☆メテオ・シャワー
その時、レイは東京にいた。新月の夜であった。星が流れた。ひとつ、ふたつ、みっつ、瞬く間にそれは数え切れないほどの数になって、空を覆い尽くした。普通の流星雨などであろうはずがなかった。月から何かが大量に降ってくる!
それはまず大陸で始まった。月から降ってきた外来種達は、町を襲いはじめた。正確には巣作りを始めたという方が正しいだろう。別に人間が食われたわけではない。しかし建物の中に勝手に侵入し、そこにあるものを勝手に集めて営巣を始める。それは十分にパニックであった。彼らを追い払おうとした人々が反撃されて怪我をし、あるいは殺される事態があちこちでおきた。
そして日本では一日遅れてパニックが始まった。太平洋上に落ちた彼らが、海の底を歩いてか、あるいは泳いでか、日本沿岸に集まり、一斉に上陸を開始したのだった。日本の沿岸部、特に太平洋に面した一帯は、たちまちパニックになった。
東京は特にパニックに陥った。大都市はこういう状況になるとどうしようもなく弱い。交通機関は麻痺し、通信網も寸断された。彼らは小火器程度ではどうしようもなく、かと言ってほとんどの人間が逃げ遅れた東京を空爆するわけにもいかなかった。
レイは学校にクラスメート達と閉じこめられていた。彼らはついに学校内部に侵入してきた。脱出を図ったがヤドカリの一団に囲まれた。「これまでか!」レイは思った。不思議と恐怖感は無かった。
と、そのとき、レイの額に灼けるような痛みが走った。やられたか!と思ったが違う、むしろ身体に力が溢れてくるような感覚。
そして「あきらめるな!君は勝てる!」と声がした。声?いや違う。そう知っているのだ。
「『炎』、と念じよ」その知識はそう言った。
レイは手を組み、「炎よここに!」と念じた。と、灼熱の炎が宙に現れ、ヤドカリは炎の一薙ぎで黒い炭と化した。
非現実的な出来事に、しかしレイは全く驚かなかった。そして「行ける!」と感じた。クラスメートを怪物達の手から救える!
レイは、外に飛び出すと、そこいらにいた怪物達を次々と焼き払っていった。
「ファイヤーーーーーーッ」レイはその澄んだ声を高らかに響かせた。
「アローーーーーーーーッ」レイの手のひらに生じた光球は、白熱の矢と化してヤドカリの甲羅に突き刺さり、内部から爆発を起こした。三千度の熱にも耐えると言われた、彼らの甲羅が面白いように溶け、あるいは砕け散った。炎を作り出すには声に出して言う方がよりはっきりとしたイメージを作れることはすぐに判った。
クラスメートが避難している部屋の周りを囲むヤドカリをレイは一気に吹き飛ばした。
「みんな、無事?」
「無事です、レイ様。レイ様こそお怪我はありま・・・」と言いかけて彼女は息をのんだ。レイの額が真っ赤に燃えていた。いや、額から赤い宝石のような物が左右に広がっていた。それはルビーで出来たティアラのようにも思えた。ちょっと目には何か赤く光る物を額につけているかのように見えるかもしれない。しかしよく見ればそれは間違いなく額から生えていた。そして何よりもその放つ光は電気の光りなどではない、間違いなく生きた光りであった。
さらにレイは学校の外にいる怪物達を次々と倒していった。これがさっきまで逃げるだけで精一杯だった敵とは思えないほど簡単に倒されていった。
しかし数百匹のヤドカリを焼き払ったレイの前に巨大ガニが現れた。
カニはレイの炎をあぶくではじき飛ばすと、はさみを突き立てた。速い!ヤドカリとはスピードが二桁は違う!後ろに下がろうとしたレイは何かに躓いて後ろに転んだ!その隙を逃さずカニのはさみがレイを襲う!と、突然、カニが火を噴いて消し飛んだ。
「危なかったな」その低い声に振り返るとそこにいたのはドラゴン!
そうそれはドラゴンとしか言いようがなかった。直立した巨大なトカゲのような姿。何より背中の2枚の翼!そして額に輝く真紅の宝玉。
が、一瞬でレイは理解した。このドラゴンがレイの味方であることを。そしてレイが事故の時に薄れゆく意識の中で見た巨大な影の正体であることも。
「初めまして」レイはいささか皮肉っぽく言った。
「それとも、お久しぶりと言うべきかしら。この事態の説明をしていただけますわね。」
第3章 コスモ・シード
この宇宙には太古の昔から真空の宇宙を生活の場とする生物が存在し、彼らは宇宙全体に少しずつ広がっているのだと竜は語った。地球にその手が今まで及ばなかったのはあくまで幸運だったのにすぎないのであると。あるいは今までにも既にやってきていたのかもしれない。彼らは、月だけではなく太陽系の各天体にも降り立ち、繁茂している。
ひとつの生態系に外来種が加わったとき、外来種が在来種を駆逐するか、在来種が外来種を駆逐するか、あるいはあらたなテリトリーが生まれ、共存してやっていくか、この3種類しかない。はたして今回の外来種の侵略はどういう結果に終わるのか。それは私にも判らない。と竜は言った。
「で、私のこの力とあなたは関係しているのでしょう?そもそもあの事故の原因はあなたなんじゃあないの?」レイは問うた。
「事故に関しては確かに私にも責任がある。私はあのとき、この星での宇宙種の活動状況を調査していたのだ。それで私を見たヤドカリが逃げようとして、道路に飛び出した。そのときに運悪く、君の乗った車が来たのだ」緑竜は言った。
「君もあのとき実は死んでいたのだよ。君たち三人の死体を見たときに私は責任感から私の宝玉のかけらを与えてみようと思った。我々の額の宝玉は、うまく適合すれば死からも蘇らせる力を持っている。」
「君の両親には適合しなかったが、君は適合した。息を吹き返し、怪我も治った。しかしそれだけではなく、君は竜の力をその身に宿らせることになったようだ。こういう現象は話には聞いていたが、私自身も見たのは初めてだ」
「しかし、今回の宇宙種の地球侵入事件には私はどうも不自然なものを感じる」竜はいぶかしげに言った。
「確かに種の拡散は自然の摂理だ。防ぎようは無い。しかし、今回の事例はあまりにも動きが早すぎる。まるで何者かが意図的に宇宙種を繁殖させようとしているかのようだ。私にはそう感じられてならない」
「どちらにせよ」レイは言った。
「月へ行かねば何も判らないということね」
その時、レイは東京にいた。新月の夜であった。星が流れた。ひとつ、ふたつ、みっつ、瞬く間にそれは数え切れないほどの数になって、空を覆い尽くした。普通の流星雨などであろうはずがなかった。月から何かが大量に降ってくる!
それはまず大陸で始まった。月から降ってきた外来種達は、町を襲いはじめた。正確には巣作りを始めたという方が正しいだろう。別に人間が食われたわけではない。しかし建物の中に勝手に侵入し、そこにあるものを勝手に集めて営巣を始める。それは十分にパニックであった。彼らを追い払おうとした人々が反撃されて怪我をし、あるいは殺される事態があちこちでおきた。
そして日本では一日遅れてパニックが始まった。太平洋上に落ちた彼らが、海の底を歩いてか、あるいは泳いでか、日本沿岸に集まり、一斉に上陸を開始したのだった。日本の沿岸部、特に太平洋に面した一帯は、たちまちパニックになった。
東京は特にパニックに陥った。大都市はこういう状況になるとどうしようもなく弱い。交通機関は麻痺し、通信網も寸断された。彼らは小火器程度ではどうしようもなく、かと言ってほとんどの人間が逃げ遅れた東京を空爆するわけにもいかなかった。
レイは学校にクラスメート達と閉じこめられていた。彼らはついに学校内部に侵入してきた。脱出を図ったがヤドカリの一団に囲まれた。「これまでか!」レイは思った。不思議と恐怖感は無かった。
と、そのとき、レイの額に灼けるような痛みが走った。やられたか!と思ったが違う、むしろ身体に力が溢れてくるような感覚。
そして「あきらめるな!君は勝てる!」と声がした。声?いや違う。そう知っているのだ。
「『炎』、と念じよ」その知識はそう言った。
レイは手を組み、「炎よここに!」と念じた。と、灼熱の炎が宙に現れ、ヤドカリは炎の一薙ぎで黒い炭と化した。
非現実的な出来事に、しかしレイは全く驚かなかった。そして「行ける!」と感じた。クラスメートを怪物達の手から救える!
レイは、外に飛び出すと、そこいらにいた怪物達を次々と焼き払っていった。
「ファイヤーーーーーーッ」レイはその澄んだ声を高らかに響かせた。
「アローーーーーーーーッ」レイの手のひらに生じた光球は、白熱の矢と化してヤドカリの甲羅に突き刺さり、内部から爆発を起こした。三千度の熱にも耐えると言われた、彼らの甲羅が面白いように溶け、あるいは砕け散った。炎を作り出すには声に出して言う方がよりはっきりとしたイメージを作れることはすぐに判った。
クラスメートが避難している部屋の周りを囲むヤドカリをレイは一気に吹き飛ばした。
「みんな、無事?」
「無事です、レイ様。レイ様こそお怪我はありま・・・」と言いかけて彼女は息をのんだ。レイの額が真っ赤に燃えていた。いや、額から赤い宝石のような物が左右に広がっていた。それはルビーで出来たティアラのようにも思えた。ちょっと目には何か赤く光る物を額につけているかのように見えるかもしれない。しかしよく見ればそれは間違いなく額から生えていた。そして何よりもその放つ光は電気の光りなどではない、間違いなく生きた光りであった。
さらにレイは学校の外にいる怪物達を次々と倒していった。これがさっきまで逃げるだけで精一杯だった敵とは思えないほど簡単に倒されていった。
しかし数百匹のヤドカリを焼き払ったレイの前に巨大ガニが現れた。
カニはレイの炎をあぶくではじき飛ばすと、はさみを突き立てた。速い!ヤドカリとはスピードが二桁は違う!後ろに下がろうとしたレイは何かに躓いて後ろに転んだ!その隙を逃さずカニのはさみがレイを襲う!と、突然、カニが火を噴いて消し飛んだ。
「危なかったな」その低い声に振り返るとそこにいたのはドラゴン!
そうそれはドラゴンとしか言いようがなかった。直立した巨大なトカゲのような姿。何より背中の2枚の翼!そして額に輝く真紅の宝玉。
が、一瞬でレイは理解した。このドラゴンがレイの味方であることを。そしてレイが事故の時に薄れゆく意識の中で見た巨大な影の正体であることも。
「初めまして」レイはいささか皮肉っぽく言った。
「それとも、お久しぶりと言うべきかしら。この事態の説明をしていただけますわね。」
第3章 コスモ・シード
この宇宙には太古の昔から真空の宇宙を生活の場とする生物が存在し、彼らは宇宙全体に少しずつ広がっているのだと竜は語った。地球にその手が今まで及ばなかったのはあくまで幸運だったのにすぎないのであると。あるいは今までにも既にやってきていたのかもしれない。彼らは、月だけではなく太陽系の各天体にも降り立ち、繁茂している。
ひとつの生態系に外来種が加わったとき、外来種が在来種を駆逐するか、在来種が外来種を駆逐するか、あるいはあらたなテリトリーが生まれ、共存してやっていくか、この3種類しかない。はたして今回の外来種の侵略はどういう結果に終わるのか。それは私にも判らない。と竜は言った。
「で、私のこの力とあなたは関係しているのでしょう?そもそもあの事故の原因はあなたなんじゃあないの?」レイは問うた。
「事故に関しては確かに私にも責任がある。私はあのとき、この星での宇宙種の活動状況を調査していたのだ。それで私を見たヤドカリが逃げようとして、道路に飛び出した。そのときに運悪く、君の乗った車が来たのだ」緑竜は言った。
「君もあのとき実は死んでいたのだよ。君たち三人の死体を見たときに私は責任感から私の宝玉のかけらを与えてみようと思った。我々の額の宝玉は、うまく適合すれば死からも蘇らせる力を持っている。」
「君の両親には適合しなかったが、君は適合した。息を吹き返し、怪我も治った。しかしそれだけではなく、君は竜の力をその身に宿らせることになったようだ。こういう現象は話には聞いていたが、私自身も見たのは初めてだ」
「しかし、今回の宇宙種の地球侵入事件には私はどうも不自然なものを感じる」竜はいぶかしげに言った。
「確かに種の拡散は自然の摂理だ。防ぎようは無い。しかし、今回の事例はあまりにも動きが早すぎる。まるで何者かが意図的に宇宙種を繁殖させようとしているかのようだ。私にはそう感じられてならない」
「どちらにせよ」レイは言った。
「月へ行かねば何も判らないということね」