「赤壁 ~大江東去~」

 私にとって、もっとも思い出深いalan曲の一つです。

 日本版の「久遠の河」も好きですが、この曲は別格です。

 それはもちろん映画「レッドクリフ」の主題歌であったことも大きいのですが、それだけではありません。

 「明日への讃歌」に見られるチベットフェイクが、大地から天空を貫くかのように発する、まさに『Voice of EARTH』大地の声であるのに対して、ファルセット・ヴォイスで歌われるこの歌は、天空から地上に降り注ぐ、天上の声でした。

分久必合 合久必分

 これは、有名な三国演技の冒頭の文章で、本来国のことなのですが、この歌では人の会者定離の理を示しています。
 もちろん、直接的には周喩と諸葛亮を指していることはいうまでもありません。

 この詩は、古来の漢詩を豊富に引用してあり、詩自体が悠久の時間の流れを感じさせます。

 そしてその時間の中でかつての英雄たちは消えてしまったと、日本人なら無常観をモチーフにするところです。

 しかし、同じ月を見ているという描写を入れることで、時間的空間的スケールがきわめて大きくなっているのですね。

 こういう感覚は日本人には乏しい、中国人の時空間感覚なのでしょうか。

 そして、その時空間の中央に位置するのが「月」であり、「月の仙女」を意味する名前を持つalanがそこに位置し、その声を響かせる。

 まさに、「天上からの声」です。