牧村朝子『プライドパレードは「同性愛や性同一性障害などのパレード」か？』

プライドパレードは「同性愛や性同一性障害などのパレード」か？

4月28日日曜日、渋谷。「東京レインボープライド2013」において、プライドパレードが開催されました。

プライドパレードとはなにかというと、大まかに言えば「自分の生き方にプライドを持とうぜ」という行進。

もうちょっと細かく言えば、「いわゆる"普通"じゃないとされている、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・アセクシャル・Xジェンダー・パンセクシャルなどなどなどなどいろんな生き方があるんだぜ」という行進です。

このプライドパレード、東京だけでも日本だけでもなく、世界中あっちこっちで行われているものです。国によって色々ありますが、基本的には「同性愛に限らず、いろんなセクシャリティを肯定しようぜ」というスタンスで開催されています。

が。

ががが。

メディアでは、特に日本のメディアでは、

「同性愛や性同一性障害など」

という説明がなされていることが多いのね。
ちょっとここで、各メディアの見出しのことばづかいを見てみましょう。

「価値観押しつけないで」　レズビアンら２千人パレード
　―朝日新聞デジタル

ゲイパレード「東京レインボープライド2013」が4月28日開催へ、前夜祭イベントも
　―Buzzap!

レズビアンやゲイ、性同一性障害者など2000人が渋谷でパレード「価値観押し付けないで」
　―はちま起稿

と、いうように。

同性愛や性同一性障害などの当事者が行進している。

という言い方ですね。

この「など」の部分には、大きく分けてふたつの重要な人々が押し込められている。

ひとつは、「同性愛でも性同一性障害でもないけどそれらを肯定する、いわゆる"普通"とされるような人」です。ノンケ、シスヘテなどと呼ばれたりしますね。

もうひとつは、「同性愛でも性同一性障害でもないけど、いわゆる"普通"とされるわけでもない人」です。たとえば、他人に対する性欲/恋愛感情を抱かないアセクシャルや、恋愛対象を性別で判断しないパンセクシャルのような。

つまりね。

プライドパレードは、性同一性障害や同性愛者のパレードじゃない。

プライドパレードというのは「異性を好きになったっていいよね、同性を好きになったっていいよね、誰も好きにならなくたって、相手が異性か同性か判断つけなくたって、みんな違ってみんないいよね」というお祭りです。

だからね、同性愛者でも性同一性障害でもない人が参加したって全然いいんです。こういうイベントが１００万人規模で開催される国もあります。プライドパレードというのは、「誰が認める・認めないにかかわらず、世界にはすでにものすっごい色々な人がいるんだ」ということを、身をもって示しているんです。

なのに、こういうニュースを見出しだけ読んで本文読まずに「権利権利うるせえよ」「日陰者はひっそりしてろよ」「事実婚でいいじゃん」的コメントをなさる方のなんと多いことか。はちま起稿読者のみなさんのコメントを読んで、「わー、趣旨がぜんぜん伝わってなぁい☆ウフフッ☆」って思いました。ウフフッ☆

と、ひとしきり画面の前でローラさんのモノマネをしたところで。

「同性愛や性同一性障害」という表現を、見出しに使わなかったメディアの例をみてみましょうね。

代々木公園などでLGBTイベント「東京レインボーウィーク」－「性の多様性」考えるきっかけに
　―シブヤ経済新聞

ＧＷを虹色に　あすから都内で　性の多様性求めイベント
　―東京新聞

東京レインボープライド、個性も仮装もいろいろ
　―AFP

おお……より正確。だがしかしな、これ、

伝わる？

「同性愛や性同一性障害など」っていう言い方をしないと、今度はもともとそういうことに関心がない人に伝わりにくくなる現象が起きているのではないでしょうか。

ややー。

「日陰者はひっそりしてろよ」とおっしゃいますけどね、

すでにひっそりし続けた結果がこれだよ！！

認める・認めないに関わらず既に存在し続けていた、「男を愛する女・女を愛する男」以外の人々に、「日陰者はひっそりしてろよ」と言い続けた結果、いないことになってしまった。

「日陰」で使われる言葉と、「日向」で使われる言葉はぱっくり別れてしまった。

そのため「日向」向けにわかりやすい言葉で「同性愛や性同一性障害など」って言っても語弊があるし、かといって「日向」向けに「性の多様性」とか「虹色」とか言ってみてもそもそも意味が通じない。

より現実に即している「性の多様性」という言葉は、その現実を無いことにしてきた人々に意味が通じない。そんな状況が生まれているわけです。

「同性愛や性同一性障害などのパレード」

こんな書き方をしなくても伝わる世の中が到来してこそ、プライドパレードは本当のゴールにたどり着くと思う。

そのゴールに向かう着実な道のりへ、パレードに関わったみなさんはまた一歩、歩みを進められたのではないかと思っています。

心からの敬意を表するとともに、各メディアが二度と「同性愛や性同一性障害などのパレード」なんて書き方をしなくても済むような社会になってくれることを、わたしは願ってやみません。