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抜粋
連載】(第2回) 荷役労働災害防止コンサルティングにおける診断結果と 指導内容について
陸上貨物運送事業労働災害防止協会 安全管理士
陸災防では労働災害を発生させた陸運事業場等に対して、安全管理士による「荷役労働災害防止対策コ ンサルティング事業」(以下「コンサルティング」という。)を行っています。本連載では、実施したコ ンサルティングの内容等を紹介します。貴事業場における労働災害防止対策の参考にしていただけれ ば幸いです。
1 コンサルティング実施事業場
⑴ 実施事業場:陸運業 従業員数35名
⑵ 実施時期:9月
⑶ 被災者:運転者/66歳/経験年数38年
⑷ 車両:スタンショントレーラ(平床ト レーラ)
⑸ 着用保護具:保護帽、皮手袋、安全靴
2 ヒアリングの内容
⑴ 災害状況 被災者は、荷卸し先倉庫内で、同僚の車両 の積荷(コイル)のシート外し及び固縛解き を手伝うためトレーラ荷台に上がった。荷台 にはスタンション間に転落防止用ネットが 張ってあったが作業の邪魔になるため張りを 緩めた。作業終了後、荷台上に残したシート が天井クレーンによる荷卸し作業の支障にな ると思い、同僚と共同で荷台の隅に移動させ ることにした。荷台上で中腰の体勢で引っ 張った際に、2人の呼吸が合わず被災者のみ が引っ張ることになり、勢い余って手元が滑 りバランスを崩し、転落防止用ネットを越 え、荷台から転落し右上腕を骨折した(休業 2か月)。
⑵ 災害の原因 ・転落防止用ネットの張りを緩めて作業 した。 ・荷台の端で外側に背を向けシートを引っ 張った。 ・2人の呼吸を合わせられなかった。
⑶ 安全管理の状況 ・荷台上での荷役作業時は、保護帽、手 袋、安全靴の着用義務とともに、荷台前 部後部に立てられたスタンションの間に 転落防止用のネットを張った状態で行う 手順が決めてあった。 ・荷卸し場での同僚車両への作業応援は常 態化しており、現場での差配は運転者に 任せていた。 ・天井クレーンでの作業時は、荷主のク レーンオペレーターが指示を出す。 ・運転者への教育指導は、国土交通省の定 める「法定12項目」を実施している。 ・荷役作業の教育については、雇入れ時に 1か月から3か月程度の横乗りで指導して いる。 ・荷主の指示により、月1回の現場パト ロールが義務付けられ、実施している。 ・他社の事故の都度、荷主から得た情報を 乗務前・乗務後点呼、朝礼等を通じて従 業員に通知し注意喚起している。
3 指導・助言事項
⑴ 作業手順書の遵守を徹底するため、パト ロール時に遵守状況を確認すること。
⑵ 作業手順書が現状に見合うものであるか 見直しを行うこと。
⑶ 荷役ガイドラインに記載されている「労 働者の遵守事項」を「法定12項目」の教育に 織り込んで、荷役作業の安全についても定 期的かつ継続的な指導・教育を行うこと。
⑷ 積卸し作業等における作業応援は、運転 者に一任するのではなくルールを作り、そ れを遵守させる。複数人での作業となるの で、指揮命令系統を明確にし、事前に教育 を受けた者の中から指揮者を選任してお く。または、現地で指揮者を選任させてか ら作業に従事させることを徹底すること。
4 コンサルティングを終えて 本件死傷病報告書の「災害発生状況及び原 因」に「手順は規定されていたが、被災者が気 楽に考えてしまった」との記載がありまし た。このことから、この会社は安全な作業を 行うため、手順・教育・指導・訓練・確認等、一 通りのことを行っていると感じました。 それでも、守るべき規定や災害防止策より も、自分の思いや都合を優先することで災害 を呼び込んでいる、そのことを当該運転者も 改めて認識したと思います。同様に、管理者 側でも守るべきルールや手順を作り遵守状況 をパトロールしていても事故は起こりうるこ とを確認できたとともに、手順の中に守りに くいところがあるかの再確認は必要と認識し たと思います。 本件では、被災者本人が手順を守らなかっ たことが事故に結び着いていることが明らか ですが、別件の死傷病報告書には「本人の不 注意により」、「注意力不足により」の記載 が多く、その災害の原因を作業者の注意力の 不足によるものとして片付けることで、守ら せる手順の有無やその教育・指導・訓練・遵 守状況の確認等、管理者側が実施していなけ ればならないことが判然としないものが多い と感じます。 「注意して作業するように」や「指示を守 るように」だけではなく、作業する中で注意 を払うべき対象と事柄を本人が意識できてい なければ、事故災害は起こりやすくなり、発 生した事故災害について意識させるべき内容 を明確にしなければ、類似した事故が発生す る可能性が高くなるのではないでしょうか。
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