3年前の暑い夏の日、後輩が亡くなりました。


「大丈夫ですよ。心配しないで下さいね。」

これが彼の最後の言葉でした。

新婚三ヶ月目で幸せの絶頂期の筈なのだが、社内での彼の様子がどうもおかしいと感じ始めた頃だったので、突然発せられた言葉に正直なところ驚いたのを憶えている。

僅かながらでも態度に出ていたのだろうな。

そして、翌日の夕方から一切連絡が取れなくなり、その一週間後に訃報が届いた。


人に寄り添うって簡単な事ではないのはわかっているし、生きて行く上で哲学が必要な学問だという事もわかっている。


しかし、友人に纏わりつく、得体の知れない不吉な魂が見えていたにも関わらず、その重圧から解放させる事が出来なかった。

つまり、本当の意味での人助けなんて出来なかった。

それでも寄り添いたいし、引き受けたい。

たまには「人間っいいな」と呟いてもみたい。


自尊心と自己承認欲求の塊の様な怪物を作るのは、いつでも自己愛の強い権力者だ。

学生時代、心理学の教授から「自己愛の強い人との関わり方にはコツがある。それは適正な距離をとる事だ。」と教わった事もあるが、最近は身に沁みてこれが理解出来る。


認識者から実践者という言葉も間違えやすい。

石川淳、小林秀雄、堀辰雄、村上春樹と同様、覗き見される程度ならいいが、彼らの様に経験を基に、想像力を駆使した人間関係の実践の方が楽しい。

ナルシストには「知らんがな」だろうけど。。


おっと、忘れていた。

そろそろ彼に、もう少し遅れそうだと「遅刻届」を出す準備しなきゃ。