ミュージカル『LUPIN』が帝国劇場で公演していた時、ラストは花道に組まれた鉄骨部分からルパンが登場するという演出でした。


この鉄骨は照明を設置するのに組まれたように見えて(実際にその役割も果たしているはず)そこにあることが自然。

でも客席に着いた時に、ここから出てきたら面白いのになと、もしそうなら上手だろうと勝手に当たりを付けてました。

何故そう思ったかというと、やはりアルセーヌ・ルパンなんだから神出鬼没だったらいいのになぁとよぎったからです。


初めて観た『LUPIN』は予想以上に楽しくて、すっかりそんなことは忘れてたのですが「号外、号外!」と新聞売り少年が飛び出してきた時に、もしや!と当たりを付けた所へ目をやったら誰かが出てきているときめきったらなかった。

何がいいってマントを頭部まで覆って気づかれないようよう慎重に古川雄大さんがスタンバイしてるところ。

ほ、本人だーっ!

いや、だって別の方と入れ替わることも出来るじゃないですか、あのアルセーヌ・ルパンがマジで来たーっ!という初見の喜びが忘れられない。


何がいいってゆっくりと降りられるギミックがある。

安全!

近頃あまり見かけませんが、学校などにあった登り棒の下りって実のところ危ない。

握力のみの加減で全体重プラス引力を何とかしなきゃなんて危険極まりないですよ。

だからああいった棒を滑らせる演出って無くはないんですけど、見てる方としてはハラハラしてしまう。

でも美しくポーズをキメてたっぷりと降りてくる古川さんを見た時に何だか嬉しくなったんですよね。

俺を見ろ!みたいなオーラがあって、めっちゃスターって感じがします。

あと、そこから出てくれるの!というドキドキがルパンにピッタリでした。


さて帝劇の公演が終わり、全国ツアーが始まった『LUPIN』。

気がかりなのは大掛かりな演出は他の劇場でも可能?ということ。

1幕ラストも相当ですものね、もちろん大丈夫なように考えられているでしょうけど。


愛知での公演が始まり、SNSで感想を読んでいるとルパンはどうやら客席を通って登場していたそうです。

どういう劇場なのかを御園座に行ったことがないので知らないのですが、もしかして花道の都合なのかな?と思いました。

あの鉄骨を組むのには結構場所が必要、きっと御園座にはそのスペースがなかったんだなと。

そして思ったのは梅田芸術劇場メインホールは花道があるから出来るんじゃない?と期待していました。


だからまかさんの初日に客席へ入った時、鉄骨が無かったことにビックリ。

だって博多座には花道ないんですもん、だからあれは出来ない。

長野公演は分からないけど、可能性薄そう。

まかさんが宝塚歌劇団に所属してた頃に全ツで様々な劇場へ観に行って思ったのは、花道って意外にないんだなってことなんです。

(ちなみに東京宝塚劇場にすら無い)

あの鉄骨から降りてくるルパンを見られるのは帝劇だけだったの?!

結構気に入ってただけに、ちょっとだけ寂しいです。


さて、そうなると梅芸でもルパンは客席から現れるしかなくなりました。


これはメッチャ個人的になんですけど、実のところ客席を使った演出が苦手。

だって2階や3階からは分かりませんから、だからこそあの鉄骨から降りてくるのは皆に見えただろうから良かったなぁとなるんです。


とりあえず通路を使うのは分かったけど、まだどうやって現れるかは分からないんだし実際に見たら良いかもしれないんだから、そのことは一旦頭の隅へ追いやろうと努力しました。

何故って、珍しく1階前方席だったからです。

ちょっと困ってしまったのが、座席に着いた時はまだ上手か下手のどちらから出られるかは分からないし!と余裕があったのですけど、幕間休憩の際に梅芸のスタッフさんが「14列目の方は荷物をしっかりとしまってください」なんてお声掛けされたんです。

…ここを通るじゃん、目の前やん!

こんなにも傍でスターさんを見られるだなんて嬉しいけど、緊張しかありません。


でもやっぱりこんな機会は二度とないので、しっかりと見よう!と心を決めました。

正直悩みましたが、登場時からガン見だ!と気合い十分。

きっと私、もう一生こんな近くで古川雄大さんを見ることはないはずですもの。


そんな訳で「号外、号外!」と新聞売り少年が飛び出してきた時に見たよね、扉を。

えぇ、客席へ入る1階扉4です。

実はお隣りが会話で『LUPIN』を初めて見る方なんだと薄々気づいていました。

だので何もない扉を見つめる私が不思議だったようで、え…この人何でこっち見るの?とその方がそちらへ目線をやったのに少し早かったのが残念でした。


やがてそおっと開け放たれた扉向こうのロビーは明るくて、まず見えたのは逆光の中トップ・ハットとマントのシルエット。

その影さえも格好良くて、あのフライヤーやセットにもなっている黒一色で描かれたルパンそのものでした。

そして扉いっぱいみちみちにルパンが詰まっていたので、想像以上に古川さんが大きいのにビックリ。

大きいとは聞いてましたけど、そんなサイズ感なの!

そうして歩み出した古川さんは静々と音もなく、縦の通路まで当たり前のように歩いていかれました。


その、ここにいるよとは逆の空気をまとわれた真剣な眼差しがとてつもなく美しかったです。


なるほど、これは客席登場ではなくてスタンバイの為に客席を使うってことだったんだと気づいた時、それなのにガン見しちゃってすいません!となりました。

でも素敵でした。


やがてスタンバイ位置である1階1列目へ辿り着き、照明が当たって振り返られた時のキラキラ感たるや!

それまで抑えられていたスターオーラが解き放たれた迫力、素晴らしかったです。


そしてあの仮面にキスするの見ると、ヒュー!と言いたくなる衝動を本当にどうしてくれよう。

二枚目仕草が似合いすぎます。

ここ帝劇の時もちょっと悲鳴あげちゃってました。


あの、あ!そこにルパンが!!という演出の為に使われる客席通路はアリですね。

通っている間は無でいらしたのに、ガン見しちゃって本当に申し訳ありませんが、良い2023年観劇納めでした。


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