赤月は息も絶え絶えだった。何処かに行ってしまった。知久が居なくなって愕然とした。呆然とした。あゝやはりどうすればいいのか分からなくなってしまった。僕の指針は何処へ行ったの?いや、僕は知久を指針としていたのか?

 

 大通りを独りぼっちで立ちすくんでいた。何も思い当たらなかった。うごめく日常が通り過ぎ、改善となるのは新しいものを創るのだろう。その想像は印章を引いていて間然、間々時折焦りゆく者たちを鑑みる日常。

 

「はぁ…。」

 

 赤月は深呼吸をした。彼奴は彼奴らしく生きた。僕は?僕はどう生きているんだ。赤月は漸く歩き出した。ゆっくりとだが粛然と間実に震える声に耳を澄ましながら…心の中では泣いていた。そう、彼には心が逢ったのだ!彼には心が合った!赤月はほろほろと涙を伝わせ、知久を弔ってやった。

 

 しかし途端に全てがどうでも良くなってしまった。熱病の気違いか?そんな訳は無い。障害?そう、人生の障害だ!人生の障害を感じている!こんなもの邪魔ものだ。要らない。僕のこ、心を占拠するな。もっと言うと心なんてものを造るな!賤しい犬畜生め。要らないんだ。知久、お前の所為では無い。あゝ、全くお前が死んでからお前に囚われ過ぎだ。何処かに居るんなら聞いてくれ!もうお前が死んでから1年が経つ。1年。お前の事を忘れた日は正直あったが…ずっと何処かに引っかかるものが在った。ずっと引っかかっているんだ。何が?僕には煩わしいものだ。まさか、まさかこんな風に思うなんてな。まさか、お前の代わりにならなきゃいけないなんて思って、思わなきゃならないなんてどういうことか!どうしてかそんなことが思い当たるんだ。何故かお前の、知久の代わりに生きなきゃならない、という宿命めいたものを感じずにはいられないんだ。畜生!返せよ!俺の人生。俺の人生だろうが!

 

 

 怒りに涙を震わせ拳を握り締めた。でも何も改善しない。どういう訳か。地面を見ながら自分が何処に向かって歩いているのか全然解って居ない事に気が付いた。

 

 俺は何処に向かって歩いている?

 

 

 

 

 

続く