あのころの夏その3
(続き)
仲間にはYくんというガキ大将みたいな男の子がいた。彼はヤンチャだけど、とても正義感の強い子だった。
Yくんは「仕返ししようや」と決然として言った。Yくんは同時、私たちの法律だった。彼の言葉は、従うべき言葉。
(ちなみに彼は、いじめっこな上級生から女子を助けるときに、「僕の女たちに手を出すな!」って珍名言を吐いたことがあります)
仕返しのアイデアはひょうきん者のSくんが出した。
「溺れてるふりしようよ。でさ、助けにきたら、もがくふりして川に引きずりこむねん」
みんなの目がキラッと輝いた。みんな泳ぎには自信がある。この川は私たちの庭なのだ。
ひとりだけまともに泳げないドンクサイ私は、助けを求める役を割り振られた。
恐るべし小学生。
集団で溺れるなんて不自然だと思わなかったし、まして後がどうなるかなんて、みんなまったく考えてなかったと思う。
私を除く数人が、川の真ん中まで泳いでいった。
しばらくしてからバシャバシャやりはじめた。
私は泣いてるふりしながら(さすがに涙は出なかったが)、パラソルの下で談笑してる大学生グループのところに走っていき、「たすけて!友達が溺れてる!」と言った。我ながら迫真の演技だった。なぜいまだにハリウッドからスカウトが来ないのだろう。
談笑してた大学生たちの行動は驚くほど早かった。「えっ?うわっ!助けろ!」などと言いながら、一人残らず脱兎の勢いで救出に向かった。
残された私はポカーン。ちょっと不安になった。
結果的には、すぐに、本当にすぐに、演技だってバレた。なにしろ溺れるふりしてるみんな、ヒーヒー笑ってたから。
「溺れる演技って難しいわ。顔がニヤケてくるし。大学生らが立ち上がってこっち来ようとしたとたんにHがブーッて吹き出したから、みんな吹き出してしもたわ」と、あとでYくんが言ってました。
迫真の演技だったのはハリウッド女優候補の私だけかい。
(続き)
仲間にはYくんというガキ大将みたいな男の子がいた。彼はヤンチャだけど、とても正義感の強い子だった。
Yくんは「仕返ししようや」と決然として言った。Yくんは同時、私たちの法律だった。彼の言葉は、従うべき言葉。
(ちなみに彼は、いじめっこな上級生から女子を助けるときに、「僕の女たちに手を出すな!」って珍名言を吐いたことがあります)
仕返しのアイデアはひょうきん者のSくんが出した。
「溺れてるふりしようよ。でさ、助けにきたら、もがくふりして川に引きずりこむねん」
みんなの目がキラッと輝いた。みんな泳ぎには自信がある。この川は私たちの庭なのだ。
ひとりだけまともに泳げないドンクサイ私は、助けを求める役を割り振られた。
恐るべし小学生。
集団で溺れるなんて不自然だと思わなかったし、まして後がどうなるかなんて、みんなまったく考えてなかったと思う。
私を除く数人が、川の真ん中まで泳いでいった。
しばらくしてからバシャバシャやりはじめた。
私は泣いてるふりしながら(さすがに涙は出なかったが)、パラソルの下で談笑してる大学生グループのところに走っていき、「たすけて!友達が溺れてる!」と言った。我ながら迫真の演技だった。なぜいまだにハリウッドからスカウトが来ないのだろう。
談笑してた大学生たちの行動は驚くほど早かった。「えっ?うわっ!助けろ!」などと言いながら、一人残らず脱兎の勢いで救出に向かった。
残された私はポカーン。ちょっと不安になった。
結果的には、すぐに、本当にすぐに、演技だってバレた。なにしろ溺れるふりしてるみんな、ヒーヒー笑ってたから。
「溺れる演技って難しいわ。顔がニヤケてくるし。大学生らが立ち上がってこっち来ようとしたとたんにHがブーッて吹き出したから、みんな吹き出してしもたわ」と、あとでYくんが言ってました。
迫真の演技だったのはハリウッド女優候補の私だけかい。
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