神経症発生の原因として、適応困難な環境を指摘したついでに、人間の適応性ということについて考えてみたい。


 アメリカの微生物学者ルネ・デュボスの次の言葉は、大変教訓的である(「人間と適応」)。


 「適応についての問題の中で最も面倒な面は、矛盾したことであるが、人間がこんなにも適応的であるという事実である。この適応性こそが、やがては人間生活に最も特徴的な価値を破壊してしまうような条件や習慣に、人間が調整することを可能にしたのである。」



 「適応」が純粋に生物的に人間に適用されたとき、「適応」が作り出す恐るべき危険さは、「適応」という言葉が、しばしば人間に望ましくない条件を容認することを意味している。


 環境があまりにも人間疎外的なものになれば、「不適応」こそが人間的適応である。という逆説も成り立つのである。私は、現代がそういう時代にはいっている、と考えざるをえない。


 例えば、自殺者の数、うつ病患者の増加、ブラック企業などである。皆さん、いかがお考えですか?