「守られる日々」

赤犬のチビと辛い別れをした私は心を閉ざしてしまい、無気力のような毎日が続いては次第に言葉数も減ってしまいました。

そんな中でも好きな書道やバレーボール部の生活は何もかも忘れることが出来る場であり、辛い現実から逃れられる場でもありました。

学校で過ごしていても、同級生や友達が集まっている中でも私は愛想笑いをするのが精一杯でした。

そんなある日、学校の休み時間での出来事でした。

私は窓を背にしながら同級生と他愛もない話しをしていた時、ふと同級生の皆が私を見て顔色を青ざめながら何かを言ったのです。

その時は何を言ったのかが私には聞こえなかったので不思議に思っていると、次の瞬間には周りにいた数人が倒れているのに気づいて私は慌てました。

そうこうしているうちに担任が血相を変えて職員室から飛び出してきた様子で私に叫びかけました。

『大丈夫か!怪我は無いか??』

事態がまだ読めていない私は呆然としながら数秒か数分かの僅かな時間が全てスローモーションにしか感じられなかった。

そんな私を担任が手を引き場所を変えたところでやっと周囲の声が聞こえてきたのです。

ざわめく何人もの人々が足を止め、騒然とした空気が立ち込めていました。

場所を移動した私は皆が視線を向ける方向に目をやるとやっと事態が分かったのです。

割れた硝子の破片、散らばった破片に怪我を負った数人の生徒達。

窓際で背を向けて話していた私の真うしろ、それは数センチの距離かも知れない辺りで空気孔の窓硝子が私の背中をすーっと通り過ぎて落ちていたのです。

一番被害に遭っていてもおかしくない私は怪我一つしていなく、それよりも周囲にいた女子生徒や少し離れていた男子生徒が怪我をしていたのです。

時間が経つ毎にその時の恐怖がじわじわと肌を巡るように恐ろしくなり、同時に何故こんな状況で自分には一切被害が無いのかという事が不思議でならなくなりました。

考えれば考えるほど不思議でした。

そして幾ら考えても同じ事しか想像できなかったのです。



それはまるで、一瞬ベールのようなもので包まれているように守られていたかの時間でした。

周囲の声が少し遠くなったように空間を感じ、そしてその瞬間に同級生の表情や動きがゆっくりと目に飛び込んできた不思議な時間。

そんな事が一度成らずとも二度もあったのです。

その度に上手く説明ができずにいた私を次第に担任や同級生の眼差しさえ冷たく感じるようになっていましたが、自分でさえ整理のつかない事ばかりだったので時間が経てばいつか周りも忘れていくだろうと思うことにしたのです。

その後、私は出来事や自分の感じた事を全て両親に話しました。

『まぁちゃんにはね、守ってくれてる神様、それにチビ達も守ってくれているんだよ。だから怪我一つしなかったでしょ。』

『普通ならば頭の上に落ちているかも知れない硝子が背中を通り過ぎたんでしょ。守られているからだよ。感謝しないとね。』

驚きも恐がりもせず当り前のように言った母(絹子)があまりにも神々しく感じました。

そして月日は流れ、夕焼け空が美しい季節になった頃、時折その空を眺めては物思いに更けていた時でした。

部活も終わりコートで後片付けをしているとあまりにも素晴らしい夕焼け空に心が奪われるように見つめていたのです。




何匹かの赤蜻蛉(あかとんぼ)が私の周りを飛んでいました。

生き物に話し掛ける事を暫く閉ざしていた私は久し振りに心の声で話し掛けました。

「赤蜻蛉さん、可愛いね。夕焼け空とお似合いだよ。」

「じつはね、糸蜻蛉さんも好きなんだけど、滅多にお会いできないよ。」

そうして夕焼け空と蜻蛉との時間を楽しむと、片付けも済まして着替えに行きました。

制服に着替えた私が校門を出る時、先ほどの赤蜻蛉が待っていたかのように周囲を楽しそうに飛んで来たのです。

それはとても不思議な光景でした。

紅く焼けた空を旋回する蜻蛉たち、その光景を目にした時に心を癒されない者はいないでしょう。

ぐるぐると飛び交う蜻蛉は、まるで遊ぼうと言ってきているかのようにも見えました。

そしてある場所に来ると、蜻蛉たちは私を案内しているように動き始めたのです。

私は、蜻蛉たちが促すように進む方向へと草を掻き分け歩いて行きました。

すると小川が流れる場所に辿りつき、そこにはに糸蜻蛉がたくさん生まれていたのです。

赤蜻蛉に話した事、私が“糸蜻蛉も好きだけど会えない”という言葉に赤蜻蛉たちが合わせてくれようと連れて来てくれたみたいでした。

自然界と通じ合えたと思い、感動せずにはいられませんでした。

毎朝、母(絹子)が空や風花などを眺めては一日の天気を教えてくれていた事、いつもその様子が目に見えない空間で母(絹子)は自然界との対話ができていると信じて疑わず、そしてまたその様子が羨ましく思っていた私は母(絹子)に少し近付けたように感じられて嬉しかった。

さっそく私は母(絹子)に赤蜻蛉との出来事を話すと母(絹子)は微笑んで言いました。

『良かったね、まぁちゃんと心が通じたんだよ。いつまでも今の心のままでいる様にね。』

また当り前のように言うと続けて“二人の秘密だよ”と心で呟いているのが伝わってきました。

きっと母(絹子)は、そういった信じて貰えなさそうな出来事を数多く体験してきて実際に信じて貰えない経験を沢山してきたのでしょう。

だから私が話す不思議な出来事にも驚くことなく、そして優しく言葉を返してくれていたのだろうなと思うのです。

誰にも信じて貰えない寂しさや辛さ、そして娘が同じ体験をしては周囲との温度差に悩む日々を過ごす姿が母(絹子)には辛いながらも愛おしく思えたのかも知れないと今は感じられるのです。

~つづく~

両親も今思えば、不思議人間だった事です
だから私が何をしても頭ごなしに説教は
無かったけれど  何気に渡される
心のの問題には、何故?の疑問を自分で
解く事に成る 其れが後々大きな知恵と成り
穏やかな心を作れる様に成るのです
自然界から頂く疑問
有る日 花の首飾りを作り母にプレゼント
其の時に母は嬉しいけれど少し寂しいです
其の疑問は続きました。
有る日散策に出た時、いつもの様に可愛いお花
ですよ 小さな足下に在る花を指さして
(ほらあんなに小さな花でも咲いてるでしょ
その下では根っこと言う手を繋いで居る
小さな花でも、大きな愛をおしえてる
分かりましたか)
あの花の首飾りを作った時小さな花を何本も
取って作った事を思い出した
私は、母にあの時の意味分かりました

私の両親は、人として人らしく
優しく穏やかに所作出来る事を何気に
伝授してくれたのです。


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