➀局排の点検は、年一回の定期自主検査、月一回の月例点検及び日常点検(毎日又は使用前)も必要でしょうか? 
 日常点検は各職場でどう管理していくかの問題かと思いますが、明確に法令で定められていますでしょうか?

②日常点検で確認すべき項目(風速測定など)は定められていますでしょうか?

 

回答

 ご質問に関しまして関係法令をみますと、局所排気装置(施行令第15条第9号)は、厚生労働省令(有機溶剤中毒予防規則第20条、特定化学物質障害予防規則、特定化学物質障害予防規則第30条など)で定めるところにより、定期に自主検査を行い、とあります。

 

①  について

特定化学物質障害予防規則、特定化学物質障害予防規則第30条では、「一年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない」とあります。ご質問の「月一回の月例点検のほかに日常点検(毎日or使用前)」については法令では要求されていません。

 

②  について

特定化学物質障害予防規則第八条をみますと、「 事業者は、第三条、第四条第四項又は第五条第一項の規定により設ける局所排気装置又はプッシュプル型換気装置については、労働者が第一類物質又は第二類物質に係る作業に従事している間、厚生労働大臣が定める要件を満たすように稼働させなければならない。」とあります。

 法令上作業開始前の点検が要求されてはいませんが、当該局所排気装置が「要件を満たすように稼働」していることを要求されていますので、作業開始前等の風量測定等が必要と思料致します。

 

着目点

 管理において、法令遵守の取り組みから自律管理に大きく動いています。

法令遵守であれば、災害が発生しない、ということはいえません。法令は、すべての事象に網羅的に対応していて、というものではありません。生産の現場では、作業方法や原材料、装置、携わる人たちが変化していて、法令はそれらに適合できていない場合が指摘されています。

 

 最近は、紅麹原料のサプリメントなどについて規制のあり方が指摘され、多くの被害が出た後の対応が、行政、企業への信頼失墜につながっています。法令遵守は要求事項ですが、それだけでは大丈夫とはいえません。消費者の被害、企業のダメージは大きいと思料します。

 

(サプリメントの開発、製造、販売の課程において、「被害」の可能性を潰していく、或いは、早期に発見して販売停止や救済措置に迅速に対処できるそれぞれの「仕組み」を、行政や法律が持つべきで、これにより健全な営業や消費者の安全、すなわち「かくあるべしという日本の社会」が確保されるべきです。)

(これらについて権限を持つ国会議員は誰も発言してこなかったようです。被害を防止できていません。)

 

 

 結果的に、サプリメントに対する疑念が広がり、「誰がそんなものを」という風評につながりかねません。「おかしなものを販売して利益を上げている」

 

 

 ところで、 

局所排気装置の作業前点検に必要な5分間をなぜ惜しむのでしょうか。1月点検をしていたら故障につながらなかったかもしれません。

 局所排気装置が稼働せず、有害ガスが充満している職場

「今日は、ここで仕事や」

 誰が納得するでしょうか。有害物に曝露する現場では作業を命令することが出来ませんから、当然生産計画にも影響が出ます。

 工場が休止したら大変です。

 

 点検などの事項を実施するための原動力として「なぜ、せなあかんのか」「法令で決まっています」「そうか、ほな」ではなくて、実施を決める為の仕組みとして自律的な取り組みが推奨されています。

 自分で考える、その仕組みを作る、仕組みを作ったらそのとおり実施する

 

 予測される被害が大きい場合には、経営判断、決断とまではいいませんが、しかるべく、設備の導入や生産計画に、上司の決裁が必要です。

 

 大きな被害、これらを防ぐための点検、定期自主検査ですから、法令の要求事項に加えて、自律的に、より安全側に判断・決裁して、管理すなわち自主点検等を実施するべきです。

 

 

 令和6年5月11日、

 港湾運送事業者のトレーラーのコンテナの上に積んでいた金属製の作業ラックが右折したときに落下し、これが通行人に激突しました。コンテナの上にラックが置いたままになっていたについては、いろいろな要素が重なったから、と推察されます。

 

乗車前の点検

 

 ここでは、その場で逮捕したトレラーの運転手に対して、「運転席に乗り込む前に、どうして、トラックの周りを一巡して、タイヤの状況、荷の傾き、ツイストロックなどの点検、これをしなかったのだ」と聴かれると思います

 後になってみれば、一巡する時間など何でもありません。

 

 「まさか、コンテナにラックがのっている等はきいたことがない」だと思いますが、今回、この「まさか」を打ち消すのが、作業開始前の点検です。

 「するべきだったのか」と聴かれ、次には「では、なぜしなかったのか」と聴かれます。「するべきを承知していたが、あえてしていなかった」と悪意を録取されます。

 

 これは、企業の安全担当にすべて同じで、「するべきと考えなかった」と答えたら、「大きな危険は当然予測すべきで、それができる、やらせてください、ということで担当に任命されたのだろう」「職務懈怠、それとも能力がないのに、できますといったのか」、とつながり、

 

 一方、会社としては、当該担当を守るような発言をすると、世間の反発を招き「会社ぐるみ」とされますから、担当を切り捨てるしかありません。

 「そのような怠慢なやつでした、見抜けなくて。」

 担当としては、生産性、効率に貢献した等の思いもあると思いますが、結果の前には無力です。

 部下の責任にして、法人の利益を守ろうとする。

(謝罪会見で失敗する企業も多い)

 

 点検不足で大きな被害が出ることを回避するための行動について、責任体制を明確にして、そして、担当になったら、月例点検、作業開始前、年次点検と誰もが納得する対応をするべきと思料します。

 管理者は方向性を示すべきと思料します。

 

 

 

以下ご参考

労働安全衛生法

(定期自主検査)

第四十五条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

2 事業者は、前項の機械等で政令で定めるものについて同項の規定による自主検査のうち厚生労働省令で定める自主検査(以下「特定自主検査」という。)を行うときは、その使用する労働者で厚生労働省令で定める資格を有するもの又は第五十四条の三第一項に規定する登録を受け、他人の求めに応じて当該機械等について特定自主検査を行う者(以下「検査業者」という。)に実施させなければならない。

3 厚生労働大臣は、第一項の規定による自主検査の適切かつ有効な実施を図るため必要な自主検査指針を公表するものとする。

4 厚生労働大臣は、前項の自主検査指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者若しくは検査業者又はこれらの団体に対し、当該自主検査指針に関し必要な指導等を行うことができる。

 

労働安全衛生法施行令

(定期に自主検査を行うべき機械等)

第十五条 法第四十五条第一項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。

一 第十二条第一項各号に掲げる機械等、第十三条第三項第五号、第六号、第八号、第九号、第十四号から第十九号まで及び第三十号から第三十四号までに掲げる機械等、第十四条第二号から第四号までに掲げる機械等並びに前条第十号及び第十一号に掲げる機械等

二 動力により駆動されるプレス機械

三 動力により駆動されるシャー

四 動力により駆動される遠心機械

五 化学設備(配管を除く。)及びその附属設備

六 アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置(これらの装置の配管のうち、地下に埋設された部分を除く。)

七 乾燥設備及びその附属設備

八 動力車及び動力により駆動される巻上げ装置で、軌条により人又は荷を運搬する用に供されるもの(鉄道営業法(明治三十三年法律第六十五号)、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)又は軌道法(大正十年法律第七十六号)の適用を受けるものを除く。)

九 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの

十 特定化学設備(別表第三第二号に掲げる第二類物質のうち厚生労働省令で定めるもの又は同表第三号に掲げる第三類物質を製造し、又は取り扱う設備で、移動式以外のものをいう。)及びその附属設備

十一 ガンマ線照射装置で、透過写真の撮影に用いられるもの

2 法第四十五条第二項の政令で定める機械等は、第十三条第三項第八号、第九号、第三十三号及び第三十四号に掲げる機械等並びに前項第二号に掲げる機械等とする。

(昭五〇政四・昭五二政三

 

有機溶剤中毒予防規則

(局所排気装置の定期自主検査)

第二十条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置(有機溶剤業務に係るものに限る。)は、第五条又は第六条の規定により設ける局所排気装置とする。

2 事業者は、前項の局所排気装置については、一年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しない同項の装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。

一 フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷の有無及びその程度

二 ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態

三 排風機の注油状態

四 ダクトの接続部における緩みの有無

五 電動機とファンを連結するベルトの作動状態

六 吸気及び排気の能力

七 前各号に掲げるもののほか、性能を保持するため必要な事項

3 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。

 

(点検)

第二十二条 事業者は、第二十条第一項の局所排気装置をはじめて使用するとき、又は分解して改造若しくは修理を行つたときは、次の事項について点検を行わなければならない。

一 ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態

二 ダクトの接続部における緩みの有無

三 吸気及び排気の能力

四 前三号に掲げるもののほか、性能を保持するため必要な事項

2 前項の規定は、第二十条の二第一項のプッシュプル型換気装置に関して準用する。この場合において、前項第三号中「吸気」とあるのは「送気、吸気」と読み替えるものとする。

(昭五九労令一・一部改正)

(補修)

第二十三条 事業者は、第二十条第二項及び第三項(第二十条の二第二項において準用する場合を含む。)の自主検査又は前条の点検を行なつた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

 

特定化学物質障害予防規則

(定期自主検査を行うべき機械等)

第二十九条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置(特定化学物質(特別有機溶剤等を除く。)その他この省令に規定する物に係るものに限る。)は、次のとおりとする。

一 第三条、第四条第四項、第五条第一項、第三十八条の十二第一項第二号、第三十八条の十七第一項第一号若しくは第三十八条の十八第一項第一号の規定により、又は第五十条第一項第六号若しくは第五十条の二第一項第一号、第五号、第九号若しくは第十二号の規定に基づき設けられる局所排気装置(第三条第一項ただし書及び第三十八条の十六第一項ただし書の局所排気装置を含む。)

二 第三条、第四条第四項、第五条第一項、第三十八条の十二第一項第二号、第三十八条の十七第一項第一号若しくは第三十八条の十八第一項第一号の規定により、又は第五十条第一項第六号若しくは第五十条の二第一項第一号、第五号、第九号若しくは第十二号の規定に基づき設けられるプッシュプル型換気装置(第三十八条の十六第一項ただし書のプッシュプル型換気装置を含む。)

三 第九条第一項、第三十八条の十二第一項第三号若しくは第三十八条の十三第四項第一号イの規定により、又は第五十条第一項第七号ハ若しくは第八号(これらの規定を第五十条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づき設けられる除じん装置

四 第十条第一項の規定により設けられる排ガス処理装置

五 第十一条第一項の規定により、又は第五十条第一項第十号(第五十条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づき設けられる排液処理装置

 

(定期自主検査)

第三十条 事業者は、前条各号に掲げる装置については、一年以内ごとに一回、定期に、次の各号に掲げる装置の種類に応じ、当該各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しない同項の装置の当該使用しない期間においては、この限りでない。

一 局所排気装置

イ フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみ、その他損傷の有無及びその程度

ロ ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態

ハ ダクトの接続部における緩みの有無

ニ 電動機とファンを連結するベルトの作動状態

ホ 吸気及び排気の能力

ヘ イからホまでに掲げるもののほか、性能を保持するため必要な事項

二 プッシュプル型換気装置

イ フード、ダクト及びファンの摩耗、腐食、くぼみ、その他損傷の有無及びその程度

ロ ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態

ハ ダクトの接続部における緩みの有無

ニ 電動機とファンを連結するベルトの作動状態

ホ 送気、吸気及び排気の能力

ヘ イからホまでに掲げるもののほか、性能を保持するため必要な事項

三 除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置

イ 構造部分の摩耗、腐食、破損の有無及びその程度

ロ 除じん装置又は排ガス処理装置にあつては、当該装置内におけるじんあいのたい積状態

ハ ろ過除じん方式の除じん装置にあつては、ろ材の破損又はろ材取付部等の緩みの有無

ニ 処理薬剤、洗浄水の噴出量、内部充てん物等の適否

ホ 処理能力

ヘ イからホまでに掲げるもののほか、性能を保持するため必要な事項

2 事業者は、前項ただし書の装置については、その使用を再び開始する際に同項各号に掲げる事項について自主検査を行なわなければならない。

(昭五九労令三・平一五厚労令一七四・平一八厚労令一・一部改正)

 

(定期自主検査の記録)

第三十二条 事業者は、前二条の自主検査を行なつたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

一 検査年月日

二 検査方法

三 検査箇所

四 検査の結果

五 検査を実施した者の氏名

六 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

(昭五〇労令二六・一部改正)

(点検)

第三十三条 事業者は、第二十九条各号に掲げる装置を初めて使用するとき、又は分解して改造若しくは修理を行つたときは、当該装置の種類に応じ第三十条第一項各号に掲げる事項について、点検を行わなければならない。

(平一八厚労令一・一部

(点検の記録)

第三十四条の二 事業者は、前二条の点検を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

一 点検年月日

二 点検方法

三 点検箇所

四 点検の結果

五 点検を実施した者の氏名

六 点検の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

(昭五〇労令二六・追