩いていたら
看護師さんが私が帰りに乗るベットを押しながら
ほら。お母さんに行ってきますって
言っておいで!
さっきので終わりじゃないの
せっかく明るくしたのに意味ない
もう1度母の所へ駆け寄る私は
通り道で手拭きタウパーを取って
子どもみたいに涙腺爆発
それを見た母が初めて私の前で
普通に泣いた
「……ママが……たい」
何て言ったか分からなくて
「何て」って
言ったけど母は答えなかった
泣き方が祖父祖母が
亡くなった時と同じだった
「行くよーーーーーーー」って
看護師さんが叫んできて
母は泣きながら
「もう行くんですか」と
ちっちゃい声で囁いて
私の腕を掴んで
エレベーターまでついて来た
ドアが閉まる瞬間まで
私と母は名残惜しくを振った
一緒に乗っていた別の看護師さんは
さぞ気まずかっただろう
私は胸が無くなる事で泣いているけど
母がなぜ泣いていたのかは分からない
私たちはそういう話をしない
私が母の前で、母が私の前で
思い切り泣いたのは初めてでした
母が横にいて診察室で私が涙ポロポロ
先生が母に何か言って母が鼻水ズズっ
おや?泣きそう?程度は数回あった
初めての大学病院へ行った日
私は癌と言われ実家に帰らず逃亡
次の日電話がかかって来て
仕方なく癌だったと話した
その時に私が母にごめんねって言ったら
電話越しに泣いているのは分かった
帰るしか無いなと帰宅すると
今仕事から帰って来たばかりだろう
制服姿の母の目は真っ赤だった
見た瞬間思ったのは
職場で泣いていたんだろうな
その時私はウジウジしない!
治すんだから!って言った気がする
お互い、お互いの前では泣かなかった
手術室に入ると待っていた職員さん達が
ギョッとしていた
私がめちゃくちゃ泣いているから
手術室のスタッフさん達は優しかった
今日は何の手術ですかを練習通りクリア
他にも手術する人が次々入ってきた
泣いているのは私だけ。
女医先生が来てこれまた優しいの
大丈夫よって声かけてくれて
乳癌のオプチャで
手術室は本当にドラマの世界だから
しっかり見渡してきてねって言われたのに
見る余裕無し
さらに奥へ進んで私のオペ室へ
看護師さんがガーゼをくれ涙を拭いた
みんな小さい子どもをあやす様に
大丈夫、大丈夫と背中をさすってくれ
手を握ってくれた
手術台へ上がりマットが温かかった
隣にずっと女医先生がいて
声をかけてくれる
すぐ裸にされ
寒くない?とか色々聞かれるんだけど
正直どうでもよくて
でも泣いてても仕方ないし
真っ直ぐ上を見てじっとしていても
涙だけがボロボロ落ちる
手足拘束されるから涙拭けなくて
女医先生が私の涙をずっと拭いてくれた
私は両手にタウパーとガーゼを持ったまま
眠くなる薬が入りますと言われ
ウトウトしてきたけど
結構な時間起きていた
執刀する主治医は見当たらず
落ちた。
手術台に上がった時主治医の顔を見て
安心したってエピソードは?
主治医の顔見てないけど
起きてー!終わったよー!
女医先生が隣にいてくれた
主治医はいなかった
意識がしっかりしてた
オペ室観察し忘れていたから
急いでキョロキョロした
それを見て女医先生
しっかり起きてるねって。
ストレッチャーでシャーっと
連れて行かれ全然見れなかった
手からタウパーとガーゼは無くなっていた
てか主治医は?!
抜管時の指示とかあった?
私、先生の指示3つクリアしたんですか?
うん、したよ
全然覚えてないし
部屋に帰ると安心した様に母が来た
コロナのせいで顔見れるだけ〜
もう帰ってって言われたから
帰るよーって帰って行った
本当会えるの一瞬やな
挿管のせいで声はガラガラ
どんなですか?の問いに
痛いだけ言った
気持ち悪いとか一切無かった
看護師さんやオペ室の職員さんは
手術が怖くて泣いていると思って
大丈夫だよって優しく言ってくれたんだろうけど
私は胸が無くなることが怖くて
悲しくて虚しくて
泣いてたんだよね
今日で女性じゃなくなるんだ
悲しかったけど私の左胸は
無くなってしまいました