私たち築古物件投資家が内見時に注意を払うべきことは多々あります。新築や築浅物件と違って長い歴史があり、その物件がどのようなオーナーのもとでのような歴史をたどってきたのか未知数なので当然と言えば当然ですね。

 

中でも築古物件ならではの問題であり最大限の注意が必要なもののひとつがシロアリです。シロアリはまさに築古物件の天敵とも言える存在です。

 

 

シロアリ被害のある物件について慎重に検討する必要がある理由

 

シロアリは木材を食べてしまうため、建物の構造に深刻なダメージを与えることがあります。特に築古物件では、シロアリ被害が長年にわたって蓄積されている可能性が高いため、注意が必要です。シロアリの被害は見た目だけではわかりにくいことも多く、建物の耐久性や安全性に直結する問題ですので、しっかりと検討する必要があります。

 

ただし、築30年以上経っている木造物件なら多かれ少なかれシロアリはいると思っておいた方がいいです。ですので、被害が確認できなくても10年に一度くらいは防蟻措置を施しておいた方が安心だと思います。

 

 

シロアリ被害のチェック方法

 

目視確認: 床下や屋根裏、壁の隙間など、シロアリが好んで住みつく場所を確認します。木材の色が変わっていたり、スカスカしている場合は要注意です。特に浴室や洗面所への入り口付近など水気が多い場所を念入りにチェックしましょう。

 

シロアリの痕跡: シロアリの糞や、土のトンネル(蟻道)を見つけることができれば、それはシロアリの存在を示しています。床下点検口がある場合は簡単にチェックできますが、そうでない場合は専門業者に任せた方が無難です。

 

 

基礎の形態ごとのチェック方法

 

 

布基礎

 

布基礎は、連続したコンクリートの壁で支えられた基礎形式で木造の築古物件ならほとんどが布基礎です。シロアリ被害のチェックポイントは以下の通りです。

 

基礎の周囲の確認: 布基礎の周囲には、シロアリが侵入しやすい隙間や割れ目がないか確認します。

 

基礎内部の点検: 基礎内部の床下や壁の隙間にシロアリの痕跡がないか確認します。特に湿気がこもりやすい場所は注意が必要です。

 

蟻道の確認: 布基礎の表面にシロアリが作る土のトンネル(蟻道)がないかチェックします。蟻道が見つかればシロアリの存在を疑います。

 

 

ベタ基礎

 

ベタ基礎は、建物全体をコンクリートで覆った基礎形式で、シロアリの侵入を比較的防ぎやすいとされていますが、以下の点をチェックします。

 

コンクリートのひび割れ: ベタ基礎のコンクリートにひび割れがある場合、そこからシロアリが侵入する可能性があるため、ひび割れの有無を確認します。

 

基礎周りの湿気対策: ベタ基礎でも湿気が多い環境ではシロアリが侵入しやすいため、周囲の排水状態や湿気対策を確認します。

 

基礎周囲の土壌: ベタ基礎の周囲の土壌にシロアリの活動の痕跡がないかチェックします。特に蟻道やシロアリの糞などが見られないか確認します。

 

 

シロアリを見つけた時の対処法

 

早急な対応: シロアリを発見したら、放置せずにすぐに対処することが重要です。被害が広がる前に手を打つことが肝心です。

 

専門業者へ依頼: シロアリ駆除の専門業者に連絡し、調査と駆除を依頼します。プロの手に任せることで、確実にシロアリを駆除することができます。

 

 

シロアリの予防法

 

定期的な点検: 定期的にシロアリの点検を行うことで、早期発見・早期対処が可能になります。

 

湿気対策: シロアリは湿気の多い場所を好むため、換気を良くするなどして湿気対策を行います。

 

薬剤の散布: シロアリ防除の薬剤を定期的に散布することで、シロアリの侵入を防ぐことができます。

 

 

湿気対策の重要性

 

 

シロアリは湿気を好むため、建物内外の湿気を管理することでシロアリの発生リスクを低減できます。

 

 

屋内の湿気対策

 

 

換気の改善

 

換気扇の設置: 浴室やキッチン、洗面所などの湿気がこもりやすい場所に換気扇を設置します。特に、使用後に十分な換気を行うことが重要です。

 

窓を開ける: 日中に窓を開けて自然換気を行い、湿気を外に逃がします。特に湿度が高くなりやすい梅雨時期には効果的です。

 

 

除湿機の使用

 

除湿機の設置: 湿気が多い場所や季節には除湿機を使用して室内の湿度をコントロールします。特に地下室や床下など、換気が難しい場所での使用が有効です。

 

適切な湿度管理: 室内の湿度を50〜60%程度に保つことが理想です。湿度計を使用して定期的にチェックし、必要に応じて除湿機を活用します。

 

 

防湿シートの利用

 

床下に防湿シートを敷く: 床下の地面に防湿シートを敷くことで、地面からの湿気が床下に上がるのを防ぎます。シートの重ね部分や端をしっかりと固定することが重要です。

 

壁面への施工: 必要に応じて壁面にも防湿シートを施工し、外部からの湿気の侵入を防ぎます。

 

 

屋外の湿気対策

 

 

換気や除湿機の使用など屋内対策は入居者さんに任せるしかないので、大家としてできることは屋外の対策です。

 

 

雨水の排水管理

 

排水溝や排水管の整備: 建物周囲の排水溝や排水管を整備し、雨水が建物の基礎部分にたまらないようにします。排水溝が詰まらないように定期的に清掃を行います。

 

地面の傾斜: 建物周囲の地面を建物から外側に向かって傾斜をつけることで、雨水が基礎部分にたまらず、自然に排水されるようにします。

 

屋根や外壁の点検と修理

 

屋根の点検: 屋根にひび割れや欠損がないか定期的に点検し、必要に応じて修理します。雨漏りが発生すると内部に湿気がこもり、シロアリの発生リスクが高まります。

 

外壁のメンテナンス: 外壁にひび割れや隙間がないか確認し、必要に応じて補修します。特に基礎部分と外壁の接合部は注意深くチェックします。

 

 

庭の管理

 

木材やゴミの除去: 庭に古い木材やゴミを放置しないようにします。これらが湿気を含むとシロアリの格好の住処になります。入居者さんにも適切な管理をお願いし、できれば契約書にも明記しておきましょう。

 

植栽の管理: 建物の近くに植栽を植える場合、根が建物に接触しないように適切に管理します。また、植栽が過密にならないように間隔を空けて植えます。私の場合は、ご近所迷惑になるといけないので植栽の管理も入居者さんが適切に行ってもらえるよう明記しています。

 

 

防湿施工

 

基礎周りの防湿施工: 建物の基礎部分に防湿材を施工し、外部からの湿気の侵入を防ぎます。防湿材には、シートタイプや塗料タイプなどがあります。

 

 

基礎に通気口を設ける:まれに通気口がない物件もあるので、その場合通気口を施工する必要があります。内見時にそのような物件を見つけたら購入は避けた方が無難です。

 

防湿層の追加: 必要に応じて基礎周囲に防湿層を追加し、湿気の侵入をさらに防ぎます。

 

湿気対策はシロアリ対策だけでなく、建物全体の耐久性を高めるためにも重要です。定期的な点検と適切な対策を行うことで、シロアリの被害を防ぎ、快適な住環境を維持しましょう。

 

 

防蟻技術の発達

 

 

築古物件を多く所有している私は、必然的にシロアリ駆除の専門家と話をする機会が多くなります。彼らと話していて感じるのは、防蟻技術は近年大きく進化し、多くの新しい方法や製品が開発されているということです。これにより、シロアリ被害を以前よりずっと効果的に予防し、駆除することが可能になっています。以下に私が専門家から聞いた話をまとめています。

 

 

防蟻技術の進化と最新の手法

 

 

薬剤処理

 

 

土壌処理

 

薬剤散布: 建物の基礎周りの土壌に防蟻薬剤を散布することで、シロアリの侵入を防ぎます。最新の薬剤は効果が長持ちし、駆除業者も5年~10年の保証期間を設けていることが多いです。安全性も高いものが多く使用されています。

 

バリア処理: 防蟻薬剤を土壌に注入し、シロアリが通過できないバリアを形成します。これにより、建物への侵入を長期間防ぐことが可能です。

 

 

木材処理

 

防蟻塗料: 木材に防蟻効果のある塗料を塗布することで、シロアリの侵入を防ぎます。最新の防蟻塗料は環境に優しく、持続効果が高いものが多いです。

 

薬剤注入: 木材内部に防蟻薬剤を注入することで、内部からシロアリを防ぎます。これにより、木材の耐久性を高めることができます。

 

 

物理的防蟻技術

 

 

防蟻シート: 基礎部分や床下に防蟻シートを敷くことで、シロアリの侵入を物理的に遮断します。最新の防蟻シートは耐久性が高く、施工も簡単です。

 

ステンレスメッシュ: シロアリが通過できない細かいステンレスメッシュを基礎部分に設置することで、物理的にシロアリを防ぎます。このメッシュは耐久性があり、長期間効果を発揮します。

 

 

生物学的防蟻技術

 

生物防蟻剤: シロアリの天敵である微生物や昆虫を利用した防蟻技術が注目されています。これにより、化学薬剤を使用せずにシロアリを防ぐことが可能です。

 

フェロモンを利用した防蟻: シロアリが発するフェロモンを模倣した物質を利用し、シロアリの行動を制御する方法です。これにより、シロアリの巣への誘導や駆除が効率的に行えます。

 

 

電磁波・超音波技術

 

電磁波防蟻: 一般的な家屋に使用されることはありませんが、特定の電磁波を使用してシロアリを追い払う技術です。この方法はシロアリに対してストレスを与え侵入を防ぎます。

 

超音波防蟻: 超音波を利用してシロアリを忌避する装置が開発されています。超音波は人間やペットには影響を与えず、シロアリだけを追い払うことができます。

 

 

防蟻技術の選び方と適用方法

 

 

防蟻技術の選び方

 

建物の状況に応じた選択: 建物の構造や環境に応じて、最適な防蟻技術を選択します。例えば、湿気が多い地域では物理的防蟻技術や薬剤処理が有効です。

 

予算に応じた選択: 防蟻技術にはコストがかかります。予算に応じて最適な方法を選び、長期的な効果を考慮して決定します。

 

 

防蟻技術の適用方法

 

プロの施工業者に依頼: 防蟻技術は専門知識と技術が必要です。信頼できるプロの施工業者に依頼することで、確実に効果を発揮します。

 

定期的なメンテナンス: 一度施工した防蟻技術も、定期的な点検とメンテナンスが必要です。定期的に専門業者にチェックしてもらい、必要に応じて再施工を行います。

 

 

まとめ

 

防蟻技術は進化を遂げ、多様な方法が開発されています。薬剤処理、物理的防蟻技術、生物学的防蟻技術、電磁波・超音波技術など、さまざまな方法を組み合わせることで、効果的にシロアリを防ぐことができます。

 

有名大家さんの著書などを拝見すると、“内見の際シロアリの痕跡を見つけたら絶対買ってはダメ!”と言っている方が多いですが、技術は日進月歩で進歩しているので、コスト計算した上でモトが取れそうなら私としては全然アリだと思っています。まずは専門家に見てもらってコスト、保証などを慎重に検討することです。