牧村朝子『【速報とQ&A】フランスで同性婚が可能に 「みんなのための結婚」法案一部可決』

【速報とQ&A】フランスで同性婚が可能に　「みんなのための結婚」法案一部可決

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フランスで同性婚が可能になります。

francetvinfoスクリーンショット

本日2月2日、日本時間21時半、現地時間13時半ごろのニュースです。

フランスの国会にて、現在の結婚制度を見直す法案「みんなのための結婚(mariage pour tous)」の第一の条文である「結婚は異性、もしくは同性間のものとする」が可決されました。

francetvinfoスクリーンショット

賛成249票　対　反対97票

可決の瞬間国会ではスタンディングオベーションが巻き起こりました。

上の写真をクリックすると、現地メディアfrancetvinfoのサイトにつながります。立ち上がり歓声をあげて拍手する議員たちと、それを「シルヴプレ！」としずめる議長の様子が動画で見られます。

なお、あくまでも第一の条文が可決されただけであって、まだ法案すべてが可決されたわけではありません。今後主に争点となるのは「同性カップルが養子をとった場合、双方に親権を認めるか否か」です。少なくとも15日間以上は審議が続くだろうと予想されています。

以下、お寄せいただいた質問にお答えします。

Q&A

フランス国民はどう思っているの？

1月26日時点で63%が賛成しています（ル・モンド紙調べ）。

【#フランス同性婚法案現在の支持率】▽同性婚賛成…63%(↑3%)▽同性カップルの養子賛成…49%(↑3%)▽18－24歳のフランス国民の同性婚支持率…85%▽65歳以上のフランス国民の同性婚反対率…54%反対デモしたら支持率が上がる謎(ソース：Le Monde)
— まきむぅさん (@makimuuuuuu) 2013年1月26日

ちなみに、警察発表の数字によると、

反対デモ参加者…38万人(1月13日)
賛成デモ参加者…12万人(1月27日)

と報じられています。数字は両方パリのものですが、他にもリヨンなど各地で賛否両論のデモが起こっていました。

なんで同性カップルは子供ができないのに結婚が必要なの？

同性でも子育てしています。また、子育て以外の理由で結婚が必要です。

フランスではすでに30万人の子ども達が同性の両親に育てられています（出典：courrier international）。日本には正確な統計がないようですが、同性の両親を持つ子はいます。

・親が死去した親族の子どもを同性パートナーと一緒に養育している場合。
・親が異性と離婚し、同性と再婚した場合。
・親が精子バンクからの体外受精で妊娠出産した場合。

など、さまざまなケースがすでに事実としてあります。
そして子育て以外にも、

・一緒のお墓に入るため
・同世帯として税金を計算するため
・配偶者どうしとして保険に加入するため
・扶養/被扶養者としての扱いを受けるため
・配偶者が事故に遭った際、親族として面会するため
・配偶者を介護する権利を優先して引き受けるため

などといった多くの場面で婚姻関係が必要になる現状があります。
これを解決するには、同性婚を法制化するか、同性にも結婚同様の法制度を利用できるようにするしかありません。

偽装結婚が増えるんじゃないの？

逆に、同性婚を認めないことが原因の偽装結婚も発生しています。

確かに、同性婚を認めれば、ビザ目当てなどの偽装結婚は単純計算で２倍簡単になりますね。

しかし、同性婚ができれば偽装結婚しなくてよかったという例も実際にあります。アメリカでも日本でも同性婚が一切不可能だった時代のことです。アメリカ人男性と日本人男性/アメリカ人女性と日本人女性のカップルが、それぞれパートナーの国に婚姻ビザで渡るため、異性愛者を装って結婚したというケースです（数十年前の話で、現在は関係を解消なさっています）。

一方に「個人が、誰と、どこに住むかの自由」、もう一方に「移民増加のリスク」があります。偽装結婚は、結婚を異性間に限る国でもすでに起きていますから、「移民増加のリスクのために結婚を異性間に限って個人の自由を犠牲にする」のは得策とは言えません。

フランスでは既に同性カップルがＰＡＣＳ(結婚と同等の権利を認める制度)を利用できるのに、なぜ同性婚が必要だったの？

不平等だったからです。

ＰＡＣＳは結婚と違い、

- 遺産（遺書など別途書類なしに相手の遺産を相続できない）
- 養子（どちらか片方にしか親権が認められない）
- ビザ（婚姻ビザが下りない）
- 解消手続き（片方の意思のみで契約破棄できてしまう）

といった点で繋がりが弱く、俗に「二級の結婚」といわれるものでした。
同じフランス国民でありながら、配偶者が同性だというだけで利用できない制度があるというのは不平等であると考えられたため、現大統領フランソワ・オランド氏が結婚の平等を訴えて当選。今回の決定につながりました。

私事ながら、フランス人女性とＰＡＣＳした日本人女性である私も、ビザ切れで彼女と引き離されることがなくなりました。

異性間とも同性間ともいえない結婚はどうなるの？

法案の表現上しっくりこなくても、制度上は可能です。

「性別は男か女に分かれる」という考え方のことを「男女二元論」といいます。
男女二元論に基づいて政治を行う国は、フランス、日本、ロシアなどといった国々です。男女二元論に基づかない政治は、例えばオーストラリア（パスポートに男でも女でもない「Ｘ」表記が可能）や、ネパール（国勢調査で男/女/第三の性が選択可能）などで行われています。

今回の条文「結婚は異性もしくは同性間のもの」は、男女二元論に基づいています。「自分たちを異性カップルとも同性カップルとも思わない」フランス国民にはしっくりこない表現です。ですが、男女二元論の国では、国民の性別は本人がどう思うかに関わらず男性/女性に振り分けられるため、表現上しっくりこなくても、制度上は可能です。

また今回の条文は、「結婚は二者間のもの」と定めています。三人以上の国民に結婚関係を認めることはできません。ブラジルでは三人で結婚した前例があります。

以上です。またご質問やコメント、万一の間違いのご指摘などありましたら、ブログやツイッターあてに頂ければと思います。

それから前の記事に質問をくださったゆかりさんへ。わたしにはもう、ゆかりさんが答えを知っていらっしゃるように思えます。誰かを素敵だと思う気持ちを、「これは恋でこれは愛でこれは憧れ」とか、「これはレズビアンでこれはバイでこれはヘテロ」とか、きちきち分けすぎる必要は特にないです。言葉にとらわれすぎず、ご自身が誰かを素敵だと思う気持ち、誰かと一緒にいたいと思う気持ちを、どうぞ大事にしてください。コメントありがとうございます。

あと、もう一個だけ言わせてください。

森ガ！結婚してくれ！！