■不安は欲望の一面


 不安は精神活動の発達とともに増します。これについて森田博士はつぎのように言っている。「我々は不安があり、取越苦労が多いほど、多々益々弁じて、初めて人生の生きがいを感じるのである。」


 ここで森田博士は欲望を不安の側面から見ている。不安や心配が強いのは、あれもしたい、これもしたという欲望が強い証拠である。不安は欲望に正比例する。


 また失敗を心配しながら、努力して成功すると、大きな喜びを感ずる。このような喜びは、さらに欲望を発展させ、希望と期待を生む。同時に新たな不安や心配を伴うものである。


 このように、欲望はこれを裏から見れば、不安であり心配であり、表から見れば期待、喜びである。


 このように見ると、不安は嫌な感情であるが、生存上不可欠なものだから、我慢するほか仕方がないといった受け止め方になる。しかし、これは不快感にこだわった消極的態度である。不安はもっと積極的に受け止めなければならない。