ALIVE


♪心得/Uru
最高潮に盛り上がりを見せた出演者紹介の残響も消え、静まり返ったステージにほのかに明かりが灯りだすと、下手にはハイチェアに腰掛けたまかさん。
やがて歌い出したのがこのナンバーです。

観客の集中度合いも高く、まるで全ての耳がそちらへとむいているような感じ。
ある種、緊張のような張り詰めた空気もありました。

『unknown』での衣装は全てパンツスタイルだったのですが、ここALIVEでの衣装が最もフェミニン。
ジャケットも羽織られていたのに、補正していない男役時代とは違う佇まいだというのが1番露わだった気がします。
後ろへと自然に流された髪も相まって自然な真風涼帆という風情だったんです。

そのまかさんが、普段お話しされる時の高めの優しい声で歌う♪心得。
楽曲のもつ温かな目線と清廉な雰囲気にとても合っていました。

彼女の歌は上手いという認識なのですが、特に歌詞のもつ意味、楽曲の伝えたい事を客席に届ける強さがあります。
端的に言って表現力が高い。
『アナスタシア』『NEVER SAY GOODBYE』と2作、ミュージカルで主演をしていることも、それを裏付けているのではないでしょうか。
そんなまかさんだからこそ、どこか語って聞かせるお芝居のような歌唱へ非常に惹きつけられた1曲でした。

凄い!となったのは、決して感情を入れすぎない真摯な姿。
何度見てもブレがなく、それは上手く歌うぞ!という意気込みすら感じない程に柔和な空気をまとっていました。
常に一定のレベルを保ちながらも、回数を重ねるごとに深みを増す歌声だったんです。

長年舞台を観てれば気づきます、二心あれば音を外す。
泣いて歌えなくなる方もいらっしゃいますよね。
歌い手の心情や人生観を込めるのではなく、歌詞を伝える、その曲を聴いてもらうという素直で1番大切な仕事をこなすまかさんが存在していました。
それは舞台人としては当たり前のこと、だからこそ困難なことでもあります。
改めて感想を書くとこんな風に言えるのですが、観ている際には彼女の歌に夢中でしかなかった。
ただただ酔いしれることが出来たのは、ありのままに歌う姿が日頃の鍛錬に裏打ちされたパフォーマンスだからこそ。

ステージにはまかさんしかおらず、まるで1対1で向き合うかのように耳を傾けるだけ。
そんなシンプルな演出も含めて贅沢な時間でした。

♪明日も/SHISHAMO
まず♪心得を歌い終えたまかさんが、ALIVEではメッセージ性の強い楽曲をお楽しみいただきますと解説。
そしてニコニコと次はあの曲です!と紹介すると、ワー!と両手を挙げて下手袖へと楽しそうに逃げていきます。
すると上手からunknownガールズ&ボーイズがダッシュで追いかけてくるという始まり方がメチャメチャ可愛かったです。

ここでの衣装は他のテーマと違って、全員違うものを着ていたのが印象的。
ポップな色使いといい、とってもキュートでした。

https://www.instagram.com/p/C8b9HANyJ4g/?igsh=MWQ4ZGR0OXU1OGI5Mw==


こちらの4枚目がその衣装です。
ちなみにこの曲のボーカルはまりんちゃんとひなちゃんをメインにガールズが担当していました。

人の趣味はそれぞれという前提の元で語りますが、申し訳ないけれど正直『MAKAZE IZM』がハマらなかった私には、『unknown』で扱ってくれたことによって救われた1曲となりました。
そんな歌詞だったんだ!という新鮮な驚きもあったりして、沼にハマってたり、好きなものがある生活してる人にはグッとくる曲だったんだなぁと今更ながらに感動。
特に♪良いことばかりじゃないからさ〜から始まるサビの♪誰よりも早く、立ち上がるヒーローに会いたくて〜の箇所の振付で背後のスクリーン映るまかさんへ振り返るのが本当にダメだった。
泣けて、泣けて。
あぁ、会いたかったんだなって、当たり前のことに気付かされもしました。

実のところ振付もポップだったので、楽しい1曲でした。
えぇ泣くような場面ではなかったんです。

最初♪月火水木金働いた〜の所で、各々が何かのお仕事に従事しているマイムしてるのも面白かった。
ビール女優コイタちゃんがバーテンダーでシェーカーを振ってたり、けんけんは建築業?ガガガッと何かの機材と共に揺れてたりなんかして。
で、センター後方のおかぴーが謎に横笛を吹く人というのをやっていました。
いわゆるミュージシャンだとは思うのですが、上手く吹けない様子なんです。
音が出ないのか首を傾げたり、笛をブンブン降ったりなんかして、挙げ句ラストにはその横笛を投げ捨てたり、膝で二つ折りにしたりと大暴れで目が離せませんでした。
ヒーローに会えた週明けには吹く笛がない、プロとして大丈夫なのか心配で仕方がなかったよ!
あと大ちゃんが皆がマイムしている間、下手の踊り場辺りでのほほんと過ごされていたのは何だったんでしょう。

振付としてはサビのあたりで挫けたボーイズ達は、床を這いつくばり2人ずつ左右に分かれて後方へと移動します。
そして♪ヒーローに会いたくて〜の後に振り返ると何と額にはハチマキ、両手にペンライトを装着しオタ芸を披露!
「超絶可愛い!」「ゆりか様!」というコールもあって、心から混じりたかったです。

ちなみにハチマキ、よく見ると4人とも違っていて「真風一筋」「ゆりか命」「涼帆尊」とかそんなだったと思うんだけど、ここの記憶がどうにも朧げ!
誰がどれを着けてたかメモっておけば良かったーっとメッチャなってるので、Blu-rayで判別できなかったら多分泣くと思う。
どうかボーイズが良きカメラワークで抜かれてますように!

あとおかぴーがとんでもなくオタ芸が上手いのも気になったよね。
キレが違う!
そして芝居っぽく皆がバラバラにはけていく際に、ペンラを交通整理の人みたいにグルグル回してたのにも目が奪われてました。

♪ひとりで生きていたならば/SUPER BEAVER
どのように歌えばこの楽曲の持つ魅力を伝えられるのかという意味で、真っ向勝負に挑むかのように力強く歌う姿が印象に残る場面です。
ポップでキュートな♪明日もが終わり、静まり返るとサスの中に1人立つまかさん。
この歌ってアカペラから始まるんですよ、男役時代があったからこその深い声が劇場いっぱいに広がると、一気に惹き込まれました。
相変わらず包みこまれるような大きい声だなぁという愛しさもありました。

まかさんはセットの2階にいて、スクリーンが1番近いポジション。
その真後ろのスクリーンに歌詞が映し出されるって演出は大胆な気がしました。
MVで見るような文字を使った演出は凄かったのですけど、動画ならまだしも生でそれをやるだなんて。
まず余程のことがない限り大丈夫だろうけど絶対に歌詞が間違えられない、そして歌詞の意味や発音がきちんと聞こえているのか問題が発生するんじゃないかと心配になりました。
でもそれは本当に少し過っただけで、全くの懸念でした。
そんな事を感じる隙もない程にまかさんの声が、ガンガン響いてくるんです。

不思議と彼女の信念や志とリンクして聞こえました。
でもそれは私が勝手にインタビューなどから抱いているイメージなので、そう改めて言葉にして欲しかった気持ちにただ合致しただけなんでしょう。
純粋に歌っているだけのまかさんの声が、ストレートに心に染み入った結果でしかないんです。
気持ちを動かされた聴衆はついつい歌詞の意味や解釈を考えがち、でも歌っている側はそんなことを含んでいる訳はないはず。
(ミュージカルではなくコンサートですからね)
だのに、ついつい考えてしまうくらい強さのある歌唱でした。

ここまでの曲とは違い、下のステージではunknownガールズ&ボーイズがソロで踊るという趣向。
1人のパフォーマンスの終盤になると、次の1人が現れ踊り始めるといるのが繰り返されます。
コンテンポラリーな振付と、1人しかいないからこそ空間を大きく使って踊る姿に魅了されました。

楽曲の持つ世界観を表す為か、まかさんも1人、ダンサーも1人での表現。
その気迫がステージの空気を動かし、ズシズシ胸に刺さるようで困ってしまいました。
とっても感動してるし、集中したいのは山々だけど上部にいるまかさんと、平場で踊る皆を同時には見られないんですもの!
オペラグラスなんて使った日には尚更に!!
一体どのようにBlu-rayでは撮影してるんでしょう、メッチャ気になってます。

これも間違っていたらすいませんなんですが、8人目に踊った大ちゃんがまかさんを見つめるみたいな件があって、そこがメッチャ好きでした。
一見2フロアに分かれているけど、1つのステージなんだって感じられてグッときたんです。
やがて全員登場してまかさんを見上げる…みたいに確かなったはず。
その瞬間、そうだよね、舞台って1人では作れないもの、皆がいて良かった!となるところが堪りませんでした。

最後はunknownガールズとボーイズがまかさんの元へと集合。
より真ん中へとまとまれるよう、まかさんへの距離を縮める為に座ってあげる人がいたりとかするのもいいね、いいねって心が鷲掴みでした。
その際に大ちゃんがまかさんの方を向いて何か伝えているようなことをしていたのですが、これは客席からは背中しか見えず!
でもまかさんは(え〜何何?)みたいな反応だったのに、何を言っていたのは確実で、それは何だったのかが今も気になってます。
最後は全員で肩を組んで並ぶんだけど、ここがまた良い笑顔だった!

♪unknown〜見知らぬ希望
このコンサート、そして真風涼帆の為に作られたオリジナルであり、ラストを飾るにふさわしい珠玉のナンバーでした。
♪心得、♪ひとりで生きていたならばと難曲をこなした後だからか、少しリラックスして歌われていたかもしれません。
歌い終えた後の曲紹介でホッとされた様子でしたしね。

先の2曲とは違い移動しながら歌う演出にも余裕を感じさせられました。
セット上部で歌い始めたので、必然的に平場へと降りていくのですが、何故現役時代あんなに大階段取りまくってたのにファンとしてはドキドキしちゃうんでしょうね。

何より、あの優しい声が活きるナンバーでした。

今の真風涼帆、そしてこれからも進化し続けるであろう彼女に歌い続けて欲しい1曲です。
こんな宝物のように大切で、ホッとする灯火のようなナンバーを作ってもらうだなんて何と恵まれているのかと、そういう意味でも胸がいっぱいになりました。

私は彼女の芸が観るに値する素晴らしいものだと実感していますし、見る度にそのパフォーマンスが心を動かしてくれることから類まれな力の持ち主だと確信してます。
宝塚を卒業され、もう二度と舞台での姿はお目にかかれないのかと心配したこともありました。
でも♪unknown〜見知らぬ希望を聞いた時に、コンサートのタイトル通りにこれまで出会ったことのなかったまかさんを体験出来たこと、そしてさらに見知らぬ姿を見せてくれるだろう未来への約束を思わせ感動したんです。

きっとまた近い内に会える、そんな見知らぬ希望をファンにも信じさせてくれてコンサートは幕となりました。


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