窓を開けると、風に誘われた花弁が教室に迷い込む。
色のない景色を彩ってゆく、季節の巡りを知らせる桃色の花。
春といえど、空気はまだ少しひんやりしている。
そんな中途半端な時期に訪れる、もう何度も繰り返してきたあの日。
「花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり…。
…なんてね」
今年も、今日がやって来た。
***
「先生、今までありがとー」
今年も生徒と写真を撮って、使い古された声援を送る。
式での静けさとは打って変わって、今は何とも賑やかだ。
号泣する子も笑顔ではしゃぐ子も共存している不思議な空間。
それぞれ思うことは違うのだろうが、行く先は皆同じ、外の世界。
彼らは今日でこの学校を卒業する。
もうこの顔ぶれを見ることがないのだと思うと感慨深いものもあるけれど、しみじみしている暇もない。
卒業生を送り出せば、新入生を迎え入れる準備が始まる。
在校生と、真新しい制服に身を包み、期待と不安に胸を膨らませて校門をくぐる生徒のために学校は動き出す。
「せんせー、一緒に写真撮って!」
けれど、今日だけは去っていくこの子たちを想って笑う。
彼らの未来が明るいものであるように。
私のように、あの人のように、光を失ってしまわないように。
『先生』
――彼の未来が、どうか明るいものであるように。
*** to be continued...