牧村朝子『２年前の、大阪で起こったことです。』

２年前の、大阪で起こったことです。

なんだか、紹介せずにはいられなかったので、します。

今から2年前、大阪で、タナカタクミさんという若い男性が、心臓の病気に苦しんでいました。

彼には、貯金がありませんでした。
フィリピンを襲った大洪水の際、現地在住の祖父母に全額を送金してしまっていたからです。

そして、病気の治療費のあてもありませんでした。
親に家を追い出されていたからです。彼がゲイだからという理由で。

あらゆることが行き詰まり、彼はついに通院できなくなってしまいました。彼の心臓には３つの穴が開き、眼球には血栓ができ、肺には水がたまっていました。

彼はどうしても、自分の力で治療費を稼ごうとしました。専門学校を出たばかりの彼は、日本語・英語・イタリア語など6か国語を話すことができ、ボランティアで英語を教えていた経験もあり、すぐに仕事を見つけられるように思えました。

けれど見つかる仕事は、すぐに働き始めなければいけないものや、フルタイムのものばかりでした。手術とリハビリに必要になる数か月間は、どんなに彼が望んでも、働くことができません。

ついにお金を払えなくなり、彼は通院をやめてしまいます。けれど彼の友達はあきらめず、募金をつのりはじめました。インターネットや街頭での募金を通じ、やっとのことで治療費が集まりました。ほぼ昏睡状態に陥っていた彼は、大きな手術を経て、今は健康に過ごしているそうです。

ジャパンタイムズのインタビューに答えて、彼はこう言っています。

「とても心が満たされる体験だった。自分はひとりぼっちなんだと思っていたけど、実際、世界中の人が自分を助けようとしてくれた」

２年前の、大阪で起こったことです。