「優しい子よ」 | Kyoto Corgi Cafe 2

Kyoto Corgi Cafe 2

京都在住ライターの愛犬との日記、お気に入りのカフェ・美味しいもの情報、日々の雑感 アメーバヴァージョン

Kyoto Corgi Cafe 2 2010年最初に読んだのは大崎善生の「優しい子よ」。大崎氏の妻で女流棋士の高橋和とファンの少年の短いけれど深い交流を描いた表題作、脳梗塞で倒れ、70日間眠り続けた末に亡くなったテレビの名プロデューサーへの追憶を綴った「テレビの虚空」「故郷」、そして「優しい子よ」に描かれた茂樹少年の死から1年後に妻に宿った新しい生命を見守る「誕生」という命の煌きを活写した4つの私小説からなる短編集です。ダンディで懐の深いプロデューサー萩元と学生時代から静かに彼を支えてきた宮澤など登場人物がみな本当に魅力的。それは人間の優しさと切なさをみつめる大崎氏のまなざしが温かいからなのだと読み進めるにつれて実感し、それがまた心を温かくしてくれました。
女流トップとの間に埋められない溝が横たわり、プロとしての自分の立場に疑問を感じていた妻。そんな彼女に一人の少年の存在がプロとしての役割を与えることになります。人の痛みをやわらげ、夢を与えることが出来れば、どんな職種であれプロとしてこれ以上のことはない。それは書く作業は毎日ひたすら同じ輪の中をまわり続けているだけではないかと感じていた大崎氏も同じこと。そう、そう、長く仕事をしているとこれで良いのだろうか・・・と日々思うワケですが、何かしら人の役に立てることがあれば、それは意味のあることなんですね。夫妻が心待ちにしていた西荻窪のマンション近くの美しい桜。モモ母も見てみたくなりました