情報を増やしすぎて混乱する……よくあることです。
トレードは、そんなワナにはまりやすいゲームです。
オトナとして、刻一刻と変化するマーケットに対応するために広い視野を保ちたいものです。
しかし、売り買いの決断に直結する部分に限っては、とことん素朴なほうがいいのです。
例えばチャート。
株価の推移をチャートという形にした時点で、けっこう「積極的な加工」が施されている、と思うのです。
だから、移動平均線を重ねたり、トレンドラインを引いたり、ローソク足の組み合わせ(線組み=せんぐみ)ばかり考えたり……こういった突っ込んだ観察は、やりすぎに注意です。
以下に、複数の価値判断が混ざるキケンな例を挙げますが、おそらく反論があるでしょう。それぞれ、事例のあとに、私が気にするポイントを記します。
(1)複数の移動平均線を使う
「○日線を上回っている」「しかし、まだ×日線の下にいる」
行動をピシッと決めることが求められるのに、永遠に答えの出ない「迷い」の世界に踏み込んでしまいます。
(2)複数種類のチャートを使う
「日足ではいい形になったが、週足ではよくない」
日足、週足、月足といった、ヨコ軸の設定が異なるチャートは、基本的に、同時に使うことができません。
地図ならば、大きな地図で高速道路と国道、次に街中の細かい道をチェック──地図は単に縮尺が異なるだけだから、同時に使うことができるのです。
チャートを描くために、日、週、月と、便宜的に区切りを設定していますが、地図の縮尺のちがいとは異質です。大きさだけでなく、「形」が変わってしまうのです。
また、ローソク足の“白抜き”や“黒塗り”、高値・安値を示す“ヒゲ”など、本来の価格情報にはないものをつくり出していることを忘れてはいけません。
(3)値動き以外の情報を書き込む
「利上げ」とか「選挙」など、重要とされる外部要因をチャートに書き込むケースが見受けられますが、テクニカル分析の基本は「すべての材料が株価に反映されている」と考えることです。チャートをそのまま素直に観察するべきです。
ましてや自分の売買、「○月×日、1,500株買い」なんて個人的な情報は、チャート分析を行ううえでは、ただのノイズです。
特定の参加者の都合や思惑を排除するのが、マーケットの第一の機能なのです。
―つづく―