梔のかほり -2ページ目

梔のかほり

霧雨の濃い、そんな季節に溶けていきたい。そんな言葉

彼は暗い道の上にいた。

正確にはそこが道なのか、どこか建物の中なのか

彼の感覚ではつかみきれなかった。


体内の感覚を総動員して自分の状況を把握しようとするがうまくいかない


地面はあるようだが自分の足元だけなのかもしれない


すると

ほのかに煙草の煙であろう匂いを感じた。



あぁ、この匂い。長年吸い馴れた安物煙草だ。

場所はわからないが確実に感じる

動揺を落ち着かせようと漂う煙を求めて深呼吸してみた


すると


気付けばどうということはない、いつもの日常であった。


これもいつもの如く寝タバコをかましていたようだ


なるほど、バツの悪い夢を見ると思ったらお気に入りのシャツに灰が降りかかっている


どうにも週明けから気分が乗らない

仕事にも身が入らないし

同僚と呑んでいてもどこか抜けたような会話しかできない


日常 に飽きているんだ


あの出来事があってから



あんな出来事があったら


こんな 日常 は



吹き飛ぶ