皆さんコンニチワ。我が社のムードーメーカ 先輩です。


突然ですがアタシは先輩とは会社に入ってからのお付き合いで10年になる。


面接に来た時1番初めに階段で逢ったのがこの先輩で、

面接官の人に初めに質問されたのが「あなた猫はお好き?」だった。


始めの頃はお互いぎこちなくて 頭を撫でるのもビビっていた。

でも触れ合うウチに先輩と仲良くなって、

そして猫と人間だけどお互いに気を使わないラフな関係になっていった。


時に水が欲しけりゃ足に擦り寄って「ぎゃー」と鳴く。

『「にゃー」と鳴かなきゃ水は入れない!!』と意地悪をして喧嘩した。

水を入れるまでストーカーのようにトイレにまで追っかけてくる。


時に外に出たくてドアを開けて欲しい時も足元に来て「ぎにゃー」と鳴く。

『「帰ってくんなよ五月蝿いから」』と文句を言い、本当に夕方になっても帰ってこないと必死で探した。

姿が見えると『バカヤロウ!お前のせいで残業じゃねぇかよ』と罵声を浴びせて抱っこした。


時に昼飯を食べていると物欲しそうにスネに頭を小突いてきて「うにゃー」と鳴く。

『お前に食わせる飯なんかねぇよ』と食べている物を見せびらかすと「なんだと!」と言わんばかりに

爪を立てて膝に飛び掛ってきた。

ズボンに刺さった爪が抜けなくなって一緒に立ち上がって大騒ぎしてしまった。


時に人の机にのぼり昼寝をかます。

頭をはたいて起こすと 威厳のある顔で睨みつけられた。

『降りろ!』と怒鳴ればソッポを向く。腹が立って頭突きをかます。餌の缶詰臭かった。


時に先輩はやってはイケナイところでオシッコをした。

『ふざけんなバカ!自分で拭け!』とモップを持って追っかけまわした。

意外と先輩は足が早かった。


時にお土産のお饅頭を盗み喰いして皆から叱られた。

悪びれた様子もなくガツガツしてると、毛に餡子がくっ付き取れなくなった。

取ってくれと近寄って来たが、暫く放置して様子を見た。

うまい具合に自分で取っていた。


先輩は3Fにある社長室に住んでいる。

夜、事務所を締めると同時に社長室に帰って1夜を過ごす。

元々他で飼われていた先輩を事情により社長が引き取ってきて此処に住む事になった。


朝、社長室のドアを開ける度『にゃーーー!!!』とかけよる先輩を

毎日『うっさい!寄るな!踏むから!危ない!!』と怒って1日が始まる。


やってはイケナイ場所で又オシッコをしていると再び怒る。

そして『何でお前のオシッコ朝から拭かなきゃなんないんだよぉ・・・』と苦笑しながら文句を言う。

先輩は悪びれた様子もなく「餌!餌!」とアタシの後を追ってくる。

後から社長室に来た親方様も追っかけられる。


そんな毎日を当たり前のように過ごしていた。一週間前までは。

あの日の昼間、3Fの社長室でデカイ物音と共に「ぎゃー!!うぎゃー!!ぎぃぃにゃー!!」と

今まで聞いた事も無い奇声が聞こえた。

親方様と見に行くと見知らぬ若い野良猫が侵入して先輩の餌を狙って喧嘩したようだった。

先輩は毛むしられたようで、おびただしい毛が散乱し右前足とお尻をやられたようで血が滲んでいた。

野良猫がいなくなっても先輩の震えは納まらずアタシ達を威嚇したまま狭いカラーボックスの中に入ってしまった。


それからかもしれない。

動かない日々が続いたのは。


今から約1週間前に先輩は遠い遠い散歩に行ってしまいました。


つまりは、18年の生涯をまっとうした。


動かなくなってから

いつか来ると思っていた。


でも

来たら来たらで認められなくて。


社長室に 箱に入れられた先輩と しっぽを掴んだままのアタシ。


お腹はまだ温かいのに 頭と尻尾は冷たい。 


尻尾は柔らかいのに 手足は真っ直ぐ伸びて硬い。


水に沈んだように見えてきたから 箱の蓋を閉めて2Fに降りた。


死んで直ぐは「あぁ 死んだか。もうおじいちゃんだったもんな。」と思っていた。

でも、1日1日が過ぎていくウチに『いない』という現実が苦痛になってきた。

日課というのは恐ろしい。

いないと解ってって朝社長室に行ってしまうんだから。

ドアを開けて駆け寄ってこない先輩を思い出して「あぁ、そっか。いないんだっけ。」と思い出す。


親方様と話をした。


「これから世話しなくて済みますね。」


「そうだねぇ~・・・・。」


「仕事1つ減りましたね。」


「そうねぇ~・・・。」


「でも、嬉しくないですね。」


「・・・・寂しいよね。いないと。」


もういないのだ。

この場にいないと言うのが辛いのではなくて、二度と会えないと認める事が辛い。

1週間経った今 ようやく アタシは認めようと思う。


先輩が死んでから


「長生きしたよね。どうする?化けて出たら?」


と聞かれたので


「出てきたら両サイドの髭切ってやりますよ!」


と居なくなって尚、天邪鬼で素直になれない。


先輩には癒されていたと 遅すぎるお礼を言いたい。


今更だけど


ありがとう。




先輩は猫見知りだから あの世でも 1人で威厳のある顔でどこかに佇んでいるかもしれない。


この間、先輩を襲った野良猫を見た。


追っかけて捕まえてやろうかと思ったが


それはお門違いカモしれないと留まった。




いつもアタシの席の後ろで座ってくつろいでいた先輩。


椅子で引かないようにと、


椅子を下げる時に一度後ろを振り向く癖が、


まだ少し残っている。


明日からは 椅子を思いっきり引いてやる。


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もう 気 使わないぞ。


今までも使ってないか。


5回は椅子で引いたもんね。


ゴメンね。ワザとじゃないんだ。


最後に


先輩はラッキーという名前だ。


そういえば


ラッキーは別の名前でも返事をしていたなぁ。