梔のかほり -7ページ目

梔のかほり

霧雨の濃い、そんな季節に溶けていきたい。そんな言葉


青葉が色を失う季節


草は枯れ空気は冷え


太陽すらもどこか不機嫌


そんな季節



冬は人恋しくなるというけれど

一年中寂しいって言ってれば世話はない

冬は

孤独で

凍る

そんな季節


雨が降れば固まって害を為す

そんな冬だからこそ月は


悲しげに

涙するほど美しい



あの月を手に入れられたら


指の間からほろほろと

溶けていくとわかっていても

手に入れたいとさえ

独り占めしたいとさえ感じる




月は古来から力を持つと信じられている


あながち嘘ではなかろうよ


では真であるのか


月の力で何事かを成せるというのか


そうは言うておらぬさ


全ては人の為すこと


月が我らに力を貸すわけでもなく


月が我らの想いを叶えるわけでもないのだ


そもそも月に力等無い


先程 言うておった事と矛盾しておる


だからこそ人があるのだ


力があると信じた者は


その力を自の裡からひねり出すのさ


では月は飾りであると

祭りの御輿と変わらぬと言うのか


まぁそんなところだろうな



そんなところなんだな。