問い

 フルハーネス墜落制止用器具の2丁掛けは、作業時は禁止、通行時は励行と指導されています

 

回答 

 最近教科書の記載が変わったときいています。従って、これに「よるべきと思料しますが、以下申し上げます(なお、私見ですのでご留意願います)

 

 衝撃荷重について(けがの程度で把握)

 私たちはバンジージャンプについてよく承知しています。高い所から墜落しても、衝撃はほとんどありません。「怖かった、また、やりたい」という。

 

 軽トラックの荷台からひらりとかっこよく飛び降りた従業員がいました。

一緒に作業していた同僚によると

「左足から片足ですとんと着地しました。」

「しばらく動きませんでした。顔がゆがんでいましたが、痛かったのだと思います」

「どういうように飛び降りたのですか」

ときいたところ、

「こうですわ」

といって、私の目の前で、軽トラックの荷台から、それこそひらりとかっこよく飛び降りて見せました

 内心どっきとしました

 災害調査のときに、説明を強要し、再現させ、けがを引き起こしたということであれば、大変です

 「おい、やめろよ」

と、止める時間もありません。

 しかし、無事でなんともありませんでした。

 

 荷台から、あおりを隔てて、地面まで1.5㍍

観察すると、ひらりと着地しながら、膝の関節をうまく使って衝撃荷重を和らげています。同僚が言うには、「関節で衝撃を和らげるなどではなく、ただストンと着地し、しかも、左足1本です」という。

 

 衝撃荷重を考えるに、落下の距離、作業者の体重、落下時の衝撃を吸収するための地面の堅さ、発生した衝撃荷重を吸収するために何秒かかったか(すなわち膝関節を効かせてゆっくりと衝撃荷重を吸収したのか)がポイントです

 

 「いや、太ってましたよ。80㎏はあったのと違いますか。私は50㎏です」

 

かなり衝撃荷重は大きかった上に、着地時に衝撃荷重を短い時間で受け止めたようです

 

 計算式を解説しますと、

落下距離が1.5㍍ですから、地面に激突時の速度は、5.4㍍/秒です

 このとき作業者は80㎏で、ストンと落ちましたから0.2秒で衝撃荷重が吸収されたとすると、2160ニュートンと計算されます

(目安ですから、ご意見もあると思いますが、飲み込んでください)

「被災者は半年休んで、復帰したときはびっこをひいていました」

というので、後遺症があるということです。

 

 2160ニュートンの衝撃は、骨折、後遺症と理解できます。

 

一方、目撃した同僚は体重50㎏です。衝撃荷重は1350N

膝関節を効かせて、ゆっくり着地した模様で、0.3秒で衝撃を吸収したとすれば、衝撃荷重900Nとなります。

 

 

フルハーネス墜落制止用器具

 落下距離については次のように考えていました

 墜落したときに、フックの取り付け位置、D環の位置、加えてランヤードの長さを自由落下距離とします。この落下距離に応じた衝撃荷重がかかり、次に、ショックアブゾーバーが作動して、衝撃を緩和しながら、落下していき、これらを合計したものを落下距離斗しています

 

 第1種ショックアブゾーバーの場合は、D環より上にフックを取り付けしますから、

自由落下距離2.3㍍などで、このときの衝撃荷重を計算しますと2375N。これをショックアブゾーバーで吸収すると考えます。

 

 

フルハーネス墜落制止用器具2丁掛けの場合はどうか

 販売されている2丁掛けは、

1 ショックアブゾーバーが2本で、それぞれにランヤードがある

2 ショックアブゾーバーが1本で、ランヤードが2本ある

のタイプがあります。

 

 2のタイプの場合は、自由落下距離分の衝撃荷重が、1本のショックアブゾーバーにかかるのですから、ランヤードが1本の場合と変わらない、という

 そのれぞれのランヤードには、半分の荷重がかかっていると思われます

 

 次に今回課題となっている1のタイプですが、考察してみますと、

 

 片方が巻き取り式、他方が通常のランヤードの場合

を考察しますと、巻き取り式は10センチ程度の落下で衝撃を感知して、ロック機能が働いた場合、衝撃荷重は10センチ落下に対するもので、これを巻き取り式に設けてあるショックアブゾーバーが衝撃荷重を緩和しながら、作業者が落下し、ここで落下距離1.7(すなわち他方のランヤード)に達したときに、他方のショックアブゾーバーが働き(衝撃を感知した場合)、

 このとき作業者は、2本のランヤードにつるされる形となります。

 

 それ以降の落下は、2本のランヤードのショックアブゾーバーの性能により衝撃荷重の緩和速度が違うにせよ、ほぼ均等に荷重がかかり、落下を続けるのではないかと推察します。

 

両方が通常のランヤードの場合

を考察しますと、フックの取り付け位置が違いますから、どちらか1本のランヤードに、まず衝撃荷重がかかります。同時はないと思料します。衝撃荷重がかかる時間は、5分もかけてじっくりとではなく、わずか0.2秒程度ですから、最初のランヤードに荷重がかかります(自由落下距離2.3㍍などで、このときの衝撃荷重を計算しますと2375N。)

 ここで衝撃荷重は緩和され、このとき、間髪を入れず、第2のランヤードに荷重がかかりますが、かなり緩い衝撃荷重と推察されます

 なお、教科書にある8㌔の衝撃荷重は計算はどうやって導いたのか、よくわかりません。

以上ですが、中労防の教科書をみますと、

 

新しい教科書の指導はどうか

 

 

 

私見ですが、

 この箇所は、次の記載にするべきではと思います

 ショックアゾゾ-バーは8㌔Nには耐えられない

 並列に2個つないだ場合は耐えられない

 直列に2個つなげば8㌔Nに耐えられる

 衝撃荷重は、ショックアブゾーバーに支配されず、体重や自由落下距離、衝撃時の受け身の態様に支配される。

 衝撃を感知してショックアブゾーバーが作動する

 体に作用する衝撃荷重はショックアブゾ-バーで緩和されるが、徐々に減衰し、最終はゼロになる。ゴムが入ったランヤードもある

バンジージャンプでは10秒以上かけて衝撃を緩和している

 

 

 

 

以下ご参考

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000471969.pdf

厚生労働省のサイト