2026年、
健康志向が極まり本物のタバコが街から姿を消しつつある現代。
そんな中、1951年(昭和26年)生まれの「タバコ型お菓子」が盛り上がりを見せているのをご存知でしょうか?
そのお菓子の名は
「ココアシガレット」
なぜこの青い小箱は時代に逆行するかのような見た目で、70年以上の愛されているのか。
シンガーソングライター・あいみょん氏の投稿から始まった「再ブレイク」の裏側と、オリオンが仕掛けた秀逸なマーケティングの真髄に迫ります。
1. 1951年、砂糖の「自由」から始まった憧れ
ココアシガレットの歴史は、日本の復興期と重なります。
戦後の憧れ: 1951年当時は、まだ砂糖が配給制から解放される直前。GHQが配ったチョコやガムに目を輝かせた子供たちにとって、大人が吸う「タバコ」は、自由と強さの象徴でした。
5円の嗜好品: 当時わずか5円で発売。本物のタバコのクールさを、ココアの甘みと「ハッカ(ミント)」の刺激で再現したこの菓子は、子供たちの変身願望を叶える画期的な発明だったのです。
2. あいみょんが再点火した「エモ消費」の導火線
2019年、停滞気味だった売上をV字回復させたのは、一枚のSNS投稿でした。
SNS時代のアイコンへ
人気アーティスト・あいみょん氏がInstagramでココアシガレットを手にした写真を投稿。これが「レトロで可愛い!」「エモい!」とZ世代に刺さり、一時は例年の数倍の出荷を記録。ピーク時の年間1,800万個という伝説的数字に肉薄する勢いを見せました。
単なる「おもちゃ」だったお菓子が、SNS時代の「ファッションアイテム」へと、消費者の手によって再定義された瞬間です。
3. 「禁煙応援」という最強のジョークと価格の維持
時代が嫌煙へと向かう中、オリオンの対応は実に見事でした。
「禁煙応援」へのシフト: 「タバコを模しているから不謹慎だ」という逆風を逆手に取り、公式サイト等で「オリオンは貴方の禁煙を応援します!」宣言。このユーモアが、本物のタバコをやめたい大人たちをも顧客に引き込みました。
75年間のコスト管理:
1951年:5円
2026年:50円前後(オープンプライス)
75年で価格は10倍になりましたが、自動包装ラインの導入によるコスト削減と品質安定により、
今でも「駄菓子価格」を維持。
この「圧倒的な手軽さ」こそが、ロングセラーの土台です。
4. 専門家が分析する「ハッカ」の意味
ココアシガレットの真価は、その味の構成にあります。
単なるチョコ味ではなく、あえてハッカ(ミント)を効かせたこと。
これは、大人がタバコを吸ったときの清涼感を疑似体験させるためのギミックでした。
この「少しだけ癖のある味」が、大人になっても脳の片隅に残る「記憶のトリガー」となっているのです。
5.ココアシガレットは「粋」を味わうための道具
ココアシガレットが75年愛されている本当の理由。
それは、それが単なるお菓子ではなく「大人の余裕を演じるための最短ルート」であり続けているからです。
1951年、砂糖の配給に耐えた子供たちは、この1本に 「自由」を見ました。
2026年、効率化に追われる私たちは、この1本に「遊び心」を見ています。
たとえ本物のタバコがこの世から消えても、ココアシガレットが消えることはないでしょう。
なぜなら、この青い箱に入っているのはお菓子ではなく、「どんなに厳しい時代でも、ちょっと背伸びをして余裕をかましてみせる」という、日本人が忘れかけている「粋」の精神そのものだからです。
この甘くてクールな1本をポキリと折る時、私たちはいつだって、あの頃憧れた「かっこいい大人」に戻れるのです。
「5円」から「50円」へ。価格の推移以上に、この小さな箱に詰め込まれた「思い出」の価値は膨らみ続けているのかもしれません。
ご来場ありがとうございました。












