睦美の短歌作法
■笑ったり泣いたりしてた ポスターの中のあなたは風が吹くたび
お題「ポスター」を見た瞬間に、「めくれかけてパタパタしてる選挙ポスター」が浮かび、よし、このイメージで行こうと二秒で決めました。
妄想は膨らみます。
選挙に出てるのは元カレで、私は場末のスナックで働くシングルマザーで、『身分違いの恋だから別れなきゃ。彼の足を引っ張っちゃう』と、選挙直前に泣く泣く身を引いたんです。
ついでにその彼には、その選挙区を牛耳る大企業の資産家の社長の一人娘のお嬢さま(美人で性格もいい)との見合い話が持ち上がってたりするんだ。
でも彼は、私と別れないつもりでいる。「君も君の息子も、俺が幸せにしたいんだ!両親は俺が説得するから」とかなんとか言っちゃって。ちなみに彼の父親も有力な政治家。
けなげな私はたぶん、「ほかに男ができたの。あなたみたいな堅苦しい人、もうウンザリなのよ」とか嘘ついたんだよ。タバコをぷかーっとふかしながら「それにさー、あなたセックスも下手よね、アハハ」とか要らんことまで言って。
そんなある日、街を歩いてたら、彼の選挙ポスターを見かける。
思わず足を止める。
パタパタ揺れるポスターは彼の表情まで変化させ、泣いてるようにも笑ってるようにも見えた。
あなたは私と別れて悲しいの?笑顔の裏側で泣いてるの?
いいえ違う!泣いてるのは私、笑ってるのも私だ!
でもいいの、あなたのためになるならいいの、素晴らしい政治家になってねあなた…ょょょ…(号泣)
じゃじゃーん!(ドラマチックなBGM)
妄想膨らますのに30秒かかりません。
そして短歌にした。
■笑ったり泣いたりしてる ポスターがぱたぱた風に揺らされるたび
うーん意味掴みにくいか。もうちょい意味分かるようにしよう。
■笑ったり泣いたりしてた ポスターの中のあなたは風が吹くたび
おし、これでいいや。
愛する男のために泣く泣く身を引いたシングルマザーの悲しみなど、まして資産家のお嬢様の存在など、まったく読みとれない歌ですが、私の歌の半分はこういう妄想をもとに作られております。
1グラムのリアルに99グラムの妄想をトッピング。
現実生活にドラマが欲しい、そんな今日このごろ。