G・K・オニール教授の「スペースコロニー構想」は、当時の日本SF界からはほとんど無視されました。世界のSF界ではもう少しましでしたが、アーサー・C・クラークのような世評の高い作家をはじめとして多くのSF作家は理解できませんでした。その後、日本SFが衰退したのも当然の結果と思いますね。

 しかし、日本において「スペースコロニー構想」を正しく理解し、作品化したものがありました。

 言うまでもなく、「機動戦士ガンダム」です。

 スペースコロニー計画を正しく理解しているかどうかを判断する一つの材料が、火星の扱いです。
 小惑星に比べ火星は圧倒的に開発しづらく、また開発によって得られる見返りが少ないため、火星が開発されることはほとんどあり得ません。
 ガンダムでは火星はほとんどというか全くというか出てきません。極めて正しい描写です。
 それに対しSF界が描いた「さよならジュピター」という作品では火星開発されている設定であり、古くさいSF設定から逃れられないのか?と当時思ったものです。

 またガンダムには地球圏に小惑星がいくつも出てきます。ルナツー、ソロモン、ア・バオア・クーなどです。
 これらは作中では要塞として使われますが、ナレーションで「鉱物資源を採取するために小惑星帯から運ばれてきた」と説明されています。
 鉱物資源を採取した小惑星が要塞として使われるというのは、いかにもありそうなことですね。

 またアクシスのような小惑星帯にある小惑星基地もあります。

 さらに木星のヘリウム資源を採取するためのヘリウム船団などの描写もあります。
 この場合、当然ヘリウム3でしょう。この物質は核融合反応にもっとも適した物質とされますが、膨大な通常のヘリウムにごく僅かしか含まれていないのです。

 月の南極にある基地グラナダは月の拠点ですね。南極というのは、氷があるのではないかと当時言われていたところですね。
 氷がもし見つかったら大発見でした。しかし残念ながら、その後の月探査でも氷は発見されていませんが。
 月は資源供給源としてもっとも早くに開発されます。その後小惑星開発が進むにつれて、資源供給源としては役割が下がりますが、一端増加した都市人口は、宇宙の拠点の一つとして栄える理由になるだろうと思われます。

 以上のように、月、小惑星、木星の資源が開発され、その地球とは比較にならない膨大な資源を背景として、あのスペースコロニー世界が出来上がっているのですね。

 見事に考証された作品だったわけですね。

 しかしあまりに先進的すぎたのでしょうね。全く理解力のない者たちからしょうもない批判を受けたりもしましたが。