なかにし礼の「長崎ぶらぶら節」を読みました。なかにし礼は作詞家の印象が強く、歌詞もあまり良いと思ったことなかったんですが、「兄弟」がすごいらしい
ので、一度読んでみることに。読み初めると確かにすごい。長崎に売られて行く途中で見る蛍の乱舞、ワシントン軍縮条約のため撃沈される軍艦土佐を見送る場
面など、さすがヒット曲メーカーらしく描写がドラマチックだし、時代背景を描くことも忘れない。「欲しくても手に入らない幸福のもどかしさは、どうやって
もとることのできないラムネ瓶のビー玉のもどかしたに似ていた」なんてキュンとする表現も。特に好きだったのが、隠れキリシタンの島を訪れ、農家 みたいな作りの教会で信者たちが、迫害の中で信仰を貫いた歴史を物語る歌を歌う場面。「歌は天からふってくるもの、いい歌を作ってやろうと思っても出てく るものではない」「歌はあの世とこの世をつなぐ架け橋たい」「ひらめきとは突然やってきたように見ゆばってん、実は長い時間ばかけて思いつめた結果なの だ」等々、古賀の歌論はそのままなかにし氏の歌論に違いありません。確かにひらめく時って天から降ってくるみたいだけど、努力してきたからこそひらめくワ ケで、アンテナがないとひらめきようがないですよね。文学でも芸術でも最初の作品が一番良かったりするのは、魂がそれを作品にしないではいられなかったか らかも。明治から昭和初期までを生き抜いた女性の一代記に長崎の歴史や文化を織り交ぜた素敵な小説だったけど、芸者冥利に尽きる人生とは言え、女性として はあまりに切ない。その部分は作品を俗っぽくしないためのフィクションなのかも知れませんが・・・。