問い フォークリフトの作業計画について法令、通達がありますか

 

回答

 新聞報道では、

「神戸・ポートアイランドの市道で4月、トレーラーから落下した鉄製のかごに歩行者が下敷きになった事故で、この鉄かごの撤去を怠ったとして、兵庫県警は近く、自動車販売会社の従業員の男を業務上過失致傷容疑で聴取する方針を固めた。

 捜査関係者への取材で分かった。県警はこの男が事故前日にトレーラーに鉄かごを載せたことが事故の引き金になったとみている。

 事故は4月11日午前6時45分ごろ起きた。神戸市で、同社員(61)=自動車運転死傷処罰法違反罪で有罪判決=の運転するトレーラーが積み荷作業場から車道に出た際、コンテナ上に置かれていた鉄かご(約900キロ)が電線に引っかかって落下。歩いていた男性が下敷きになった。

 男性は頭蓋骨骨折などで一時重体となり、その後一命を取り留めた。捜査関係者によると、鉄かごは作業場内で鉄くずやタイヤを入れる用途で使われ、コンテナに載せるものではないという。」

 とあります

 

関係法令(作業計画)はどうか

労働安全衛生規則(作業計画)

第百五十一条の三 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第百五十一条の七までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。

2 前項の作業計画は、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない。

3 事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項の規定により示される事項について関係労働者に周知させなければならない。

 

第1項では、「作業計画を定め、当該作業計画により作業を行う」とあります

第2項では「計画では、作業の方法が示されているもの」とありますから、コンテナに鉄かごを置くことの可否が示されているかがポイントですが、記事には「コンテナに載せるものではないという。」とあります。

 

 鉄かごについて、作業計画では何の記載もない、或いは、作業計画を作成していなかった、が心配されます

 

 作業者は、作業計画に定めがないので、独自の判断で効率を高めるためにコンテナの上に置いたか、或いは、作業計画に反して不安全な作業を行ったのかが確認されるべきと思料します。

 

安全衛生管理体制はどうか

 関係法令では、

(作業指揮者)

第百五十一条の四 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。

とあります

「作業計画」を作ったのなら、これに基づいて作業を行わせるべく、作業指揮者が指揮を行うべきですが、単独作業の場合と輻輳しての作業の場合がありますので、通達を見ますと、

 

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-28/hor1-28-93-1-0.htm

基発第78号

昭和53年2月10日

  12 第151条の4関係

    本条の作業指揮者は、単独作業を行う場合には、特に選任を要しないものであること。

また、はい作業主任者等が選任されている場合でこれらの者が作業指揮を併せて行えるときは、本条の作業指揮者を兼ねても差し支えないものであること。なお、事業者を異にする荷の受渡しが行われるとき又は事業者を異にする作業が輻輳するときの作業指揮は、各事業者ごとに作業指揮者が指名されることになるが、この場合は、各作業指揮者間にておいて作業の調整を行わせること。

 

とあります。

 単独作業の場合は、指揮者をおくか、或いは、事業者が直接「作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない」こととなります。

 

作業計画はどのようなものか

 前記の通達では、

11 第151条の3関係

   (1) 本条は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときの作業の安全を図るため、事前に作業の方法等について検討させ、作業計画を定めさせることとしたものであること。

   (2) 第1項の「車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うとき」の「作業」には、フォークリフト等を用いる貨物の積卸しのほか、構内の走行も含むこと。

   (3) 第1項の「荷の種類及び形状等」の「等」には、荷の重量、荷の有害性等が含まれること。

   (4) 第2項の「作業の方法」には、作業に要する時間が含まれること。

   (5) 第3項の「関係労働者に周知」は、口頭による周知て差し支えないが内容が複雑な場合等で口頭による周知が困難なときは、文書の配布、掲示等によること。

 

鉄かごの取扱についても、検討、作業計画を定め、作業者に周知することが求められています。

 

 作業者からは「特に何の指揮もなかった」旨の反論が予測されますが、安全管理は、まず「基準(この場合は作業計画)」を示し、次に現実とのずれを指摘するが、あるべき姿です

  基準がなければ、指揮出来ません。

 

 作業計画については、会社の基準、方針ですから法令にいう「文書の配布、掲示等」によることを推奨します。

 これらにより少なくとも「違反だ」というい指摘がないようにと思料します。

 

 

違反か

 「違反だ」という判断は所轄労働基準監督署長のご判断によると思います。新聞等の報道を待ちたいところです。