売る方じゃなくて作る方。
職人として仕事についた。
ある年に、異動になって、アフターサービスの方に回った。
カウンターサービス。
指輪の歪み、ネックレスの留め具、通し糸の替え、とか。
その日の内に直ぐに直せる物の作業。
お客様とも触れ合えて、求められる物もわかって、作り手としては参考になるから、それはそれで割と楽しく仕事をしていた。
ある日の午後。
若い男性が来店した。
一人だったから彼女へのプレゼントでも見に来たのかと思った。
その男性は店内を見渡し。
ショーケースを見る訳ではなく、真っ直ぐカウンターの方にやって来た。
あの、すいません。
はい、いらっしゃいませ。
この指輪なんですけど、
その人は無造作にスーツのポケットから指輪を二つ取り出し、手のひらで差し出した。
これ、何の指輪かわかりますか?
はっ?
あ、、えっと、どんな指輪なのかなって、、、。
、素材ですか?
用途、とかですか?
、、、どちらとも分かる範囲で見て教えてもらってもいいですか?
宝石店にこんな事頼んでいいかわからないんですけど、お願いできますか?
何かご事情があるのですね。
承知しました。
こちらのトレイにどうぞ。
トレイに置かれた二つの指輪。
手袋をさして、よく見てみる。
、オモチャとかでは無いとは思うんですけど、、、。
、そうですね、、、これはプラチナリングです。
プラチナ、、、シルバーやメッキじゃないんですね?
シルバーはもう少し白いですね。
これは黒ずんだ白い輝きがあります。
それに重さがありますから、プラチナで間違いないですね。
二つとも同じです。
大きさもほぼ同じですがサイズは違うようです。
シンプルなデザインなのでマリッジリングではないでしょうか。
、、、マリッジ?
つまり、結婚指輪です。
、結婚、指輪、、、。
男性は、その指輪を見つめて動かなくなってしまった。