ヒラメ男とサイヤ人その1 | 睦美の短歌日記

ヒラメ男とサイヤ人その1

こないだ警察がうちを訪ねてきた。
近所で暴行事件があり、その聞き込みと、防犯意識の啓蒙活動のために巡回中らしかった。
寝起きのぼんやりした頭で、協力できることはないながらも一生懸命質問に答え、ねぎらいの言葉をかけた。
ご苦労様です。


私も一年ほど前に、すごく怖い思いをしたことがある。
ちなみに私はよく痴漢に合う体質だ。ピチピチの二十歳前後のころが一番ひどかった。
体小さいし、見た目おとなしそうで、抵抗しなそうに見えてたんじゃないかなァと思う。けっ、私のどす黒い内面を知らんアホどもめ。
満員電車で集団痴漢されたり。
後ろからきたバイクにお尻触り逃げされたり(私はチャリに乗ってて、チャリごと転けた)。
マンション前で胸揉まれ逃げされたり。
地下道でチンコ出してるオッサンを友達みんなで一緒に指差して笑って「キャー」と言いながら逃げたり(これは違うか)。
いろいろ悲惨な目に合ってきた。
(つーか平均と比べてどんな頻度なのかを知りたいもんです)
それぞれ怖かったし腹も立ったけど、でも、一年前のあの事件ほど怖い思いをしたのは、はじめてだった。しかも昔より今のほうが確実にふてぶてしくなってるのに、怖さの質が全然違ったのた。

夜だった。
コンビニに夜食を買い出しに行った帰り道、車がひっきりなしに通る国道沿いで、「すいませーん」と声を掛けられた。
振り向くと、車の中からヒラメみたいな顔をした男がこっちを見てた。
道を聞きたいのかなと思った。
「ハイ?」と私。
「家、近所?」とヒラメ。
「えっ?」
「車で送ってあげようか?」
「や、結構です」
「彼氏いるの?」
うーんキモい。
鏡で自分のそのヒラメ顔を見てから出直してこい!と言いたいのをグッと我慢し、「ナンパしてるん?ごめんね、家で彼氏が待ってるから無理やわ」と嘘ついて、そそくさと歩いて離れた。
でもまあ、まだまだ若く見えるのかしらー♪なんてノンキなことを思いつつ。
こういうふうに木で鼻をくくったようにはっきり断ると、ナンパなら大抵しつこくはされない。さすらいのハンターたちは、釣れそうな次のターゲットを目指すのだ。あまりツンケンしたら、むかつく捨てゼリフを吐かれるけど。

ヒラメ男に背を向けた私は、すっかり気を抜いてた。

(続く)