Mさんが結婚されてからは、職場の階段ですれ違っても挨拶だけにとどめ、振り向くこともやめました。
お互い連絡もとりあわなくなり、外線電話の取りつぎ程度にとどまりました。

でも、お互いの存在が視界に入ると、ふたりの意識は空中で集中し合っていたと感じました。


それでもなぜ、あっさりと引き下がることができたのか・・・。
結婚相手の女性は職場の先輩だった人でもあり、仕事の実績はすごく、働く姿にはわたしも憧れていました。
関わる人たちの心を乱したくないという思いが大きかったのと、Mさんが追い込まれるようなことは絶対避けたかったからです。

あと、なんとなくですが、Mさんの心を奪うことはできたという優越感があったからでしょうか・・・。


そのことがはっきりわかったのが・・・

地味なMさんでしたが、いつも自分なりの好みのブランドで仕立てのいいスーツや靴を身につけられていたと思います。

でも、結婚後は服装がガラリと変わり、いちばん驚いたのは社員旅行の時のけばけばしいセーターでした。

きっと、ブランドにはうるさかった先輩が選ぶ洋服を着せられているのだろうとすぐにわかるような変化でした。

それとも、わたしたちのことが明るみになってしまって後ろめたさを感じて言いなりになっているのかもしれない・・・これはさすがにわたしの虚栄心(見栄)かと思います。笑

なによりも営業成績が下降気味・・・あ!このことであることを思い出しました。


Mさんとおつきあいしていた頃か、その前か忘れてしまいましたが、Mさんの顧客が店頭にお見えになり、偶然わたしが対応することになりました。

そのかたが書かれた住所とお名前からわかったのですが、わたしの実家の近くにあるお寺のご住職だったのです。
もう年老いておられましたが、そのお孫さんはわたしが通っていた中学校の生徒会長だったかたでした。

京都の大覚寺に所用でお見えになっていたそうで、田舎の話をするととても喜んでくださり、その後もお見えになる時は、手続きの際は手土産とともにいつもわたしを指名されるようになりました。


ほんとに偶然、たまたまだった出来事がいくつか重なって「わたしたちはなにかがある!」と幸せな誤解をいくつもさせてくれていたのです。



サザンオールスターズ / TSUNAMI






つづく





ではまた、ごきげんよう♡