【研究報告】
      精神疾患多発地帯:五島地方の研究*
    
                               カメ太郎**                         
    
     【抄録】            
     日本の最西端、長崎県に属する五島列島および五島灘に面する長崎西端の島々は、統合失調症など精神疾患の多発地帯である。それは筆者の経験上、全国平均の10倍に及ぶと推定される。それが何故なのか、島という閉ざされた特殊な世界であるからという意見も有る。しかし日本全国の島々が精神疾患の多発地帯であるという報告は未だ無い。また彼らは出身地、すなわち彼ら自身、または彼らの親、または彼らの祖父母、または彼らの曾祖父母など彼らの先祖の生まれた処が五島であるというのみであり、五島で生活している訳ではない。
     五島列島および五島灘に面する長崎西端の島々には統合失調症など精神的疾患を好発させる遺伝子を運ぶベクターが極めて多く存在していると考えざるを得ない。
     五島列島および五島灘に面する長崎西端の島々はレトロウイルスであるATLV(adult T-cell leukemia virus) の非常に蔓延している地方である。しかし日本には五島列島および五島灘に面する長崎西端の島々のようにATLV(adult T-cell leukemia virus)が高い割合で蔓延している地方は他にも沖縄諸島など複数存在する。それらの地方に統合失調症など精神的疾患が多発しているという報告は存在しない。 
     
    【key words】gotou insula, psychotic disorders, schizophrenia, adult T-cell leukemia virus,  vector
    
    【はじめに】
     五島列島・長崎の五島灘に面する離島(以降、正確ではないが“五島地方”とする)出身者の精神的疾患の特色として、統合失調症および不安障害が多いこと、その不安障害は統合失調症様障害と診断される頻度が極めて多いほど重篤であること、その不安障害は重篤であるが寛解が早いこと、その不安障害は統合失調症様障害との鑑別が極めて困難なこと、社会不安障害・恐慌性障害・強迫性障害は少なく全般性不安障害であること、このような特色がある。
     筆者は長崎市に30年余り在住しており、五島地方出身者との交際が現在まで非常に多かったこと、福岡県の前原市の病院に勤務してからも五島地方出身者の主治医となることが非常に多かったこと、筆者の通った高校は五島地方で極めて優秀だった学生が入学してくるところであったこと、筆者の友人に五島地方出身者が多数存在すること、それ故にこの報告を作成することが可能となった。未だ、五島地方に統合失調症など精神的疾患が多発するという報告は見当たらない。
     五島地方で極めて優秀だった学生も、大学入学とともに精神的に変調を来し、放校になったものを複数直接に知っている。五島地方出身者で挫折無く大学生活を終えた友人・知人を知らない。ほとんど全てが精神的に変調を来した。五島地方出身者には幼少期に於いてウイルスか何かの感染があるのではないかと疑っていた。 
       
    【症例】
    (症例1)男性。44歳。五島灘に面する離島の00島にて出生し、そこで小学校卒業まで育つ。父親も母親もその島にて出生しその島で育つ。
     父親は遠洋漁業を行っており、家庭は裕福であり、中学時より中学高校一貫教育の私立の学校へ入学。現役でN大学医学部へ入学。しかし入学後、進級困難となる。性格は社交的であるが、入学と同時に入部した柔道部で下級生を故意に怪我させるなど問題行動が多数有り、柔道部の問題人物であった。柔道部は3年目の夏の合宿のとき、夜、突然、布団を持って脱出する。そのまま退部となる。
     医学部を12年懸かって卒業。その後、医師国家試験を目指すための福岡の寮に入るが、6年懸かっても医師国家試験に合格できず、寮にて暴力行為を行い、精神病院措置入院となる。   
     精神病院措置入院6年を経て退院となる。現在、母親と同居し、医師国家試験を目指すための福岡の予備校に通いながら、通院薬物療法を行っている。 Risperidone  7mg/日の投薬を受けているが、自発性減退が激しい。
    
    (症例2)女性。五島列島の00島にて出生し、そこで中学2年まで育つが、遠洋漁業を行っていた父親が遠洋貨物運搬船会社に入社とともに福岡に移り住む。父親も母親も先祖が五島列島の名家の一つであり、ともに五島列島にて出生し五島列島で育つ。
     次女出産後、急性精神病状態となる。両親が精神病院入院を嫌うため本院入院。 Risperidone  5mg/日の投与にて落ち着くが、妄想・幻聴・幻視などが収まるのに3週間懸かる。
     4週間後、退院。その後は Risperidone  2mg/日の投与にて良好にコントロールされている。
    
    (症例3)女性。2人姉妹である症例2の2歳年下の妹である。五島列島の00島にて出生し、そこで小学6年まで育つ。
     長男出産後、急性精神病状態となる。両親が精神病院入院を嫌うため本院入院。  Risperidone  5mg/日の投与にて落ち着くが、妄想・幻聴・幻視などが収まるのに2週間ほど懸かる。
     3週間後、退院。その後は Risperidone  2mg/日の投与にて良好にコントロールされている。
    
    (症例4)男性。五島列島の00島にて出生し五島列島にて育つ。成績優秀であり、高校は長崎市の名門公立学校へ進学する。その長崎市の名門公立学校でも成績優秀であり、現役で優秀な成績で九州大学物理学科へ入学。しかし大学の授業には出席せず、高校時代から凝っていたパチンコにのめり込み、150万円の借金を作る。その借金はすべて高利貸しからの借金であり、両親が五島の土地を売りその借金返済に充てる。
     大学はほとんど授業に出席していないため放校となる。放校後、パチンコ店の店員をするなどして生活する。両親が脳に腫瘍が出来たのではないかと疑い、本院へ連れてくる。
     頭部CT上、特記すべき所見なし。 Risperidone  4mg/日の投与を開始。両親の説得により、再び共通一次試験を受けることになる。9ヶ月間の独学の後、共通一次試験を再受験。京都大学の工学部か物理学科へ行く予定だと言っていたが、共通一次試験の結果は予定より極めて悪く、結局00大学数学科へ入学。その後、精神科の薬物は服用せず、1年経過しているが、経過は順調であると連絡有り。
    
    (症例5)男性。症例1の柔道部の後輩。症例1と同じく五島灘に面する離島の00島にて出生し育つ。大学入学と同時に症例1より無理矢理に柔道部へ入部させられる。入部当初、症例1より立ち技の練習にて膝の靱帯を切られたりなど症例1よりかなり過酷な扱いを受けている。
     大学1年の9月、朝、下宿の壁を叩いていて、右第二から第四中節骨を骨折。また、その骨折が治癒して間もなく、山道にて極く低速で中型バイクを運転中、突然、意識を消失し転倒する。外傷は軽く、頭部打撲も無く、柔道の練習も休まず行えた。この意識消失のバイクにての転倒が2回続く。
     授業へはほとんど出席して居らず、進級できず、そのまま退学し、福岡の両親の知人の元へ就職。
     人が良く、症例1を少しも恨んで居らず、却って非常に慕っている。福岡へ就職当時より精神的に異常なところがあると症例1より伴われて本院受診。妄想・幻聴有り。幻覚は否定。 Risperidone  4mg/日の投与を開始。妄想・幻聴は軽減する。両親の非常に親しい知人の元で働いており、また性格は非常に温厚であるため解雇にはなっていないが、仕事上、失敗が目立つ。
    
    【考察】
     五島地方に統合失調症など精神疾患が多発する理由は第一にそこがATLV(adult T-cell leukemia virus)の多発地帯であることであることをまず考える。そしてレトロウイルスであるATLVは少なくともin vitro のとき、分裂している細胞にのみベクターとして遺伝子を挿入することができるとされている1)。
     日本には沖縄諸島、九州の宮崎・鹿児島・長崎の五島灘に面する離島海岸、五島列島、四国の一部の海岸、隠岐、紀伊半島先端、東北の飛鳥、牡鹿半島、三陸海岸、そして北海道のアイヌ人というATLVの非常に濃厚に分布している地域、および地方がある。通常の日本人のATLVの感染率は0.5~1.2%であるのに対し、アイヌ人は45.2%,琉球人は33.9%という高率である6)。
     五島列島・長崎の五島灘に面する離島を除き、その他の地域に統合失調症など精神的疾患が多発しているという報告が存在しない理由は、それらの地域に精神的疾患を発病させる遺伝子が存在しない故と考えるのが最も適切と思われる。
     その遺伝子は何に依って運ばれているのか? 五島地方特有の昆虫類に依るのか? 
     また世界的に見てATLVはカリブ海沿岸と日本の南西地方およびニューギニア地方および米国の一部、カリブ諸島のほぼ全域、日本のアイヌ人、南アメリカ北部、そして特にアフリカに地域特異的な分布を示している4)。この分布について未だ充分に説明のできる説は出ていない。しかも未だそれらの地域が統合失調症など精神疾患の多発地帯であるという報告は存在しない。
     日本には中南米より海流に乗って来た人々が存在すると説く書籍が存在する6)。中南米とはATLVの流行地である。そして中南米よりの海流の流れ着く場所として、五島地方は他のATLVの濃厚に分布している地域と同じように確率が高い6)。
     すなわち中南米から海流に乗って西へ西へと流れていった人々が統合失調症など精神的疾患を非常に発生させやすくする遺伝子を持っていた。それは未知のウイルスかスピロヘータの存在の可能性もあり得る。そして五島地方に漂着し土着して行き、その地域の統合失調症など精神的疾患多発の要因を作った、と考えることができる。
     中国に於いて中南米よりの海流の流れ着く場所は存在する。しかしATLVが中国に於いて濃厚に分布している地域が存在するという報告は未だ無い。また統合失調症など精神的疾患が多発する地域の存在の報告も無い。それは未だ調査されていない可能性も高いが、中国は早くから文明が発達し、それら漂着民を受け入れなかった、と考えることも出来る。
    
    【最後に】
     中南米に統合失調症など精神的疾患が多発している地域が存在している可能性は高いと考えられる。
     また、高度な文明を誇りながら海底に沈んだと言われるムー大陸からの漂流者が黒潮に乗り日本のそれらATLVが分布濃厚な地帯へ辿り着いたという説も存在する5)。
    
    【参照】
    1)Bowles NE, Eisensmith Rc, Mohuiddin R, et al.: A simple and efficient method for the concentration and purification of recombinant retrovirus for increased hepatocyte transduction in vivo. Hum Gene Ther 7: 1735-1742, 1996
    2)古田武彦:古代通史、原書房、p299; 1987
    3)古田武彦:人麿の運命、原書房、p281; 1989
    4)古田武彦:古代史を揺るがす、原書房、p387; 1992
    5)古田武彦:古代史をひらく、原書房、p343; 1994
    6)古田武彦:海の古代史、原書房、p283; 1996
    7)橋口尚武:海を渡った縄文人、小学館、p346; 1999
    8)kohlstaedt,L.A.et al.:Crystal structure at 3.5 A resolution of HIV-1 reverse transcriptase complexed with an inhibitor. Science, 256:1783-1790,26 JUNE 1992
    9)Kotani H, Newton PB 3rd, Zhang S, et al.: Improved methods of retroviral vector transduction and production for gene therapy. Hum Gene Ther 5: 19-28, 1994
    10)Levy,J.A.:Pathogenesis of human immuno-deficiency virus infection. Microbiological Reviews, 57(1):183-289,Marth 1993
    11)Yoshimatsu T, Tamura M, Kuriyama S, et al.: Improvement of retroviral packaging cell lines by introducing the polyomavirus early region. Hum Gene Ther 9: 161-172,1998
    
    
    Reserch of Gotou insula:Zone of multiple occurence psychosis.
    Toshiro Mifune:
    
    
    http://sky.geocities.jp/mmm82888/2975.htm