アメリカ合衆国、朝鮮民主主義人民共和国のテロ支援国家指定を解除
アメリカ合衆国が朝鮮民主主義人民共和国のテロ支援国家への指定を解除した。このことについて、日本では拉致被害者家族連絡会を中心に激しい反発が起きている。
今回の指定解除はInternational Herald Tribune の記事[*1] に "The removal from the U.S. list of state sponsors of terrorism, is only provisional, the officials said. ..." と書かれているように今回の解除はあくまで一時的な措置であり、今後北朝鮮共和国が査察の受け入れ、その他の合意を十分に履行しなければ指定を復活させる。その意味ではこれはアメリカ側のカードと見るのが妥当だろう。
北朝鮮共和国の側では、13日、IAEA要員の立ち入りを許可し、14日、寧辺の核施設で無能力化作業を再開している。
もっとも、北朝鮮共和国は既にアメリカに対して南北同時核査察を提案するなど、無理難題を要求している。これまでにも両国の一方が譲歩を匂わせる言動を発しては、結局は北朝鮮共和国側が口実をつけて合意を十分に履行せず、再び振り出しに戻る自体が何度も繰り返された(このことはこれまで筆者も何度か言及した)が、それらの状況を見れば、今回も同じ結果となる可能性は高い。
ただ、状況が従来と大きく異なっていることを示す要素が今回は存在する。既に読者各位がご存知であろう件である。
9月9日の建国60周年行事で朝鮮人民軍のパレードが行われず、金正日国防委員長が現れなかった。その翌日、アメリカのメディアが金正日が8月中旬に脳卒中で倒れた可能性があるという報道を行い、その後韓国政府も報道された事実を認めたことで、金正日の重病説が浮上した。
これまでにも、金正日が各種行事に姿を見せず、健康問題が取り沙汰されることはあったが、今回は各国の政府や朝鮮半島問題に関わりの深い人物も動いている。さらに、北朝鮮共和国内部に「将軍様のご教示」の類が長らく見られないという内部情報[*2]
があり、これまでになく重病説の信憑性が高い。
金正日の重篤状態が続いても、北朝鮮共和国側は核問題に関して、現在に到るまで、これまでのパターン(いわゆる「お約束」である)に忠実に沿った行動を繰り返している。それゆえ、金正日個人の状況によらず、北朝鮮共和国側が今後もお約束通りの行動を繰り返す可能性は高いと見ることは可能である。ただ、拉致問題に関しては、少なくとも金正日が工作部門を掌握した時期(1970年代半ば)以降のものに関しては、金正日の影響力の失墜と共に明るみに出る可能性は期待される。一方で、金正日の影響力の失墜がどのような影響力をもたらすのかを知ることは難しい。良い方向に進む可能性を現実のものとするために努力すべきであり、一方では想定される事態の悪化(軍部の硬化など)には常に備えなければならないだろうと言うよりない。
[*1] International Herald Tribule, U.S. dropping North Korea from terror list, officials say , 2008年10月11日.
[*2] デイリーNK, 北, 2ヶ月間‘将軍様の方針’はなし , 2008年10月10日 17:37.