14 無差別

 

 どおおおおおおおおんん!

 

 大きな音がしてテント村の中で煙がふき上がりました。

 すぐ近くです。

 灰色の煙の塊と一緒に、テントの切れ端がヒラヒラと舞っています。

 

 曲がってちぎれた支柱の1本が、テントの布がくっ付いたままシャーラとミツキとマーユが遊んでいたすぐ近くに落ちてきました。

 

 お母さんとマルラ姉ちゃんが慌ててテントの外に飛び出してきました。

 マーユのお母さんのサリノアおばさんも飛び出してきました。

 

「あんたたち、怪我はない? マハドは?」

 お母さんが聞きます。

「お友だちとさっかーやってる。」

 シャーラが震えながら指をさした方向は、いま爆発があった方向です。

「クトゥルも一緒・・・。」

 

「クトゥル!」

 サリノアおばさんが走り出そうとすると、マーユがしがみつきました。

 

「サリノアさん! この子たちを見ててください! わたしが探しに行きます!」

「わたしも行く!」

 お母さんとマルラ姉ちゃんが走り出しました。

 布の切れ端が、ひらひらと舞い落ちてきました。

 いろんな色の布です。

 

 ミツキが立ち上がり、黙ったままで走り出しました。

 クマのマックルの腕がつぶれるくらい、ぎゅっと握っています。

 

 走り出したミツキの手を、マルラ姉ちゃんがしっかりと掴みました。

「一緒に行こう。1人だと危ないから。」

 

 そういえば、ミツキのテントもあっちの方にあった。

 ばくはつがあったのは、それよりもう少し向こうのように見えるけど・・・。

 大丈夫だといいけど・・・。ミツキの家族・・・・。

 

「あいつらは気が狂ってる!」

「難民キャンプまで空爆するなんて!」

「安全地帯だと言ったのはあいつらじゃないか!」

 

 大人たちが口々に叫びながら走っていきます。

 シャーラには大人たちの言っていることは半分くらい分かりませんでしたが、怖い、とだけは思っています。

 

 あの爆弾は、ここにも落ちてくるんでしょうか?

 やっているのは、あの蛇みたいな模様の人たちなんでしょうか?

 

 

 しばらくすると、マルラ姉ちゃんがマハド兄ちゃんとクトゥルを連れて帰ってきました。

「お母さんは怪我人の救助に残ってる。」

 マルラ姉ちゃんが怒ったような顔で言いました。

 

「お母さん!」

 クトゥルがサリノアおばさんに飛び込むようにして抱きつきました。

 

 それを見ていたマルラ姉ちゃんが目から涙をあふれさせました。

「救助、ったって・・・、薬もなんにもないんだ・・・! 痛がってる子に何にもしてやれないんだよぉ!」

 マルラ姉ちゃんはしゃがみ込んで声を出して泣き始めました。

 つられてマハド兄ちゃんも泣き出しました。

 それまで頑張って我慢していたんでしょう。だって、男の子だから。

 

「ミツキは?」

 シャーラはそれも心配で、聞いてみました。

 マルラ姉ちゃんが涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げました。

 そして、ちょっとだけ微笑んで見せました。

 

「あの子の家族は無事だった。」

 それを聞いたら、シャーラも涙が出てきました。

 

 

『ラザに生まれて』はこちらで最初から読めます。

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