私はブログの表紙部分に「神経質者はいい素質を持っている」と書きました。私のブログを訪れてくれたあなた、ご自分でご自分のことを「神経質」だと思ってらしたら、それはとてもいい素質になりえます。ただ、うまくいってない人が多く見受けられます。ではどうしたらいいのか?一つは「背水の陣」を何回か経験すること、もう一つは「気を紛らわす」行動をやめることです。



■背水の陣


 神経質であるがゆえに、置かれた環境に適応できないのではという不安から注意がなすべきことに向かず、自分の中の不安を取り除けることに向かうと、発症し、ひどくなり、その状態が固定してしまう。あなたは理解していただけましたでしょうか?


 さらに日常生活で、症状を理由になすべきことをなさず、逃げていると、惨めな敗北感に襲われ、劣等感を強くします。それだけではありません。不安を感じやすくなり、より逃避的になり、さらに敗北感と劣等感を強くします。なすべきことから逃げてしまい、不快の感情を強めるという悪循環に陥ると、症状はさらに悪化します。


 しかし、なすべきことをなして、「悪循環」を断ち切り、「好循環」に転換してゆくことは、あなたにもできます。しかし、一度症状にとらわれると、どうしても逃げ腰となり、なすべきことをなせなくなります。頭では、それはいけないとわかっていても、なかなか実行できません。ところが「背水の陣」を引かざるをえなくなると、この壁を破ることができます。


 ある方の例です。この方(Tさん)は青年時代から対人恐怖に悩み、精神分析療法を受けたり、催眠療法を受けたりと、遍歴の果てに森田療法に出会いました。会議に出て発言するのが死ぬほど辛く、なんとか口実を作って、逃げていましたが、定年も迫り、このままでは定年でクビになる、クビにならないためには役立っていることが認められなければならない、会議でも発言しなければならない、とTさんは考えました。家族の生計が、自分の肩にかかっている。


 そんなTさんに社長や役員も出席する重要な会議が迫ってきました。Tさんは覚悟を決めて、報告準備に取り掛かりました。しかし、不安のため食欲もなくなり、眠れない夜が続きました。何度となく「このまま病気になって、寝込みたい・・・。」と思いました。


 その会議が始まりました。Tさんは報告書を手にとって立ち上がりました。もう逃げることはできません。しかし、ふと会議が何事もなかったように進行していることに気がつきました。Tさんは「恐怖」に「突入」して、報告の責任を果たしました。


 神経質な人間は大体、気弱で臆病です。ですから、「背水の陣」をひいて「突入」しろと言われても、「突入」できないです。そうです。否応なくそのような状況に置かれなければ、「突入」しません。


 しかし、「あるがまま」をモットーに、日頃から、逃げないでなすべきことをなし続けていると、何回も「背水の陣」を弾かされることになるのです。しかしこの積み重ねが少しづつ自らに対する自信につながっていきます。そして「好循環」が定着してゆくのです。


■「気を紛らわす」誤り


 ところが、「好循環」と勘違いしやすい、行動があります。そては繁忙な時に症状や悩み事を忘れるからといって、やたらと動き回って、忘れようとする人がいます。「気を紛らわす」行動をとることです。


 不安の原因を正確に把握せず、忙しく働いても、不安は強くなるばかりであります。そこには、なすべきことをなし遂げた成果もなく、「快」の感情も生まれません。すなわち「好循環」は始まりません。なすべきことをなすことと、「気を紛らわす」行動との大きな差です。


 「気を紛らわす」行動は、一時的な気休めの効果はあっても、注意はすぐに悩み事に向かいます。そしてそれを一層強くするだけです。