企業法務弁護士の暇つぶし

企業法務弁護士の暇つぶし

東京で企業法務大手に勤める弁護士です(暇ではない)。思いついたことをブログにしていきます!

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今回は大手法律事務所の採用活動について書いていきます。

弁護士事務所の採用人数は、事務所の規模によって大きく異なります。弁護士5人程度の事務所であれば、年に1人採用するかどうかといったところでしょう。2〜30人規模の事務所であれば2〜3名といったところです。四大法律事務所と呼ばれる規模の事務所は毎年数十人規模の新人弁護士を採用しています。現在はどこも30人以上は採用しているようです。

大手事務所の採用活動は一般に、司法試験後の6月1日から始まります。だいたい2月くらい?からエントリシートの受付が始まっていた気がします。そして、6月1日の10時からヨーイドンで電話がかかってくるわけですね。
ヨーイドンというのは、四大事務所では協定を結んでいて、6月1日の10時より前に抜け駆けして目ぼしい人に声をかけることを禁止しています。

そういうわけで、電話がかかってくれば、個別訪問と呼ばれる面談に参加する資格を得ることができます。面談の内容は様々で、面談というよりも雑談の雰囲気で即時採用を申し入れられることもあれば、普通の採用面談のように志望理由等を聞かれ結果は後日通知しますという方式もあるようです。基本的にはそれまでの評価で採用するかどうか、採用するとしても積極的に動いてアピールするかどうかが決まっています。

五大事務所に数えられる某所は、必ず2回は面接を実施するようです。なので、1回目で採用通知が出なくても落ち込む必要はないですね。

上記で、それまでの評価、といいましたが、エントリーシートの審査で全てが決まるというわけではありません。大手事務所はどこも夏季と冬季にインターンシップを実施しており、そこでの評価が非常に重視されます。インターンシップでは基本的に担当アソシエイトが付き、面倒を見てくれます。その担当アソシエイトの評価、プラス、インターンシップ期間中に関わった弁護士の評価が総合されます。インターンシップはリクルートの場ではないと説明されるかもしれませんが嘘っぱちです。事務所からすればお金を払ってまでインターンシップに来てもらうのに、採用に繋げないわけはないですよね。中に入って分かりますが、大手事務所は採用活動に非常に大きな手間と費用をかけています。
夏季はロースクール生を中心に募集しており、近時は学部生の募集も行なっている事務所が増えてきています。
冬季は予備試験の合格者が対象となっています。正直予備試験合格の付加価値は非常に大きく、大手事務所は冬季インターンシップに採用活動の比重を置いているといってよいでしょう。

夏季のインターンシップ期間は4〜5日程度、冬季は1〜2日です。夏季はロースクール生は日当がでますが、学部生は出ません。冬季はロースクール生、学部生問わず出なかったように記憶しています。

インターンシップ期間中における評価ですが、当該期間中には課題が渡されるわけですが、課題の出来は正直あまり評価に関係ありません。学生なので出来なくて当たり前だからです。いい出来の成果物を上げられればプラス評価はありますが、出来か悪いからといってマイナスに評価されることは決してありません。むしろ、担当アソシエイトやパートナーとの何気ない会話や質問が見られています。しっかりとコミュニケーションできるか、インターンシップに対する意欲があるか、といった点が重視されているように思います。あと、担当弁護士はインターンシップ生のことを知りたいので、出身、趣味、特技、語学力など、どんどん自分のことを積極的に話して行った方がウケると思います。また、模擬会議みたいなものが実施されるのですが、そこでの態度も重視されています。トンチンカンなことを言ってもマイナス評価されることはまずないので、ガンガン発言していったほうが得です。とはいえ書類審査もそれなりに重要であり、学部生で予備試験合格プラス英語も出来ます、なんてインターン生は、よほどのヘマをやらかさない限り採用対象になると考えていいでしょう。

そういうわけで、6月1日までに、大手事務所は大方採用対象者に絞り込みをかけており、インターンシップに全く参加せずに採用されるケースは比較的珍しいと言えます。ただし、インターンシップに参加した事実自体が評価されてるわけではなく、採用担当弁護士はインターンシップに参加していない応募者であっても虚心坦懐に能力を評価してくれます。ただし、インターンシップにも参加しておらず、出身大学やロースクールが地方(京都大学、大阪大学などは別)の応募者は、基本的には書類選考で落とされると考えてよいです(予備試験合格者は別)。

6月1日に電話がかかってくる順番はそれまでの評価をモロ反映しており、10時ぴったり、それに準ずるタイミングでかかってきた方は相当評価されている(他事務所に取られたくないと考えている)と考えていいと思います。

四大事務所は6月2週目には採用活動の手仕舞いに入ります。優秀な人材についてはそれだけ迅速に動かなければ確保できないということでしょう。
優秀な方は得てして複数の事務所からオファー(採用通知を出すことをオファーと呼んでいます)をもらうので、人によっては非常に迷うことになります。こうした場合事務所は何度も呼び寄せ、自分の事務所のアドバンテージをアピールしてきます。食事に連れていかれるわけですが、学生には到底縁のないような高級レストランに連れていってもらえるので、かなり美味しい思いができます。地方から来る方には当然交通費と宿泊ホテル費用を全額出してくれます。

以上のとおりで、四大内定者は12月の司法修習開始時には就職先をきめているわけなので、司法修習での勉強にも集中出来ますし、裁判官や検察官を目指すにしても、プラスに働くかどうかは担当教官次第ですが、決してマイナスに働くことはありません。実際わたしも、あの事務所はいい人ばっかり採用してるよねー、と言われました。

この記事が法曹を志す方の一助になれば幸いです。