宇宙における戦闘というのは、地球における戦闘とは大きく違う。
この「戦場」に地球上での兵器の形態をそのまま持ち込む者は「重力に魂を惹かれた者」と批判されるだろう。
かと言って、「スタジオぬえ」がかつて考えた「宇宙戦艦」のようなものは、お笑いにもならぬどうしようもないものだったが。
SFマガジン誌上でかつてスタジオぬえが発表した「もっとも合理的な宇宙戦艦」なるものは、装甲を兵装の前に置くという信じがたいもので、自分の装甲が邪魔になって敵を砲撃できませんという代物だった。
彼らがせめて戦車の発達史をちゃんと知っていたら、このような馬鹿丸出しのものを公表して笑われることもなかっただろうと思う。
かつてのSF界を破壊したスタジオぬえの馬鹿さ加減はともかく、宇宙における戦略や戦術についておおざっぱに考えてみよう。
その下敷きとしてガンダムを使う。
今のところガンダムが最高の作品だからである。
○未来の宇宙戦略
未来の宇宙戦略において、中枢となるのは小惑星要塞である。
数キロ~数十キロに及ぶ岩盤に守られ、大概の攻撃は防ぐことが出来る。
未来の宇宙における戦略は、戦略上の重要な宙域に配置された小惑星要塞の奪い合いになるだろう。
ファーストガンダムにおいて、ルナツー、ソロモン、ア・バオ・ア・クゥーといった小惑星要塞の奪い合いとして描写されていたとおりである。
○対小惑星用「陸戦兵器」
さて、遠距離からの艦砲射撃やミサイル攻撃だけで小惑星要塞を陥落させることは難しい。
圧倒的に兵力で勝っていればそれも可能ではあるが。
通常兵器で小惑星表面の施設を破壊した後、陸戦隊を「上陸」させて内部に侵入し、内部から破壊することになる。
その場合、通常の歩兵だけではおそらく要塞の何重にも仕切られた障壁に遮られて、内部にまで侵入することは不可能だろう。
どうしたって、重火器を搭載した「陸戦兵器」が必要になる。
さて、その「陸戦兵器」の移動手段はどういうものになるだろうか。
地上では車輪や無限軌道(キャタピラ)である。しかし、無重力に近い低重力の小惑星ではそういう地上で使われている移動手段は使えない。
地上では重力によって常に地表に押しつけられているから使えるのであり、低重力の小惑星で無理に使おうとしても、空回りするだけでほとんど使えないだろう。
ではどうするのか?
手足に類するマニピュレータを使って、フリークライミングよろしく小惑星表面に捕まって移動することになる。
捕まると言っても、はずしたら「落ちる」訳ではないから移動のために必要な程度のわずかな力で捕まっていればよい。
むしろ小さいとは言え重力があるから、「手」が離れても、また接する。
小惑星内部に侵入したら、内部は鉄が使われていると思われるから、磁石を使って壁に吸い付く形になるだろう。
もちろん鉄では無い場合は小惑星表面での移動方法と同じ方法、及び、壁を蹴って移動するという方法がとられることになる。
さてロケットエンジンは使えないのかというと、小惑星要塞戦では補助的にしか使われないだろう。
当然ながら重装甲を持つ「陸戦兵器」では、重すぎてロケットエンジンでは加速しづらいし、それに対応した推力を持たされたら、推進剤を早く使い切ってしまう。
推進剤が切れた「陸戦兵器」は、ただの的である。
それにロケットエンジンは、ここにいますと教えているようなものだ。
やはり「手足」で移動する方が良い。
○宇宙用「陸戦兵器」の外観
では、どういう外観になるだろうか?
ガンダムのモビルスーツで言えば、通常型よりも水陸両用タイプや、モビルアーマーの方が小惑星要塞戦では良いように思える。
小惑星戦用の効率のみを考えると、昆虫のような形が良いように思える。
しかし、ガンダムのモビルスーツの場合は、小惑星要塞攻略戦用のみならず、月面戦闘用、コロニー戦闘用、さらに宇宙空間戦闘用も考えられた、汎用型であるためにあの形状になったと言える。
ただ、地球上戦用にはあまり向いていない。
地球上戦用ならば、通常の戦車の方が向いていると思えるが、1年戦争当時、地球上での本格的な戦闘は考えていなかった連邦は、ろくな戦車を配置していなかった。
暴徒鎮圧用程度のものだった。
これならばモビルスーツでも十分戦える。
○月面用「陸戦兵器」
ついでに月面用「陸戦兵器」を考えてみよう。
月は大型の小惑星と考えることも出来る。
真空世界であり、移動手段や兵器にマスドライバー等が使える。
しかし重力は大きく車輪やキャタピラも有効と思える。
とはいえ、月面はクレパスあり、クレーターありの地形であり、それを越えねばならないことを考えると、「足」を持ったマシンの有効性は小さくはあるまい。
また、地平線が近いため、地球上ほど高さへの制限は強くはないだろう。
それを考えると、小惑星用に開発された「陸戦兵器」を月面にも流用するという考えはけっして間違ってはいないと思える。
月面戦というのはガンダムでは描写されなかったものだから、稿を改めて考察してみたい。
○終わりに
宇宙戦略・戦術というものについて考えることには批判もあるだろう。
私としても、将来の宇宙が戦場になって欲しいと思うものではない。
しかし、人類が宇宙へと進出したら、いずれ武力抗争を始めるのは、人類の歴史を見ても仕方のないことだと思える。
そのときにどうなるかを考えるのは、思考実験としても魅力的だし、将来の人類の姿を予測する上でも必要なことであろうと思えます。
この「戦場」に地球上での兵器の形態をそのまま持ち込む者は「重力に魂を惹かれた者」と批判されるだろう。
かと言って、「スタジオぬえ」がかつて考えた「宇宙戦艦」のようなものは、お笑いにもならぬどうしようもないものだったが。
SFマガジン誌上でかつてスタジオぬえが発表した「もっとも合理的な宇宙戦艦」なるものは、装甲を兵装の前に置くという信じがたいもので、自分の装甲が邪魔になって敵を砲撃できませんという代物だった。
彼らがせめて戦車の発達史をちゃんと知っていたら、このような馬鹿丸出しのものを公表して笑われることもなかっただろうと思う。
かつてのSF界を破壊したスタジオぬえの馬鹿さ加減はともかく、宇宙における戦略や戦術についておおざっぱに考えてみよう。
その下敷きとしてガンダムを使う。
今のところガンダムが最高の作品だからである。
○未来の宇宙戦略
未来の宇宙戦略において、中枢となるのは小惑星要塞である。
数キロ~数十キロに及ぶ岩盤に守られ、大概の攻撃は防ぐことが出来る。
未来の宇宙における戦略は、戦略上の重要な宙域に配置された小惑星要塞の奪い合いになるだろう。
ファーストガンダムにおいて、ルナツー、ソロモン、ア・バオ・ア・クゥーといった小惑星要塞の奪い合いとして描写されていたとおりである。
○対小惑星用「陸戦兵器」
さて、遠距離からの艦砲射撃やミサイル攻撃だけで小惑星要塞を陥落させることは難しい。
圧倒的に兵力で勝っていればそれも可能ではあるが。
通常兵器で小惑星表面の施設を破壊した後、陸戦隊を「上陸」させて内部に侵入し、内部から破壊することになる。
その場合、通常の歩兵だけではおそらく要塞の何重にも仕切られた障壁に遮られて、内部にまで侵入することは不可能だろう。
どうしたって、重火器を搭載した「陸戦兵器」が必要になる。
さて、その「陸戦兵器」の移動手段はどういうものになるだろうか。
地上では車輪や無限軌道(キャタピラ)である。しかし、無重力に近い低重力の小惑星ではそういう地上で使われている移動手段は使えない。
地上では重力によって常に地表に押しつけられているから使えるのであり、低重力の小惑星で無理に使おうとしても、空回りするだけでほとんど使えないだろう。
ではどうするのか?
手足に類するマニピュレータを使って、フリークライミングよろしく小惑星表面に捕まって移動することになる。
捕まると言っても、はずしたら「落ちる」訳ではないから移動のために必要な程度のわずかな力で捕まっていればよい。
むしろ小さいとは言え重力があるから、「手」が離れても、また接する。
小惑星内部に侵入したら、内部は鉄が使われていると思われるから、磁石を使って壁に吸い付く形になるだろう。
もちろん鉄では無い場合は小惑星表面での移動方法と同じ方法、及び、壁を蹴って移動するという方法がとられることになる。
さてロケットエンジンは使えないのかというと、小惑星要塞戦では補助的にしか使われないだろう。
当然ながら重装甲を持つ「陸戦兵器」では、重すぎてロケットエンジンでは加速しづらいし、それに対応した推力を持たされたら、推進剤を早く使い切ってしまう。
推進剤が切れた「陸戦兵器」は、ただの的である。
それにロケットエンジンは、ここにいますと教えているようなものだ。
やはり「手足」で移動する方が良い。
○宇宙用「陸戦兵器」の外観
では、どういう外観になるだろうか?
ガンダムのモビルスーツで言えば、通常型よりも水陸両用タイプや、モビルアーマーの方が小惑星要塞戦では良いように思える。
小惑星戦用の効率のみを考えると、昆虫のような形が良いように思える。
しかし、ガンダムのモビルスーツの場合は、小惑星要塞攻略戦用のみならず、月面戦闘用、コロニー戦闘用、さらに宇宙空間戦闘用も考えられた、汎用型であるためにあの形状になったと言える。
ただ、地球上戦用にはあまり向いていない。
地球上戦用ならば、通常の戦車の方が向いていると思えるが、1年戦争当時、地球上での本格的な戦闘は考えていなかった連邦は、ろくな戦車を配置していなかった。
暴徒鎮圧用程度のものだった。
これならばモビルスーツでも十分戦える。
○月面用「陸戦兵器」
ついでに月面用「陸戦兵器」を考えてみよう。
月は大型の小惑星と考えることも出来る。
真空世界であり、移動手段や兵器にマスドライバー等が使える。
しかし重力は大きく車輪やキャタピラも有効と思える。
とはいえ、月面はクレパスあり、クレーターありの地形であり、それを越えねばならないことを考えると、「足」を持ったマシンの有効性は小さくはあるまい。
また、地平線が近いため、地球上ほど高さへの制限は強くはないだろう。
それを考えると、小惑星用に開発された「陸戦兵器」を月面にも流用するという考えはけっして間違ってはいないと思える。
月面戦というのはガンダムでは描写されなかったものだから、稿を改めて考察してみたい。
○終わりに
宇宙戦略・戦術というものについて考えることには批判もあるだろう。
私としても、将来の宇宙が戦場になって欲しいと思うものではない。
しかし、人類が宇宙へと進出したら、いずれ武力抗争を始めるのは、人類の歴史を見ても仕方のないことだと思える。
そのときにどうなるかを考えるのは、思考実験としても魅力的だし、将来の人類の姿を予測する上でも必要なことであろうと思えます。